【質物の占有の意義 存続要件か対抗要件か】345条
【質物の占有の意義 存続要件か対抗要件か】345条 質権消滅説

 質権者は、設定者に質物を占有させることは許されない(345条)。占有改定による質権設定も認められない。
 では、質権者が設定者に任意に質物を返還した場合、質権の効力はどうなるのか。
 質権の要物性が、対抗要件としての引渡を公示する作用として求められると考えるならば、占有を失っても対抗力を失うだけで質権自体は消滅しないと考えることになる。
 しかし、占有には多様な占有形態が認められており、公示機能は十分ではない。要物性は、質権の留置的作用を確保するために要求されていると言える。よって、質権者が自ら質物を放棄する場合には質権は消滅すると考える。(質権消滅説)

 (もっとも不動産質権において、質権を登記した場合は、占有を設定者に返還したとしても、登記自体が対抗要件として機能するので、質権は消滅しないと考える。) (判例)