【解除の法的性質】545条
【解除の法的性質】545条

【解除の効果:原状回復義務の発生】

 解除権が行使されると、各当事者は、相手方を原状に復させなければならない(545条1項)。
 この現状回復させるという債権関係の法的性質をどう考えるべきか。

 (直接効果説批判)
 この点、解除によって契約の効果は遡及的に消滅すると考えると、@未履行債務は消滅し、A既履行債務は、法律上の原因を失い、不当利得(703条)となる。
 しかし、不当利得の返還範囲は、現存利益の返還であるのに、何故、原状回復という全面返還に拡張されるのかが明らかでない。

 (折衷説)
  (前振り:そもそも解除とは、未履行債務があればそれを消滅させ、既履行債務については、その契約規範に基づき、契約のはじめに向かって契約関係を消滅させることに尽きる。とすれば、契約の遡及的消滅という構成をとる必要はなく、むしろその契約に基づいて原状回復がなされることが重要である)
 そこで、@未履行債務は消滅し、A既履行債務については、原契約の規範性により、新たな返還請求権としての原状回復請求権が発生すると考えるべきである。
 (つまり、解除により原契約が消滅するのではなく、原契約に基づいて現状が回復されるのである)

 現状回復とは、契約がなかった状態への復帰であるから、目的物の返還、履行利益の返還、利息、使用利益まですべて含まれることになる。