法学座敷牢 別名 ろおやぁ

山口刑法準拠(純粋結果無価値論)による
論文構成

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目次(ってか、骨格)(記述の順序)

(あとで作る)

構成にあたっての原則

問題文で、問題にされている事柄だけを以下の配列に沿って記述する。

論文構成の具体的内容(簡単な説明)

  1. 構成要件該当性構成要件Tb(Tatbestand,Tat=行動、業績、bestand=存立)
    違法行為類型説:構成要件は、違法な行為の類型→違法推定機能を肯定。
    ■故意・過失を責任要素として排除する結果、故意規制機能が維持され、犯罪個別化機能は失われる。
    ★構成要件は、@故意規制機能(故意があるというために認識を要する事実の範囲を画する機能総論p25)、A違法推定機能を持つ。
    ★@故意規制機能(故意・過失を枠づける概念)が必要不可欠であるため、故意・過失は構成要件から除外される。
    ★結果として、失われた犯罪個別化機能は、構成要件該当性と故意・過失とを併せた犯罪類型という別の概念が担う、と構成する。 (注記:通説的には、構成要件に責任要素も含むと考えるので、故意規制機能は、構成要件から故意・過失を除外した「客観的構成要件」が担うことになる)総論p31注6
    1. 主体
      1. 身分犯における主体の限定:主体に一定の属性を要求、範囲を限定
        1. 身分犯
        2. 擬似身分犯(ex.177強姦罪:「女子を姦淫」出来るのは男性だけだが、間接正犯としてなら女性でも可能)
      2. 構成的身分犯(真正身分犯)・加減的身分犯(不真正身分犯)
      3. 違法身分犯・責任身分犯
    2. 行為と結果
      1. 行為「意思に基づく身体の動静」と解する。それで足りる。(行為であることも構成要件要素であることを確認すれば十分)
        1. 作為と不作為:行為には身体の「静」である不作為も含まれる。不作為とは「無」ではなく、「ある作為」をしないこと
        2. 自手実行と間接実行:ここで間接正犯を検討する
      2. 結果:現実に加害行為による「結果」が発生した場合に、犯罪が成立する。
        ■犯罪はすべて結果犯である。
    3. 因果関係:行為と構成要件的結果の間には因果関係が必要。
       ★行為の存在→(因果関係の存在)→結果発生 = 構成要件アリ
       ★因果関係に含まれる実質的考慮ないし判断
        • (1)条件関係
          • @事実的な条件関係
          • A結果回避可能性
        • (2)相当因果関係
        • (3)遡及禁止原理を基礎とした正犯性
      1. 条件関係
        1. 条件関係公式現実に行った行為を取り去り、それに代えて、なすべき行為(作為の場合、その不作為、不作為の場合には作為義務のある作為)を仮定した場合、当該結果が欠落するかという仮定的判断(仮定的消去法ないし仮定的代置法)。結果は具体的に把握する必要。
        2. 結果回避可能性がある場合にのみ、条件関係を肯定する←条件関係は、単なる行為と結果の事実的結合関係に尽きるものではなく、処罰の正当化にかかわる規範的な意味(結果回避可能性)を有すると解される。総論p50
      2. 相当因果関係
         (根拠)相当因果関係の要件は、過剰な処罰を避け、一般予防の必要性の限界を考慮するという謙譲性の思想に、その根拠がある。総論p55。
         ■客観説行為当時存在したすべての事情及び行為後に生じた客観的に予見可能な事情を考慮する。
        (主観説:行為者が認識・予見した事情及び認識・予見しえた事情を考慮する。折衷説:行為当時一般人に認識・予見可能であった事情及び行為者に特に認識・予見されていた事情を考慮)
         ★客観説の根拠:単なる行為者の事実の認識の差によって因果関係という客観的構成要件要素の判断に差が生じるのはそれ自体妥当でない。p56。
      3. 遡及禁止:(条件関係、相当因果関係をさらに限定する一般的な結果帰属の基準)「正犯性の判断基準に関する一つの理解」「それを「結果惹起支配」として明確化し、明瞭な基準に従って判断」「遡及禁止原理は「結果惹起支配」の概念を具体化したもの」総論Q&Aから引用
         ★定義「結果を認識して惹起する自由な行為の背後の行為については、構成要件結果は帰属されない」
         ★故意行為以前に遡って結果惹起の責任を追及できない=遡及禁止
         ★刑法60条以降の共犯規定は、遡及禁止の例外を規定するもの
         (これを「正犯性」の問題として、因果性とは別の要件として論じる説もある)
      4. 間接正犯:「機械的な道具と同視しうる他人を利用して構成要件を実現する場合」
        ■あくまで単独犯。問題は、遡及禁止論からする「正犯性」の限界の理解
        1. 被害者の介在:被害者が@結果の認識を欠く、A結果の侵害性につき錯誤、B自由な意思決定が排除されている→背後の行為者に構成要件該当性アリ。
        2. 故意ある者の介在:結果&侵害性に故意ある者の自由意思に基づく行為が介在→背後の行為者に構成要件該当性ナシ。
        3. 故意のない者の介在:遡及禁止効が働かない→背後の行為者に構成要件該当性を肯定できる。
        4. 責任無能力者の介在:
        5. 強制された行為の介在:
        6. 構成要件該当性を欠く行為の介在:
        7. 適法行為の介在:
    4. 不作為作為と不作為の区別は排他的なものではなく重なり合いがあり、一つの行為を作為としても不作為としても記述できる=不作為も行為
      1. 真正不作為犯:条文に定めがある場合
      2. 不真正不作為犯:明文なし、殺人放火など限られた場合に考慮される。
        1. 保障人的地位(作為義務の存否):結果惹起についての排他的支配があるかどうかで判断。
          1. 「作為義務の錯誤」の処理:山口説は不明確?二分説を取ると思われる。総論p172以下、各論p540
            なお Q【15】作為義務の錯誤について,公務執行妨害罪の職務の適法性の錯誤の処理(各論540頁)から推測すると,いわゆる二分説の処理が妥当する,という理解で良いのでしょうか。
            A 【15】そのように考えて頂いて結構だと思います。

            有斐閣山口刑法各論Q&Aから引用
            • 保証人的地位の存在の錯誤:事実の錯誤→故意阻却
            • 作為義務の存在の錯誤:違法性の錯誤→かならずしも阻却しない?
            • 前田p137は二分説を否定。曽根p232は肯定。いずれにせよ、作為義務の錯誤は「責任段階」で処理
        2. 作為可能性→責任段階で考慮する。(個々人の能力に合わせた個別的対応)
    5. 主観的構成要件要素:例外的に存在するのみ。故意・過失は純然たる責任要素
      1. 責任要素としての主観的構成要件要素
        1. ・ex.窃盗罪(235)における「不法領得の意思」←主観的責任要素が違法行為類型を限定する類型化要素として機能
      2. 主観的違法要素:基本的に認めない。
        1. 目的犯における「目的」:ex.通過偽造罪148.1や文書偽造罪155.1、159,1における「行使の目的」=客観的要素を越えた主観的超過要素として犯罪成立要件とされている。
        2. 表現犯における内心状態→否定
        3. 傾向犯における意図→否定
  2. 違法性
    1. 違法性の概念
      1. 客観的違法論:違法性とは法規範に反すること。内心と離れて客観的に判断される(定説)。
      2. 実質的違法性:違法性を、その実質的根拠から理解する。
         違法性の実質は法益侵害・危険という「結果無価値」の惹起(法益侵害説、または結果無価値論)→主観面である故意・過失は違法要素ではない。主観的違法要素は例外的に肯定されるだけ。
         ★また、実質的違法性論は超法規的違法性阻却事由を認める前提ともなる。
    2. 違法性と違法性阻却:構成要件該当行為は原則として違法←(構成要件の違法推定機能)
       ■違法性阻却事由=構成要件該当行為に原則肯定される違法性の存在を否定する特別の理由・根拠
    3. 違法性阻却の実質的原理
      1. (1)明文で規定されたもの:正当行為35、正当防衛36、緊急避難37、医師の認定による人工妊娠中絶(母体保護法14)(業務上堕胎罪の違法性阻却事由)
      2. (2)超法規的違法性阻却事由:実質的に違法性が欠如する場合に認められる、書かれざる違法性阻却事由
      3. 優越的利益の保護:違法性阻却の実質的原理は法益性の欠如法益均衡
    4. 正当行為
    5. 正当防衛:「法益性の欠如説」と結論的に一致。
       ★被侵害者には、侵害の回避・退避義務がない。→急迫不正の侵害に対し退避せず、対抗して排除することが認められる。必要不可欠な対抗行為であれば、いかなる法益侵害行為でも許される。(防衛行為の必要性)(補充性、害の均衡は不要)
       ・「著しい害の均衡の逸脱」の場合→正当防衛による対抗は許されず、正当防衛を認めない(過剰防衛にもならない)総論p121
       ・正当防衛→過剰防衛→過剰防衛にもならないの境界は??
        1. 正当防衛:侵害排除に必要不可欠な対抗行為(「必要性」は必要、「相当性(害の均衡)」は不要)
        2. 過剰防衛:対抗行為が必要不可欠(「やむを得ずにした行為」)とは言えない場合(「必要性」の要件に欠ける)
        3. 過剰防衛にもならない保護すべき法益が軽微で、対抗すると「著しい害の均衡の逸脱」がある場合。当座の侵害の受忍が要求されるため、「軽微性」「害の著しい逸脱」の両要件は厳格に判断される。
      1. 自ら挑発行為をした場合:挑発行為により自ら正当防衛状況を起こした場合→違法性阻却を認めない→その為の理論構成「原因において違法な行為」:この場合の理論構成はそれぞれ一長一短。ゆえに山口説で問題なし。
      2. 過剰防衛:やむを得ずにした行為と言えない場合。違法性は阻却されないが、情状により刑の減免・免除が可能:その根拠=違法・責任減少説
      3. 盗品等防止法の特則
    6. 緊急避難:違法性阻却事由説
       ★「やむを得ずにした行為」=正当防衛と異なり、「危難を回避するより侵害性の少ない手段が存在しないこと」(補充性)という要件が必要。
       ★「害の均衡」=生じた害が避けようとした害の程度を越えなかった場合に限り違法性が阻却される
       ★法益衡量原理←「補充性」「害の均衡」という要件が必要とされる。:当該法益の具体的な保護価値に従った衡量=利益衡量説(優越的利益説)
       ★自招危難の場合:違法性阻却しない→ここでも「原因において違法な行為」という構成をとる。
      1. 過剰避難:裁量による刑の減軽・免除:その根拠=違法・責任減少
    7. 被害者の同意:法益性の欠如を前提とした違法性阻却
    8. 実質的違法性阻却
      1. 超法規的違法性阻却:実質的違法論をとることで、明文にない違法性阻却事由を認めうる。
         ・その判断原理は、違法性阻却の実質原理それ自体。
        • ○(1)法益衡量基準説→「可罰的違法性」という考え方を取る必要あり
        • ×(2)「社会的相当性」基準説←行為無価値
        • ×(3)目的説=実質的に(1)(2)に帰着(判例も)
      2. 「可罰的違法性」論
        • ×(1)違法一元論→他の法域で違法とされれば刑法的にも違法
        • △(2)やわらかな違法一元論→他の法域で違法とされれば刑法的にも違法でなくなるわけではないが、犯罪成立のためには、処罰に値する質と量の違法性が必要(多分前田)
        • ○(3)違法の相対性論→法域によって違法性の評価は異なる。総論p160
  3. 責任
     ・構成要件に該当し、違法な行為であっても、責任が認められないと犯罪は成立しない。
     ・責任=刑罰における「非難」を基礎づける←非難を基礎づけるものは「他行為可能性」
      ★他行為可能性に基づく「非難」の意義:
       ・×応報刑論=非難に値する者は処罰されること自体正当
       ・○目的刑論=非難という意味が込められた刑罰の付科による犯罪予防を正当化する。
    1. 故意:責任の2形式=「故意責任」&「過失責任」
      1. 故意の要件
        1. 犯罪事実の認識:故意=犯罪事実の認識・予見
        2. 構成要件該当事実:故意がある=構成要件該当事実すべてについて認識・予見が必要(故意の構成要件関連性)
          「故意の構成要件関連性」の例外
          1. 結果的加重犯の加重結果
          2. 客観的処罰条件:それに関する故意・過失は不要と解されて来た。しかし過失が必要とすべき。p172(難)
           ★概括的故意でもよい。
           ★規範的構成要件要素の認識:最終的に裁判所の法解釈によって決まる要素。ex.窃盗罪における財物の「他人」性、わいせつ物頒布等罪における「わいせつ」性。
          • ×「法概念へのあてはめ」の故意を要求→不当
          • ×「自然的事実の認識で足りる」→不十分
          • 「意味の認識」を要求すべき(判断難しい……)意味の認識ナシ=事実の錯誤=故意阻却、しかし、法概念のあてはめの間違い=違法性の錯誤=故意阻却されない
        3. 違法性阻却事由該当事実:=消極的構成要件要素→これの認識・予見があれば、違法性を基礎づける事実の認識・予見がなく、故意否定。but、誤信に過失があれば、過失が認められる。
           ex.1……誤想防衛=正当防衛にあたる事実の存在を誤信:故意阻却
           ex.2……誤想過剰防衛:故意は成立するも、36.2(過剰防衛)を準用して刑の減免の余地を残すべき。
           ex.3……誤想避難・誤想過剰避難:上に同じ処理
         
      2. 未必の故意:認識説=構成要件が実現される蓋然性を認識した場合に故意を認める。
    2. 事実の錯誤:故意の最低限度の要件を明らかにする議論。
       
      1. 具体的事実の錯誤:同一の構成要件内における事実の錯誤
      2. 抽象的事実の錯誤:異なる構成要件にまたがる事実の錯誤
      3. 客体の錯誤:Aと思ったらBだった
      4. 方法の錯誤:認識した客体と違う客体に侵害が生じた
      5. ×純粋具体的符合説……結論が妥当でなく主張されていない。
      6. 法定的符合説(構成要件的符合説)認識した事実と起こった事実が「構成要件の枠内で」重なり合うとき故意を認める
        1. ×法定的符合説(抽象的法定符合説):該当する事実の個別性・具体性を一切捨象する見解ex.殺人罪の被害者は「人」であればよい
        2. 具体的符合説(具体的法定符合説):事実を構成要件要素のレベルで抽象的に捉えることを認めるが、法益主体の個別性・具体性は捨象することが出来ないとする説(山口)
        3. 具体的法定符合説からの処理:
          1. 客体の錯誤:具体的な法益主体(Aだと思っているが実はB)である「その人」に対する殺害意思があれば故意を認める。
          2. 方法の錯誤(打撃の錯誤):故意を認めない
          3. 故意の個数:複数の故意犯(既遂犯と未遂犯)は認めうる。併存しうるのは未遂に限られる→既遂の可能性で足りる未遂概念の特性に由来する。
      7. 因果関係の錯誤:認識したのと異なる因果経過を辿った場合→故意を阻却しない。
        1. ウェーバーの概括的故意事例:第一行為により結果発生したと思ったが、実はその後の第二行為により結果発生していた→第一行為による結果発生の認識・予見が故意であり、実際の因果経過が構成要件該当性を備えていれば、故意あり
        2. 早すぎた構成要件の実現事例:第一行為のあとの第二行為によって結果が発生すると思っていたが、実際は第一行為で結果発生した→故意阻却。結果は第二行為が引き受けるべきもの。第一行為と結果の間には遡及禁止により構成要件該当性を肯定できない。
    3. 過失:構成要件該当事実の認識・予見可能性
       ★旧過失論を取る。=過失は故意と並ぶ責任要素
      1. 過失の要件:構成要件該当事実の認識・予見可能性(結果の予見可能性とも)=「故意の可能性」
         ★故意を認めうる最少限度必要な認識・予見内容が、認識・予見可能→過失肯定の必要要件。
        1. 予見可能性の程度:ある程度高度の予見可能性が必要←結果無価値が処罰を基礎づけるので、それについての予見可能性は緩やかでは足りない。
        2. 信頼の原則被害者または第三者が不適切な行動に出ないことを信頼するに足る事情がある場合、それを前提に行動すれば、法益侵害が発生しても、過失責任を問われない。
      2. 管理・監督過失
        1. 狭義の監督責任(間接防止型):結果を発生させた直接行為者の過失を防止する立場にある監督者の過失(ex.工事現場の監督)→直接行為者の過失行為が予見可能であることが必要
        2. 管理過失(直接介入型):結果発生を防止すべき設備・人的体制を整備すべき立場にある管理者の過失(ex.ホテルの取締役)→防災体制の不十分さだけでは結果は発生しようがない→結果発生(出火など)の危険ないし予見可能性が必要→極めて例外的にのみ過失を認めうるvs判例!
    4. 違法性の意識:「その行為が違法であること」についての認識(可能性)は、責任要件か?
       第三十八条  3  法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。
       ★伝統的な判例は違法性の意識不要説。しかし近年の下級審では違法性意識の欠如に相当の理由があれば、故意が失われる、とするものも存在する。
       ★学説の諸相
        1. ×厳格故意説
        2. ×制限故意説
        3. ×厳格責任説
        4. ○制限責任説:違法性阻却事由該当事実の誤信につき故意阻却
      1. 違法性の意識の可能性の必要性:違法性の意識ではなく「違法性の意識の可能性」が責任要素。
         ★「違法性の意識の可能性」は、故意・過失とは独立した、故意犯・過失犯に共通の責任要素→欠如すれば責任阻却
      2. 違法性の意識の内容刑法上禁止されていることの認識=違法性の意識→法定刑の錯誤は違法性の意識を失わせない。
      3. 違法性の意識の可能性:行為時の状況と行為者の認識・知識・能力により判断。
         ★行為者が行為時に、その能力を発揮して「刑法上禁止されている」という認識に達する可能性
         ★ex.行政機関に照会し、その教示に基づいて行動→通常、違法性の意識の可能性を否定しうる。
    5. 期待可能性適法行為の期待可能性の欠如は(超法規的)責任阻却事由
       ★限界状況が行為者の心理を通じて作用し、その行為に出ないことを行為者に期待しえない場合→責任阻却
       ★行為者標準説をとる。
    6. 責任能力:有責に行動する能力
      1. 心神喪失・心神耗弱
        1. 心神喪失(責任無能力):責任阻却39.1
           ・精神の障害により、行動の違法性を認識する弁識能力と、弁識に従って行動を制御する制御能力を欠く状態。
        2. 心神耗弱(限定責任能力:責任減少事由39.2)
           ・両能力が著しく限定されている状態。
      2. 刑事未成年:14歳未満=責任能力否定、不可罰。
         ・39.1にあたる趣旨ではなく、犯罪予防の見地からも処罰を控えるのが妥当とする刑事政策的配慮に基づく。
      3. 原因において自由な行為
        1. 責任能力は、構成要件該当行為時に必要(同時存在の原則
        2. 故意の原因において自由な行為
          1. 心神喪失状態下:@原因行為と結果に条件関係存在、A原因行為と結果の間に相当因果関係、B結果行為による遡及禁止が働かず、原因行為にまで構成要件該当事実を遡及しうることが必要。
             ・心神喪失下で行われた故意行為には責任を問えず、結果の引受が認められないから、遡及禁止が妥当しない。
             C二重の故意:結果惹起の予見+結果行為を心神喪失状態下で行う予見が必要(故意)
          2. 心神耗弱状態下(これが苦しい):@Aの要件は上に同じ。問題は、結果行為が心神耗弱状態下で行われた場合なお遡及禁止が妥当するという点。→完全な責任を問えない、とする見解(理論的には一貫している)。しかし。
             「併せて一本」の構成:T心神耗弱下で結果を惹起した限定された責任+Uそうした状態下で構成要件該当事実を生じさせたことに対する責任とを併せて、完全な責任を問いうる。(これは原則的な考え方を若干緩和するものだが、同一の行為者の内部における責任の併合として、実質的に正当化しうる)
        3. 過失の原因において自由な行為:結果行為が過失→遡及禁止が妥当しない→結果行為の責任能力の有無に関わらず、原因行為にまで構成要件該当事実を遡及することができる。→あとは、普通に過失犯の成立を検討。
           (ex.「二重の故意」がない場合:→過失犯が成立しうることに)
  4. 未遂犯:法益侵害(既遂)の具体的危険を結果とする危険犯。
    ・既遂の構成要件該当性がない場合に、処罰を拡張することを許容する意義(処罰拡張事由
    1. 実行の着手
      1. ×主観説(予備も未遂に)、○客観説
      2. 形式的客観説(構成要件該当行為への着手=実行の着手とする)、実質的客観説(既遂惹起の危険性ある行為への着手または既遂惹起の危険の発生=実行の着手とする)……相互補完的な関係
      3. 結果犯説:危険それ自体を独自の結果と解する。
    2. 不能犯:実行に着手しても、既遂結果の発生が不能であるため未遂犯が成立しない=既遂の具体的危険の不発生
      1. 方法の不能。ex.警官のピストルを奪って発砲したが、弾が入っていなかった。砂糖で人が死ぬと思って、砂糖を飲ませた。わら人形に五寸釘。
      2. 客体の不能。侵害されるべき法益自体がそこに存在しない。ex.空ベッド事例。空ポケット事例。
      3. 具体的危険の判断方法(未遂成立か?不能犯か?)
        1. ×具体的危険説(多数説):事前の一般人の認識可能性+行為者の認識
        2. △客観的危険説:事後的に全事情を客観的に評価すれば、すべて不能犯になってしまう。
        3. 修正された客観的危険説
           @結果を発生させるべき仮定的事実は何かを科学的に判断
           Aその仮定的事実の存在可能性を一般人の事後的危険感を基準に判断
    3. 中止犯:自己の意思により犯罪を中止したとき→刑の必要的減免、43但。
       (中止未遂に対し、一般の未遂犯を「障害未遂」と呼ぶ)
      1. 刑の減免の根拠:危険消滅説(純粋政策説):未遂犯の成立により危険にさらされた具体的被害法益の救助のため、既遂の具体的危険の消滅を奨励すべく定められた純然たる政策的なもの。
         @自己の意思による中止、A既遂の具体的危険の消滅、B自己の中止行為により危険を消滅させることの認識(中止の認識)、の三要件が必要。
      2. 犯罪の中止:@中止行為と危険消滅との間の因果関係(客観的中止要件)、A中止行為により危険を消滅させる認識(主観的中止要件)の両方が必要。(「真摯な努力」は不要)
         現行法上、未遂犯に着手未遂と実行未遂の区別はなく、中止犯の中止の要件もそれに対応して異なっているのではないから、「実行行為の終了時期」を問題として中止要件をそれに応じて異なって解する見解は妥当ではない。山口p244
      3. 任意性:「自己の意思によ」ると言える為の要件。
         危険消滅説の立場からは、行為者が危険消滅の意思でそれを達成すれば原則として中止犯成立。任意性に欠けるのは、中止を強要されたなどの極めて例外的な場合のみ。(任意性の要件の意義を極めて軽く解する)
      4. 予備犯と中止:ビミョー。
         (中止犯規定の予備罪への準用を)積極的に反対する必要はないが、準用を肯定することは解釈として困難(そもそも政策的なものなので明文規定を欠くところに巡洋するのは困難)。山口p249
  5. 共犯
    1. 共犯の基礎理論
      1. 総説
         【共犯の処罰根拠】因果共犯論:正犯の行為を介して法益侵害(構成要件該当事実)を自ら惹起したことを共犯処罰根拠とする(惹起説)
         【共犯の従属性】混合惹起説:正犯に構成要件該当性・違法性を要求する(制限従属性説。通説と同じ)。
      2. 共犯の因果性:教唆・幇助行為と構成要件的結果の間に因果関係必要。共同正犯でも、同じ。
          【因果関係の内容】
        1. 条件関係T[事実的条件関係]:物理的因果関係心理的因果関係。否定される場合、共犯不成立。
        2. 条件関係U[結果回避可能性]:不要。結果惹起を促進することで足りる。(判例、通説)
        3. 相当因果関係:必要
      3. 共犯の従属性
        1. 実行従属性:必要
        2. 要素従属性:構成要件該当性+違法性(制限従属性説)
        3. 罪名従属性:基本的に否定(責任は個別的、責任に応じた犯罪が成立)
    2. 共犯類型
      1. 教唆
        1. 要件:@教唆行為、A正犯の犯罪遂行意思の惹起、B犯罪の遂行、C事実の発生との因果関係
        2. 正犯への従属性
        3. 過失処罰規定がなく過失による教唆は不可罰。38.1但書。故意の要件=正犯による既遂惹起の認識・予見。
        4. 未遂の教唆 agent provocateur:故意を欠き不可罰
        5. 再間接教唆:肯定→論証
      2. 幇助:正犯を援助し、行為&事実の惹起を促進する。
        1. 要件:正犯を介し、構成要件該当事実との間に因果関係があること。
        2. 正犯への従属性
        3. 過失処罰規定がなく過失による教唆は不可罰。38.1但書。故意の要件=正犯への犯罪行為促進の認識・予見+正犯による既遂惹起の認識・予見。
        4. 間接幇助:肯定→論証(正犯を間接に幇助したこと)
        5. 教唆の幇助は不可罰
      3. 共同正犯:「二人以上共同して犯罪を実行した」60。実行従属性は妥当するが、1次的責任なので、要素従属性は妥当しない。罪名従属性も要求されない。
         「実質的正犯概念」:構成要件該当事実への重要な因果的寄与による、その実質的な共同惹起・共同実行の有無を基準とする・山口p277
    3. 共犯の諸問題
        とりあえずここまでで中断。あとは論文対策のときに!
      1. 共犯と身分
      2. 必要的共犯
      3. 共犯と違法性阻却事由
      4. 共犯と錯誤
      5. 片面的共犯
      6. 承継的共犯
      7. 共犯関係からの離脱
      8. 過失と共犯
      9. 不作為犯と共犯
  6. 罪数
    1. 法条競合
    2. 包括1罪
    3. 科刑上1罪
    4. 併合罪


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