【予算の法的性質】73条
【予算の法的性質】73条


(法律の法的性質)
法律とは、国会が制定する、一般的抽象的法規範を言う。
(予算)
これに対し、予算は、一会計年度における国家の歳入歳出の見積もりである。

・予算は、予算案の提出権を内閣が持っている(73条)。
・国会において、衆議院で可決したが、参議院で否決されたという場合、
法律案は、再度衆議院において三分の二以上の賛成を得られなければ成立しないが(59条)、予算案は速やかに成立させる必要性があることから、衆議院の可決があれば、一定の条件の下で、衆議院の議決がそのまま国会の議決とされる。(60条)

(予算の法的成立)予算法形式説
 
 問題:予算が法律であれば、あとに成立したほうが優先されることになり、予算と法律の食い違いは生じないことになる。そこで予算の法的性質が問題となる。

・この点、@予算の成立手続が法律とは異なっていること、Aその効力が国民一般に向けられたものではなく、国家にあてられた規範であることなどを根拠として、予算は法律とは異なる法形式であると考えることができる。
・しかし、@成立手続が違うことは、予算成立手続を定めた60条が59条1項の「特別の定め」のある場合に当たるとして説明出来るとし、またA国家機関のみを拘束する法律はめずらしくないし、効力が一年限りである点も時限立法と考えることができるとして、予算を法律そのものと考える説もある。この説によれば、予算と法律の食い違いが生じないという利点があるとされる。
 しかし、一会計年度の効力しか持たず、また参議院の決議を経ずして成立する予算が法律としての効力を持ち、先に成立した法律の効力を失わせることを認めるとすれば、参議院の存在意義を著しく損なうことになり妥当でないと考える。
 よって、予算は提出権が内閣にのみ認められており、議決成立手続もその他の法律とは異なることから、やはり法律とは異なる法形式であると考えるべきである。

 (予算を法律とは別種の法形式と考える立場からは、法律と予算のあいだに矛盾が生じうることになる)



=備考=
 矛盾が生じない(=予算によって、法律の効力を失効させることや、予算がなくても法律によって、財政支出を認めることは、結局、国会と内閣の相互の独立性を失わせることになるのではないか)


 (2006/06/30)