【事実の錯誤】(具体的法定符合説)
【事実の錯誤】(具体的法定符合説)

 行為者が認識・予見した事実と、現実に発生した事実との間に食い違いがあることを事実の錯誤と呼ぶ。
 この場合、どのような要件で行為者の故意を認めることができるか。
 この点、何らかの構成要件に該当する認識があれば故意を認めうるとする考えがある(抽象的符合説)。しかし、何らかの構成要件に該当するという認識は、すでに特定の構成要件の認識とは言えず、故意とは認められないので妥当でない。
 そこで、行為者が認識した事実と、発生した事実とが「構成要件の枠内において」重なり合う限度で故意を認めることが妥当である。(法定符合説)
 その中でも、通説は、構成要件該当事実を構成要件要素のレベルで抽象的に捉え、それに該当する事実の個別性・具体性を一切捨象する見解を取るが妥当とは言えない(抽象的法定符合説)。
 構成要件該当性は、法益主体ごとに判断されることからも、構成要件該当事実の認識・予見である故意の判断に際して、法益主体の差異は無視できないと考える。(具体的法定符合説)


(短縮版)



 行為者が認識・予見した事実と、現実に発生した事実との間に食い違いがある場合、行為者が認識した事実と、発生した事実とが「構成要件の枠内において」重なり合う限度で故意を認めることができる。(法定符合説)
 そして、構成要件該当事実は構成要件要素のレベルで抽象的に捉えるとしても、侵害を受ける法益主体については具体的に符合することを要求すべきである。
 構成要件該当性は、法益主体ごとに判断されることからも、構成要件該当事実の認識・予見である故意の判断に際して、侵害される法益主体の個別性は無視できないと考える。(具体的法定符合説)



(さらに短縮)

 事実の錯誤の場合、どのような要件で故意を認めるか。
 争いあるも、行為者が認識した事実と、発生した事実とが「構成要件の枠内において」重なり合う限度で故意を認めることができる。
 そして、構成要件該当事実は構成要件要素のレベルで抽象的に捉えるとしても、侵害を受ける法益主体については具体的に符合することを要求すべきである。(具体的法定符合説)


(2006/06/02)