平成3年1 代理行為取り消し・附合
【民法】 平成3年・第1問
 Aは、甲土地の所有者Bを強迫して土地売却に関する委任契約を締結させ、Bの代理人として甲土地をCに売り渡した。Cは、駐車場として利用させるためDに甲土地を引き渡し、賃料に代えてDに甲土地を舗装工事をさせたが、その後に、Bが強迫を理由として右委任契約を取り消した。この場合におけるBとC・Dとの法律関係について説明せよ。


=構成=


一、BC間の関係

 1 所有権の帰属
  (1) BはAの行為を無権代理として無効主張
   BはAとの委任契約を取り消した → Aの代理権消滅 →無権代理
 
 【代理権発生の根拠】 無名契約説
 【委任契約と代理】 有因→遡及的無効
 
 よって、売買の効果は無効であると主張できる。

  (2) Cの主張:表見代理(109条) 代理権の表示はAの強迫によるものであるから、Bに帰責性なし →表見代理は成立しない

  (3) 以上から、所有権はBに帰属する。Bの取消しにより、売買のは遡及的に無効となり、Cは不当利得として甲土地の返還義務を負う。

 2 賃料の不当利得返還請求は、Cが賃料を得ていないので認められない。Dによる舗装の敷設も、Cが所有権を有効に取得できない以上、Cの利得とは言えない。


二、 BD間の関係

 1 Bからの明渡し請求
  Cに所有権がないため、CD間の賃借は他人物賃貸借となり、Dは真の所有者Bからの目的物返還請求を拒むことは出来ない。

 2 Bからの舗装撤去請求
  そのさい、BはDに対し、舗装を撤去するよう請求できるか。
  もし、「附合」していれば、所有権はBにあることになり、Dへ撤去の請求は出来ない。
  【附合の意義】
  【舗装は土地に附合するか】
  附合しないなら、撤去請求可能


 3 Dからの有益費償還請求

  占有者が土地の改良のために支出した有益費は利益が現存する場合、償還請求できる(196条2項)

  利益の現存 →客観的に判断 【舗装は土地に附合するか】で検討したのと同じで、所有者の利用目的による。

  所有者が、駐車場などの利用を考えておらず、舗装を有益に利用しない場合には、利益の現存は認められない。

  附合しない以上、Dは、附合による償金請求(248条)も出来ない。
  

 4 Dに以上の請求権が認められない場合、請求権を根拠にした留置権(295条)の主張により、明渡しを拒むことも出来ない。

 なお、以上の結論は、Dに酷であるようにも思われる。しかし、DはCに対し、債務不履行責任(415条)を追求し、投下資本の回収を図りうるので、問題はない。




 (CはAに無権代理人責任117を追求)

 (2006/05/22)