法学座敷牢 別名 ろうやぁ

TOPへ戻る
論証indexへ

3-1-01特定の生じる時期

論証

 (前提)種類債権が特定されると、扱いが特定物と同じになる。
 特定が生じる時点は、(1)当事者が合意して特定した場合の他、(2)「債権者の同意を得て其給付すべき物を指定したるとき」、(3)「債務者が物の給付を為すに必要なる行為を完了し」たときがあげられる(401条2項)
 では、何をもって必要なる行為を完了したと言えるか。
 (問題点と解釈)特定が生じると、債務者は追完義務を免れ、かつ、危険負担について債権者主義が適用される(534条2項)。よって、その恩恵に見合うだけの行為をなす必要がある。  すなわち、実質的な支配の移転時期を基準とすべきであり、具体的には、現実に目的物の提供がなされたときに特定があったと考えるのが原則である。
 (例外)なお、取立債務など、給付に債権者の協力が必要な場合には、現実の提供までは要せず、準備・通知によって特定の効力が発生する。ただし、特定とは給付目的物が具体的に確定することであるから、目的物を他の種類物から分離していることは必要である。

参照条文

400条
第四百条  債権ノ目的カ特定物ノ引渡ナルトキハ債務者ハ其引渡ヲ為スマテ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ其物ヲ保存スルコトヲ要ス

401条2項
第四百一条  債権ノ目的物ヲ指示スルニ種類ノミヲ以テシタル場合ニ於テ法律行為ノ性質又ハ当事者ノ意思ニ依リテ其品質ヲ定ムルコト能ハサルトキハ債務者ハ中等ノ品質ヲ有スル物ヲ給付スルコトヲ要ス
○2 前項ノ場合ニ於テ債務者カ物ノ給付ヲ為スニ必要ナル行為ヲ完了シ又ハ債権者ノ同意ヲ得テ其給付スヘキ物ヲ指定シタルトキハ爾後其物ヲ以テ債権ノ目的物トス

534条
第五百三十四条  特定物ニ関スル物権ノ設定又ハ移転ヲ以テ双務契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ其物カ債務者ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ其滅失又ハ毀損ハ債権者ノ負担ニ帰ス
○2 不特定物ニ関スル契約ニ付テハ第四百一条第二項ノ規定ニ依リテ其物カ確定シタル時ヨリ前項ノ規定ヲ適用ス

問題の所在(諸前提)

種類債権(非特定物債権) → 代わりがきくので履行不能にならない → 追完義務(完全履行義務)を負う。
これが特定されると特定物債権となる。
その効果。善管注意義務(400条)を負う → 追完義務がなくなり、目的物が滅失すると履行不能になる(危険の移転)。

特定物が滅失した場合、危険負担に関する債権者主義(534条1項)が適用される。(ただしそのまま適用すると常識に反するので修正される)
種類債権が特定した場合にも、同様である(534条2項)
そこで、いつ特定したかが問題となる。

検討

「危険の移転時期である『特定』を遅らせることにより、不都合を回避すべき」→(実質的な支配の移転時期を基準とする)

(1)当事者が合意して特定……(解釈上当然に認められる)

この論証を使用する過去問

過去問へリンクする。過去問を検討する際に、論証のファイルを直して、リンクを貼る。

参考文献

内田『民法III』p19


■重要注意:このサイトの内容を鵜呑みにしたせいで、あなたがいかなる損害を蒙ろうとも、当方は一切責任を負いません。論証などは、当然間違っているものとお考え下さい。

管理人:ヨーゼフK
BBS:法学座敷牢掲示板