【議院規則制定権】58条2項
【議院規則制定権】58条2項

【議院規則の意義】
58条2項は、会議などの手続と内部規律を自主的に制定する権能を両議院に認めている。
国会は、国民の意思を代表し、他の国家機関の干渉を受けずに立法権を行使する独立性、自律性が保障されねばならない。
また、憲法が民主的二院制を採用している趣旨は、両議院が相おぎなって、より慎重に立法権を行使することにあり、特に参議院には衆議院の独断専行を牽制する役割が期待されていることから、両議院がお互いから独立していることも重要である。
 かかる二つの独立性、自律性を維持するために、憲法は両議院に、自主的な議院規則制定権を保障している。

【国会法との競合】
しかし議院を規律する法規としては、議院規則以外に、国会法が存在し、両者が競合しうる関係にある。
この点、会議などの手続と議院の内部規律は議院の専権事項であると考えれば国会法は不要であるとも思われる。(立法時の総司令部の立場)
しかし、両議院に共通すべき手続や、内閣を拘束する規定について議院規則で定めるのはおかしいとして国会法が設けられたという経緯がある。(日本政府側の主張)

【国会法との競合関係】
では、両者の規定が競合した場合、どちらが優先すると考えるべきか。
この点、規則が一院の意思で制定されるのに対し、法律は両院の意思の合致により制定され、より民意を反映するので、国会法が優位するとする考えもある。
しかし、国会法が優位するとすれば、法律の制定について衆議院の優越(59条2項)が認められていることから、参議院の独立性を害する恐れがある。
また、内閣が法案提出権(72条)を行使して、国会法の改廃にイニシアティブをとり、両議院の独立性に不当な干渉をなしうることにもつながり、妥当ではない。
よって、両議院の独立性をより確実に保障するためには、国会法に対し、議院規則が優位すると考えるべきである。
また国民の代表機関である国会が定めた法律に、議院規則が優位すると考えても、そもそも両議院がそれぞれに国民の意思を代表する機関である以上、国民主権原理との関係で問題はないと考える。
(なお、この立場からは、58条2項記載の事項についてはもっぱら規則によって規定されるべきであると解され、また、にもかかわらず国会法で定められている事項は、両議院の紳士協定以上の意味を有さないと考えることになる。)


(2006/06/30)