【日常家事債務への110条の類推適用】
【日常家事債務への110条の類推適用】
・761条の趣旨
夫婦は日常の家事から生じた債務については連帯責任を負う。761条。
そして、夫婦の社会的実態から見て、この規定は単に連帯責任を定めたものにとどまらず、互いに代理権を与えたものであると考えられる。
この代理権は契約によるものではなく夫婦という地位に当然に伴うものであるから法定代理である。
夫婦は、日常家事債務の範囲内ではお互いを有効に代理して法律行為を行いうる。しかし、その範囲を逸脱すれば、代理行為は無効となるのが原則である。
では、この法定代理権を基本代理権として、110条の表見代理の成立を認めることは可能か。
(判例で)(110条趣旨類推説)
この代理権を基礎とし、表見代理を認めると、ほとんどの場合に表見代理が成立することになりかねず、夫婦財産の独立性を損なう。
そこで、基本的には表見代理成立を否定すべきだが、ただ、例外的に、当該行為が、日常家事債務の範囲内にあると信じる「正当な理由」(110条)が認められる場合に限り、110条の趣旨を類推して、表見代理の成立を認めるべきであろう。(取引の安全を守る必要性もあることから)
(近江は110の類推そのものを認める→財産独立性を損なわないように、「正当な理由」を厳格に判断することで、成立範囲を限定する)
(2006/05/23)