【相当因果関係】必要性と判断基準
【相当因果関係】必要性と判断基準

 構成要件該当性が肯定されるためには、行為者の行為と、その結果発生した結果とのあいだに因果関係が必要である。
 因果関係があると言えるためにはまず条件関係が必要である。条件関係は、Aという行為がなければBという結果もありえなかったと言える場合に肯定される。
 しかし、それだけでは異常な経過をたどって発生した結果にまで因果関係を認めることになってしまい妥当ではない。
 そこで、過剰な処罰を避け、一般予防の必要性の限界に配慮する刑法の謙抑性から、条件関係に加え、通常その行為からその結果が発生することが社会通念上「相当性」を有するといえる場合にのみ因果関係を肯定することが妥当である。(相当因果関係説)


【判断基底の範囲】 客観説

 では、「相当性」を判断するにあたって考慮するべき事情の範囲(判断基底、基礎事情)をどう考えるべきか。
 考え方として、@行為者が認識・予見した事情、及び認識・予見しえた事情を考慮する主観説、A行為時に一般人が認識・予見しえた事情、及び行為者が特に予見していた事情を考慮する折衷説、B行為当時存在した全事情、及び行為後に生じた客観的に予見可能な事情を考慮する客観説が主張されている。
 このうち、@主観説に対しては、行為者が知り得なかったというだけで相当性を否定するのは狭きに失するという批判が妥当し、またB客観説に対しては、一般人すら知り得なかった事情をも基礎とするのでは行為者に酷である、との批判がなされる。その結果、A折衷説が通説となっている。
 しかし、因果関係という客観的な構成要件要素が、行為者の認識という主観的事情によって左右されることには疑問があり、主観説、折衷説は採り得ない。よって、B客観説を取るべきだと考える。


(2006/05/27)