【最高裁判所規則制定権】77条
【最高裁判所規則制定権】77条

最高裁判所は、訴訟手続、弁護士、裁判所の内部規律及び、司法事務処理に関する事項について、規則を定めることができる(77条1項)。また、検察官もこの規則に従う(同2項)
 これは、立法権を国会に独占させた41上の例外として憲法上認められた最高裁判所の権能である。
 かかる例外的権能が最高裁判所に与えられる根拠は、@司法に関する事項につき国会や内閣の干渉を排除し司法の独立性を保つこと、また、A裁判実務に精通した裁判所こそが、手続に関してもっとも適切に定める能力を有する、という二点にある。


【法律との競合はありうるか】
77条に規定された、最高裁判所が規則を定めうる事項については法律との競合関係があるだろうか。
この点、77条所定の事項については裁判所の専権事項であり、国会はこれらの事項について立法できないとすれば、そもそも競合はあり得ないことになる。(専権事項説)
しかし、41条の国会中心立法の原則に照らせば、77条が、その所定の事項については国会の立法権を排除しているとまでは思われない。かかる事項についても、国会は必要に応じて立法をなすことができ、その結果、法律と最高裁判所規則とは競合関係にたつと考えられる。(競合事項説)


【優劣関係】
では、その両者が競合する場合、いずれが優先するか。
まず、裁判所の内部事項、司法事務処理事項については、裁判所の独立性の維持に直接かかわることから、立法府は、裁判所の規則を尊重すべきであると言える。
 かかる事項について、矛盾する立法をなすことには謙抑的であるべきだし、規則と矛盾する法律について、規則のほうに合理性が認められるならば、規則に合わせて法律を改正する措置を取ることなども望ましいと言える。
 しかし、司法権を独占する裁判所の規則が、常に法律に優先するとすれば、それらの事項について国民の意思を反映させる途が閉ざされることになり妥当ではない。よって、内部事項、司法事務処理事項についても単純に規則が優位するとは言えないと考える。裁判所の独立性の保障は重要な憲法的価値であるが、かといって非民主的な組織である裁判所が国民の意識から遊離した独善に陥ることは避けねばならないし、それを最終的に担保しうるのは国民意思を反映させうる法律であると考えるからである。
 その他の事項、特に刑事訴訟手続など国民の権利義務に直接かかわる事項については、民主的な手続により制定され、国民の意思を反映することの可能な法律が規則に優位すると考える。

 (2006/06/30)

 (司法権の独立性を重視しつつ、あえて折衷説を採らず、法律優位説を採った)