★弁護人の役割
★弁護人の役割

【弁護人の定義】
弁護人とは、刑事訴訟において、選任されて被疑者・被告人のために弁護することを任務とする者を言う。

【弁護人の意義】
刑事訴訟法は、当事者対等の原則を採っており、被疑者・被告人と検察官とは対等の地位にたつ。しかし現実には国家権力の担い手であり、法的専門性を有する検察官と、被疑者・被告人とでは、持てる権限や能力に大きな差があるのが現実である。
 そこで、当事者の平等を実質的に実現するために、被疑者・被告人にはさまざまな権利が保障されている。弁護士を依頼する権利もその一つである(憲法34条、37条3項)。
 法の専門家である弁護士に、被疑者・被告人を弁護し援助させることにより、訴訟主体として、検察官との実質的対等を確保し、その防御的地位を確実にすることが可能となる。








=関連条文=

(憲法)
第三十四条  何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。



第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
○2  刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
○3  刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。



(刑訴法)

(弁護士の固有の権限)

第三十九条  身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
○2  前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
○3  検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。

第四十条  弁護人は、公訴の提起後は、裁判所において、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。但し、証拠物を謄写するについては、裁判長の許可を受けなければならない。
○2  前項の規定にかかわらず、第百五十七条の四第三項に規定する記録媒体は、謄写することができない。

第四十一条  弁護人は、この法律に特別の定のある場合に限り、独立して訴訟行為をすることができる。



第百七十条  検察官及び弁護人は、鑑定に立ち会うことができる。この場合には、第百五十七条第二項の規定を準用する。

第百八十条  検察官及び弁護人は、裁判所において、前条第一項の処分に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ謄写することができる。但し、弁護人が証拠物の謄写をするについては、裁判官の許可を受けなければならない。
(第百七十九条  被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第一回の公判期日前に限り、裁判官に押収、捜索、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる。 )



第三百八十八条  控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。
(第四百十四条  前章の規定は、この法律に特別の定のある場合を除いては、上告の審判についてこれを準用する。 )


(弁護人の、被告と重複して有する権利)

第八十八条  勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
○2  第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。



第百十三条  検察官、被告人又は弁護人は、差押状又は捜索状の執行に立ち会うことができる。但し、身体の拘束を受けている被告人は、この限りでない。
(第百四十二条  第百十二条乃至第百十四条、第百十八条及び第百二十五条の規定は、検証についてこれを準用する。 )


第百五十七条  検察官、被告人又は弁護人は、証人の尋問に立ち会うことができる。
第二百二十八条  前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
○2  裁判官は、捜査に支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人、被疑者又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。

第百五十七条  検察官、被告人又は弁護人は、証人の尋問に立ち会うことができる。
○2  証人尋問の日時及び場所は、あらかじめ、前項の規定により尋問に立ち会うことができる者にこれを通知しなければならない。但し、これらの者があらかじめ裁判所に立ち会わない意思を明示したときは、この限りでない。
○3  第一項に規定する者は、証人の尋問に立ち会つたときは、裁判長に告げて、その証人を尋問することができる。


第三百四条  証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人は、裁判長又は陪席の裁判官が、まず、これを尋問する。
○2  検察官、被告人又は弁護人は、前項の尋問が終つた後、裁判長に告げて、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問することができる。この場合において、その証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の取調が、検察官、被告人又は弁護人の請求にかかるものであるときは、請求をした者が、先に尋問する。
○3  裁判所は、適当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、前二項の尋問の順序を変更することができる。


第二百九十三条  証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
○2  被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。

第三百十一条  被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
○2  被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。
○3  陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。


(弁護人の代理権)

第八十二条  勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
○2  勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。



(被告人の国選弁護士制度)
第三十六条  被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。但し、被告人以外の者が選任した弁護人がある場合は、この限りでない。

第三十七条  左の場合に被告人に弁護人がないときは、裁判所は、職権で弁護人を附することができる。
一  被告人が未成年者であるとき。
二  被告人が年齢七十年以上の者であるとき。
三  被告人が耳の聞えない者又は口のきけない者であるとき。
四  被告人が心神喪失者又は心神耗弱者である疑があるとき。
五  その他必要と認めるとき。

(被疑者の国選弁護士)
第三十七条の二  死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件について被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官は、その請求により、被疑者のため弁護人を付さなければならない。ただし、被疑者以外の者が選任した弁護人がある場合又は被疑者が釈放された場合は、この限りでない。
○2  前項の請求は、同項に規定する事件について勾留を請求された被疑者も、これをすることができる。


第二百八十九条  死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。
○2  弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないとき、又は弁護人がないときは、裁判長は、職権で弁護人を附しなければならない。




(当事者主義訴訟構造)

第二百四十七条  公訴は、検察官がこれを行う。

第二百五十六条  公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
○2  起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一  被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二  公訴事実
三  罪名
○3  公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。


第二百九十八条  検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。