【債務の共同相続】
【債務の共同相続】


 【可分債務の場合】

 債務の目的物が可分であるばあい、各相続人はその相続分に従って、債務を分割承継する。(899条)


 【連帯債務の場合】

 では、連帯債務の場合はどうか。
 連帯債務の担保機能維持の要請と、共同相続における分割原則の、どちらを優先させるべきか、その調整が問題となる。
 これを、可分として分割承継するならば、担保力が弱まり、債権者保護に欠けるとの考えもある。しかし、逆に、各相続人が全額につき連帯して債務を負うとすれば、相続人の数だけ全額を負担する者が増加するわけであり、債権者に対し不当に過保護である。
 思うに、連帯債務者が死亡した場合に相続人がいないか、相続放棄があれば、債権者は担保力減少を甘受せざるをえないのであり、相続により債権者が一定の不利益を受けることは已むを得ない。
 (また、分割承継したことにより債権者が確実に害されるというものでもないし、相続人のうちの誰かの無資力の危険を、他の相続人が負担することが公平に適うとも思われない……?)
 よって、共同相続の分割原則を優先させ、分割承継すると考えるのが妥当である。




 (短縮バージョン)
 連帯債務であっても、可分であることは通常の金銭債務と同様であるから、899条の原則通り、各相続人の相続分にしたがって分割承継されると考える。


 ★双書(9)p106 百選U p57



 【不可分債務の共同相続】
 目的物が不可分の場合、共同相続人の各々は、全部給付の義務を負う。(430、432条)