法学座敷牢 別名 ろうやぁ

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3-2-03 損害賠償額の算定基準時

論証《通説版》

(債務不履行による)損害賠償の額は「時価」によって評価されるが、時価とはいつの時価をさすか。価額が変動する場合には、賠償額の算定基準時が問題となる。
 賠償額の算定にあたって、価額の上下は特別な事情であるから、それを考慮するためには、債務不履行時における予見可能性が要件となる。
 (1)原則として、損害額は履行不能時の価額で評価される。
 (2)目的物の価額が騰貴しつつあるという「特別な事情」があり、それを債務者が債務不履行時に予見可能であった場合には、騰貴した現在の価額を算定基準としうる。(ただし債権者がその価額まで騰貴する以前に処分したであろうと予想される場合には、この限りではない)
 (3)目的物の価額が、騰貴し再び下落した場合には、債権者が騰貴時に転売して、その利益を確実に得ることが予見可能であれば、騰貴時の価額を算定の基準とすることができる。
(通説は判例に基づくが、この論証は不動産に関する判例にしかあてはまらない。種類物については、解除時を基準とする判例、履行期を基準とするもの、がある……)

論証《内田版》

  1、特定物
 目的物が特定物の場合、損害賠償の目的として、債権者を契約が履行されたのと同様の地位におくという原則が重視される。もし契約が履行されれば債権者は現にその物を保有しているのであるから、損害額の算定も口頭弁論終結時を基準に考えるべきである。
 価額が途中で騰貴しており、騰貴した時点で転売し利益を得ていたことが予測可能な場合、その時点で損害額が算定されうるが、これはむしろ、転売利益の喪失という損害についての損害賠償の範囲の問題であろう。
  2、種類物
 種類物の売主が債務不履行した場合に、買主は、同様の物を市場で調達することが可能である。債務不履行の被害者という地位に甘んじて損害の発生を座視していてよいとは言えず、損害発生を食い止め、最小限にとどめる信義則条の義務(損害軽減義務を負っていると考えられる。
 よって、債務不履行があった時点で、買主は速やかに解除をして代替取引をすべきであると考えられるので、損害賠償額の算定も解除時期ないし履行期を基準に算定すべきである。
 同様の義務は、買主不履行の場合の売主にも認められ、この場合、契約を速やかに解除して遅滞なく別の買主に処分し、価額下落のリスクを回避すべき義務として現われる。  

関連条文

416条
第四百十六条  損害賠償ノ請求ハ債務ノ不履行ニ因リテ通常生スヘキ損害ノ賠償ヲ為サシムルヲ以テ其目的トス
○2 特別ノ事情ニ因リテ生シタル損害ト雖モ当事者カ其事情ヲ予見シ又ハ予見スルコトヲ得ヘカリシトキハ債権者ハ其賠償ヲ請求スルコトヲ得

この論証を使用する過去問

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参考文献

内田『民法III』p153-159


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