【不法原因給付と詐欺】
【不法原因給付と詐欺】

 欺罔されて財物を交付する被害者の行為が不法原因給付(民法708条)にあたり、返還請求権が認められない場合にも詐欺罪は成立するか。
 この点、返還請求権が否定される場合、財産上の損害がないとして詐欺罪を否定する見解があるが妥当ではない。
 詐欺罪においては、財産上の損害は独立した要件ではなく、交付した物・利益そのものが法益侵害をなすのであり、交付した物・利益自体には何らの不法性もない以上、詐欺罪は肯定できる。

(2006/06/03)
(山口総論p268)