[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
平成9年1 抵当権の実行
【民法】 平成9年・第1問
Aは、その所有する甲土地にBのために抵当権を設定して、その旨の登記をした後、Cに対し、甲土地を建物所有目的で期間を30年と定めて賃貸した。Cは、甲土地上に乙建物を建築し、乙建物にDのために抵当権を設定して、その旨の登記をした。その後、Cは、甲土地上の庭先に自家用車用のカーポート(屋根とその支柱だけから成り、コンクリートで土地に固定された駐車設備)を設置した。
右の事案について、次の問に答えよ(なお、各問いは、独立した問いである。)。
1 Bの抵当権が実行され、Eが競落した場合、乙建物およびカーポートをめぐるEC間の法律関係について論ぜよ。
2 Dの抵当権が実行され、Fが競落した場合、乙建物およびカーポートをめぐるFA間の法律関係について論ぜよ。
=構成=
A抵当権設定① ← B →E競落
↓
C賃借②:乙建物(抵当権) ←D →F競落
カーポート
一、 小問1について
1、 乙建物についてのEC間の関係
EはCに対し、建物収去、土地明渡し請求
賃借権は抵当権設定後なので登記していても対抗できない。
★短期賃貸借制度は廃止されたのでその適用もない。
よって、Eは建物収去・明渡しを請求できる。
ただし、Cには六個月の猶予期間が認められる(395条)
また、EはCが賃借しつづけることを望む場合には、Cの賃借権に対抗力を与えることが出来る(387条1項)。
2、 カーポートの撤去請求
・更地にしたいEにとってカーポートは不要
・撤去請求するには、その所有権がCにある必要がある。
・Cの反論、カーポートは土地に附合したものであり、所有権はEにある、と主張することが考えられる。
【附合の意義・条件】
社会経済上の損失の防止。所有者にとって、無用の長物、更地にするためには特別の撤去費用が必要。Eは附合していないと主張できる。
・そもそも、カーポートは車庫として住宅の経済的効用を助けるため「常用に供される」のであり、かつ住宅から、独立性を保っているので、建物の従物である(87条)。従って、その処分も主物たる建物に従うことになる。
以上から、EはCにカーポートの撤去を請求できる。
二、 小問2について
1、乙建物をめぐるFA間の関係
Aは、CからFへと土地賃借権が移転されたことを容認するいわれはないとして、Fに対し、建物収去・土地明渡しを請求することになると思われる。
これに対し、Fが乙建物を利用したい場合、CのAに対する土地賃借権を取得し、これをAに対抗できなくてはならない。
(1) 抵当権の効力は従たる権利に及ぶか。
【従たる権利】←経済的一体性説?
結論は、及ぶ。
(2) 対抗関係。 本来、Fの賃借権取得は、Aの承諾がない限り、無断譲渡と同じものであると考えられる。無承諾の譲渡は解除原因となる(612条)(Aには賃借人に相応しいかどうか判断する権利がある)
よって、承諾がない限りは、対抗できないのが原則
★もっとも、譲渡を承諾しても所有者に不利益になる恐れがないにもかかわらず、承諾をしないような場合、裁判所が、承諾にかわる許可を与えることができ、その場合には、賃借権を対抗できる。(借地借家法20条)
なお、Aが賃借権の譲渡を認めない場合、Fとしては、建物買取請求権(法14条)を行使し、建物を時価で買い取るように請求できる。
2、 カーポートをめぐるFA間の関係
競落によって建物の所有権を取得したFは、建物の従物たるカーポートの所有権も取得するので、有効に土地賃借権を取得した場合には、これを問題なく使用できる。
ただし、土地賃借権が認められなかった場合には、Aは、建物収去と同時に、カーポートについても撤去を求めてくることになる。
(Fとしては、カーポートは土地に附合しており、所有権はAにあるとして、撤去を拒むことが考えられる。
しかし、附合の是非については、一、で検討した通り、Aにとって、経済的利用価値がないと判断される以上、Aは附合を否定できると考える。) ←カッコ内不要!
(そして、)カーポートは建物の従物であると考えられるので、主物の処分に従うことになる。(87条2項)
よって、Aが賃借権の譲渡を認めない場合、Fは、建物買取請求権(法14条)の行使により、建物とともにカーポートをも時価で買い取るように請求できる。
以上
(カーポートは建物の従物、という観点で押し切る)
(2006/05/25)