【抽象的事実の錯誤】
【抽象的事実の錯誤】

 行為者が認識・予見した事実と、実際に生じた事実とで該当する構成要件が異なる場合を抽象的事実の錯誤という。
 故意とは、構成要件該当事実の認識・予見であるから、抽象的事実の錯誤の場合、実際に生じた構成要件該当事実について故意を肯定し得ないのが原則である。
 とはいえ、軽い罪の故意で重い罪を実現した場合、重い罪の責任を問えないことは当然だが(38条2項)、逆に、重い罪の故意で軽い罪を実現した場合には、故意犯の成立を肯定してよい場合があると思われる。
 そこで、行為者が認識・予見した事実が該当する構成要件と、実際に生じた事実が該当する構成要件が符合する場合に、その符合する限度内で故意及び故意犯の成立を肯定しうると考える。
 (法定符合説)

 ★保護法益の重なり合いが最低条件

 (2006/06/01)