【債権侵害への不法行為による損害賠償】
【債権侵害への不法行為による損害賠償】 平成6年第1問



 債権は、特定の債務者に特定の給付を請求できるのみであり、その意味で相対的な権利である。従って、債権は債務者の不履行によって侵害されうるのみであり、排他性がない以上、第三者による侵害は論理的に有り得ないと、かつては考えられた。
 しかし、債権が相対的であることと、債権者の弁済を受ける権利が法的に保護を受けるかどうかとは、別問題であり、関係がないと思われる。
 債権も権利である以上、不可侵性を有する。それは物権、債権に共通するものであり、その「権利」への「侵害」は不法行為の成立要件を充たす。(709条)
 よって、債権への侵害に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求ができる。


 しかし、債権は目に見えない権利であり、通常、公示性がない。
 また、非排他的な権利であるから、複数の債権が同時に成立することもありえ、自由競争原理が働くので、物権の侵害とは違う考慮が要求されることになる。