法学座敷牢 別名 ろうやぁ

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3-2-02 履行補助者の故意過失

論証

 1 (前提)  債務者の責に帰すべき事由で債務履行が不能になった場合、債務者は損害賠償責任を負う(415条)。では、履行補助者の故意過失は、債務者の「債務者の責に帰すべき事由」に含まれるか。
 個人主義的に考えれば、債務者自身に帰責事由はない。
 (理由)  しかし、履行補助者の使用により活動領域を広げ利益を得ている以上、履行補助者の行為についても債務者自身の責任を認めるべきである。
 (結論)  従って、信義則上、履行補助者の故意過失は債務者本人の故意過失と同視すべきであり「債務者の責に帰すべき事由」に含まれる。
 (以下、新類型論)  もっとも履行補助者にも様々な類型があり、類型ごとに債務者が負うべき責任・具体的な債務者の帰責事由の有無を判断すべきである。
 2 (1) 債務者が指揮・命令できる相手、被用者的補助者の場合には、危険責任・報償責任を根拠として、債務者本人の責任を認めるべきである。
 (2) これに対し、独立して事業をする者(独立的補助者)を利用する場合には、独立的補助者を選択し、契約関係に立つ債務者こそが、帰責事由についてのリスクを負うべきであり、やはり債務者の帰責事由となる。
 (3) 賃借人からの転借人や同居人も履行補助者と呼ばれる(利用補助者)が、この場合は、賃貸借契約の問題として処理すべきであり、賃借人が同居人の過失に責任を負うのは当然である。よって、債務者の帰責事由となる。
 ((3)の例外)では、賃貸人の承諾を得た適法な転借人の過失について、賃借人は責任を負うのか。613条が「転借人は賃貸人に対して直接に義務を負う」と定めるところから、その解釈が問題となる。
 
(結論としては賃借人が責任を負うのだが、論理の流れが若干見えない)

関連条文

415条
613条

検討

債務不履行の主観的要件に含まれる問題。
415条「債務者の責に帰すべき事由」に信義則上、履行補助者の故意過失が含まれる。

通説(我妻説)を批判。現代的な状況に沿った分類が必要。
《新たな学説》
(1)被用者的補助者=債務者の帰責事由となる。根拠は、危険責任・報償責任。
(2)独立的補助者=債務者の帰責事由となる。独立的補助者を選択し、契約関係に立つ債務者こそが、帰責事由についてのリスクを負うべき。
(3)利用補助者(転借人・同居人)=債務者の帰責事由となる。賃貸借契約の問題として処理すべきであり、賃借人が同居人の過失に責任を負うのは当然。

この論証を使用する過去問

過去問へリンクする。過去問を検討する際に、論証のファイルを直して、リンクを貼る。

参考文献

内田『民法III』p132


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