平成5年1 知事の連続四選禁止
【憲法】 平成5年・第1問
 都道府県知事の長期在職は、地方自治の固定化ないし沈滞を招き、地方自治の発展を阻害するとして、知事の連続四選禁止の規定を公職選挙法に設けたと仮定する。そのような立候補の資格制限は、憲法第14条、第15条第1項、第22条第1項、第92条に違反するかどうか、論ぜよ。


 =構成=


1 提起 本問 の規制は、……に反しないか。

2 15条 被選挙権 
 1) 立候補の自由→肯定
    公務であることから公共の福祉による制約に服する。→厳格な合理性の基準
 2) 腐敗防止という目的は正当 手段は過大 よって 違憲 
   ★腐敗防止のためには、立候補そのものを禁じるまでもなく、行政への監査をきちんと行えば足りる。
    経験と優れた能力を持ち、住民からも支持される人物が立候補できなくなるとすれば弊害も大きい……


3 22条 職業選択の自由
 1) 経済的自由権 → 合理性の基準 
 2) 目的二分論? 腐敗防止は消極目的 目的が正当であり、手段が必要かつ合理的でること
 3 あてはめ →手段は、前述のとおり過大であるから 違憲

4 14条 平等
 1) 平等権は相対的平等を保障する →合理的な差別の範囲内か否かという基準 だが、後段列挙事由にあたれば強い違憲性推定が働くので 厳格に審査される
 2) 三期務めた知事 は社会的身分に当たるか? 継続的な職業、社会的地位なので、社会的身分にあたる?? 形式的にはそうだが、歴史的・実際的に見て差別される立場というより、むしろ特権的な権力を行使する立場であることを考えると、後段列挙事由には当たらないと言うべき
 →よって、合理的な差別かどうかを審査すれば足りる……
 3) 他の候補者との差別は合理的か。
    確かに実績も知名度もない候補者と、現職の知事とでは、格差がある。この格差は、合理的な差別的取り扱いによって補正されるべきか。
 選挙における候補者間の平等は、相対的平等であるより、形式的平等を要求しているとも見られる。……少なくとも現職の立候補を禁じてまで格差を是正する合理性は認められない。合理的な差別の域を越える →14条違反

5 92条 地方自治
 1) 地方自治の本旨 団体自治、住民自治の二つの観点から考察
 2) 団体自治、地方のことは地方が決める 必要であれば条例で定めればいい。地方公共団体による自律的な判断を尊重すべき
    住民自治 住民の意志に基づく地方政治 住民が望むなら四選してもいい  
  →立法は団体自治、住民自治に反する国による過大な干渉であるといえ、地方自治の本旨に反する。

 3) 住民の立場からは 選挙の自由 望む候補者を選ぶ自由(15条)への侵害という側面もある。