法学座敷牢 別名 ろうやぁ

論証集:民事訴訟法

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P要素でないベタ文章は、柴田作成のモノ:下書き、参考用

序論・民事紛争・民事訴訟の目的

裁判所

附加的合意の推定の原則(管轄の合意の意思解釈)

 (問題設定)
 当事者は訴訟契約として管轄の合意ができる(11条)が、このとき、専属的合意かあるいは附加的合意か不明確な場合は、どちらと推定すべきだろうか。
 (原則)
 合意が法定管轄の範囲でなされている場合には附加的と考えても無意味なので専属的と推定されるが、では、法定管轄範囲外で合意された場合はどうか。この場合、あえて法定外の管轄を合意した当事者意思からは専属的と考えるのが自然とも思える。しかし、法定管轄を排除することによって、一方当事者が、出廷に困難を来たすなどの不利益をこうむる危険を避けるためには、附加的合意であると推定するべきである。
 (約款などの形式的合意の場合)
 保険の契約約款に代表される、企業と消費者が取り交わす契約書において、管轄の合意がなされる場合には、一方の都合で形式的な管轄合意がなされ、他方当事者には実質的な合意の意思がない場合がある。この場合も、弱者保護の観点から、合意を附加的と考えるべきである。
 (補足)
 なお、専属管轄の場合も、当事者の合意に基づくものであれば、裁判所は職権で移送することができる。(17、20条)

■参考条文
(管轄の合意)
第十一条  当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
2  前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。

(遅滞を避ける等のための移送)
第十七条  第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

(専属管轄の場合の移送の制限)
第二十条  前三条の規定は、訴訟がその係属する裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合には、適用しない。

当事者

当事者確定の基準 (実質的表示説)

 (問題)
 誰が実際の当事者か、疑義が生じた場合、いかなる基準で当事者を確定すべきか。
 (反対説批判)(不要)
意思説……当事者の意思を判断する根拠が明確ではない。当事者確定を当事者の意思による、とするのは背理。行動説……何をして当事者としての行動というか不明確。

 (当事者の意義)(略?)
 (当事者は判決の名宛人として、判決に拘束されるため、当事者には十分な手続保証が必要とされる。)
   (実質的表示説)
 訴訟を開始するにあたって、迅速かつ明確に当事者を確定するためには、訴状の表示によって判断するべきである。もっとも、当事者氏名の記載のみを形式的に判断すると、実質的妥当性を欠き、訴訟経済にも反することになる。そこで、請求の原因や趣旨など一切の記載を合理的に解釈して、当事者を確定すべきである。

氏名冒用訴訟 ──当事者確定基準による処理の相違

【審理途中で冒用発覚】
 (事例:原告甲が乙を冒用した場合)
 意思説→当事者、確定できない×
 行動説→冒用者(甲)が当事者となる。表示の訂正をする。
 表示説→被冒用者(乙)が当事者となる。任意的当事者変更をする。(甲の行為は無権代理に準じて考え、乙の追認があれば遡及的に有効となり、追認が無ければ、訴えは却下されると考える。
 (事例:被告丙が丁を冒用した場合)
 意思説→被冒用者(丁)が当事者となり、訴状記載通りに確定(!?)
 行動説→冒用者(丙)が当事者となる。表示の訂正をする。
 表示説→被冒用者(丁)が当事者となる。裁判所は丙を排除し、丁を呼び出して、応訴(訴訟追行)させる。

【冒用発覚せず、被冒用者名で判決】
 (事例:被告丙が丁を冒用した場合)
 意思説→被冒用者(丁)に判決効及ぶ。(??)→上訴・再審で争う必要あり。
 行動説→被冒用者(丁)に判決効及ばない。→だが、外観上は判決の効力があるので上訴・再審で争うことができる。
 表示説→被冒用者(丁)に判決効及ぶ。→上訴・再審で争う必要あり。

(訴訟能力等を欠く場合の措置等)
第三十四条  訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠くときは、裁判所は、期間を定めて、その補正を命じなければならない。この場合において、遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、一時訴訟行為をさせることができる。
2  訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠く者がした訴訟行為は、これらを有するに至った当事者又は法定代理人の追認により、行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。
3  前二項の規定は、選定当事者が訴訟行為をする場合について準用する。

(法定代理の規定の準用)
第五十九条  第三十四条第一項及び第二項並びに第三十六条第一項の規定は、訴訟代理について準用する。

(口頭弁論を経ない訴えの却下)
第百四十条  訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。

(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一  当事者

死者を当事者とする訴訟

 (事例)
 死者Aに対して訴訟提起され、相続人Bが訴訟追行した場合
 (原則:表示説から)
 訴状の表示から、Aが当事者とされるが、Aは既に死亡して実在せず、死者に当事者能力がない以上、訴えは棄却される。これを看過して本案判決がされても、判決は無効である。
 (例外的措置)
 しかし、上記原則に対し、例外的な処置をするほうが、当事者の利益にかない、訴訟経済にも資する場合がある。
 例えば、(1)訴え提起後、訴訟係属前にAが死亡していた場合は、潜在的に訴訟係属が生じていたと考え、当然継承を類推して、訴訟係属後に当事者が死亡した場合に準じて、相続人が訴訟を継承できると考える。(124条1項1号類推)
 (注:訴訟係属時は、被告へ訴状が到達した時点=二当事者対面構造が成立するから)
 また、(2)潜在的訴訟係属が生じていない場合にも、相続人が訴状を受けとり死者の名で応訴していた場合には、任意的当事者変更により、相続人を当事者として訴訟を承継できると考える。
 死者の権利関係を受け継ぐ相続人は、実質的な当事者といえ、実質的な当事者が訴訟に関与していれば、手続保障は果たされているし、また相手方当事者の訴訟上の既得の地位を保障することもできる。

(訴訟手続の中断及び受継)
第百二十四条  次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない。
一  当事者の死亡
     相続人、相続財産管理人その他法令により訴訟を続行すべき者

民法上の組合の当事者能力(肯定説)

 民法上の組合に当事者能力は認められるだろうか。
 組合には社団性が認められないため、29条の要件を満たさないとも思える。
 しかし、(1)組合財産は組合員の共有に属する(民法668)とはいえ、個人財産とは区別されていること、(2)組合に帰属する法律関係が存在する以上、それに関しては組合の名で訴訟追行することが便宜であること、(3)業務執行組合員(民法670)は組合の代表者とみなされ、これが訴訟追行にあたれば、組合員に格別不利益を与えることもないこと、(4)紛争の相手方に対し、構成員を探知して提訴する負担を強いるのは酷であること、などの理由から、組合も代表者の定めがある限りにおいては訴訟法上の社団にあたり当事者能力が認められると考える。(29条)
 (判決効が、構成員に及ぶ根拠)
 なお、団体を当事者とする判決の効力は、構成員に及ぶか。
 これについては、組合の代表者が、訴訟担当者として当事者になるとすれば、115条1項2号により、その効力が、構成員に拡張されると考える。

(法人でない社団等の当事者能力)
第二十九条  法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

 29の趣旨:実際の紛争主体を裁判上も紛争主体とすることが解決手段として現実的である、ということ。

(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人 「当事者」=組合、「他人」=構成員

[民法](組合財産の共有)
第六百六十八条  各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する。

(業務の執行の方法)
第六百七十条  組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。
2  前項の業務の執行は、組合契約でこれを委任した者(次項において「業務執行者」という。)が数人あるときは、その過半数で決する。
3  組合の常務は、前二項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。

当事者能力の欠缺を看過した判決の効力

 当事者能力を欠いていることを見過ごして本案判決がなされた場合には、当事者能力のない名宛人に既判力や執行力が及ぶいわれもなく、内容的に無効の判決と考える。
 もっとも、外形上は有効な判決に対する救済が必要であり、「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反」として、控訴上告が可能である。(312条3項)  

(上告の理由)
第三百十二条  上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
3  高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。

 

訴訟能力

【論点】訴訟能力 1、1、訴訟能力とは、単独で有効に訴訟行為をなし、又は相手方や裁判所の行う訴訟行為を受けうる資格である。  訴訟能力制度の趣旨は、訴訟追行上自分の利益を十分に主張し守ることができないと思われる者の保護にある。 2、訴訟能力の有無は、行為能力を基準として決せられる(28条)。  具体的には、絶対的無能力者として、未成年者・禁治産者があげられる。ただし、未成年者が独立して法律行為を行える場合は、訴訟上も能力者とされる(31条)。  一方、制限的訴訟能力者として、被保佐人、被補助人があげられる。このような者が応訴する場合、保護者の同意は不要とされる。保護者には代理権があるとは限らず、そのような場合に保護者の同意を必要とすると、同意がない限り相手は被保佐人、被補助人を訴えることはできなくなる。このようにして、相手方の訴権が害されるからである。 二、訴訟無能力者の訴訟行為の効果であるが、当然に無効となる。訴訟行為が積み重なった後に取り消しうるとなれば、手続の安定を害するからである。  ただし、権限ある者は、無能力者がなした行為を追認できる。また、訴訟能力ない者の訴訟追行は、判決についての上訴・再審事由となる(312条2項4号・338条1項3号類推)。 3、訴訟能力の欠缺に関して、裁判所は職権で調査しなければならない。調査の結果、訴訟能力の欠缺が明らかになった場合、一定の期間を定めて代理人の選任などを内容とした補正命令を出す(34条)。  これに相手が応じない場合、訴えは却下される。

代理方式による当事者能力の拡充

【論点】代理方式による当事者能力の拡充 1、代理人とは、当事者本人の名で、代理人自身の意思決定によって訴訟行為を行い、あるいは受ける者である。  代理人制度の趣旨は、まず訴訟無能力者の権利保護のためである。  また、弁護士による訴訟代理を認めると、当事者の負担を軽くし、より有利な訴訟追行を期待できる。このように、訴訟能力者の便宜を図る点にその趣旨が認められる。 二、1、訴訟代理権の有無は、手続安定の要請から、書面による証明(規則15条、18条)が必要である。同様に代理権の消滅については、相手方に通知する必要がある(36条)。 2、代理権の有無は訴訟要件であるから、職権調査事項であり、ない場合は補正の対象となる(34条1項)。そして、補正されない場合、そのまま審理を続けることはできないから訴えは却下することになる。補正があっても、既になされた当該訴訟行為は、追認がない限り無効とならざるをえない。  一方、欠缺が看過されてなされた本案判決については、上訴・再審を求めうる(312条2項4号・338条1項3号)。

法定代理人

【論点】法定代理人 1、法定代理人とは、訴訟代理人のうち、その地位が本人の意思に基づかないものである。  その種類としては、実体法上の法定代理人と訴訟法上の特別代理人がある。前者は実体法上の法定代理人がそのまま就任するものであり(28条)、後者には訴訟無能力者の特別代理人(35条)、証拠保全に必要な場合(236条)などがある。 2、法定代理人の訴訟行為の効果はすべて本人に帰属する。法定代理人は当事者の能力を補充する者で、いわば当事者の身代わりであるからである。  その現れとして、法定代理人は訴状・判決書に表示される必要がある(133条2項・253条1項)。また、証人能力がなく、その証言を得るには当事者尋問手続(211条)による必要がある。  さらに、法定代理人の死亡・代理権喪失によって訴訟は中断する(124条1項)。

(広義の)訴訟代理人

【論点】訴訟代理人 1、代理人とは、当事者の意思に基づく代理人をさす。その種類としては、法令上の訴訟代理人と、訴訟委任に基づくものがある。  法令上の訴訟代理人とは、法令の規定によって一定の業務についての1切の訴訟追行をなし得るとされたものであり、その具体例は支配人である。  一方、訴訟委任による訴訟代理人については、訴訟委任行為によるものである。訴訟委任をするには、原則弁護士に対してしなければならない(54条1項本文)。その趣旨は、三百代言の暗躍による被害の発生を防止し、実質的に対等な当事者権の保障を図る点にある。  ただ、54条違反があっても、その者の訴訟行為は有効であり、以後訴訟関与を排除できるのみであると解する。これを無効とするとそこまでになされた両当事者の訴訟上の地位が覆り、逆に当事者に不利益になるからである。  訴訟代理権授与の方法は、訴訟委任行為により、代理権の証明は、当初は書面による必要がある。  なお、本人・法定代理人の死亡・訴訟能力の消滅等の事情については、訴訟代理権の消滅事由とはされないし、訴訟も中断しない(58条1項、124条2項)。  委任事務の範囲は明確に法定されているし、委任者の信頼を裏切られることも少ないからである。 2、このような訴訟代理人と法定代理人とはいかなる点が異なるか。  まず、法定代理人の場合とは異なり、本人は訴訟追行できる。し、訴訟代理人の就任によって、その地位を失うわけではない。だから、訴訟代理人の死亡・代理権喪失は訴訟の中断事由にならない。本人が訴訟追行できるからである  訴訟代理人の名は訴状・判決書の必要的記載事項ではない(133条2項・253条1項参照)し、本人とは独立した地位を持つので、証人能力もある。以上のような違いがあることになる。

代表者の登記と表見法理

【論点】代表者の登記と表見法理  法人の代表として訴訟追行をしていた者に代表権がなかった場合、その者がなし、または受けた訴訟行為はすべて無効である。  しかし、真の代表者と登記の表示が異なっている場合、商法14条など、私法上の表見法理の類推適用ができないのか。  思うに、法人に訴え提起する場合、代表者の確定には登記によるしかない。このような事情からすれば、相手方保護の為に表見法理の規定の適用を認めるべきであるかに見える。  しかし、法人の真の代表者によって裁判を受ける権利を奪うことは認められない。しかも、善意・悪意で結論が左右されるのは明確性に欠け、手続の安定の要請に反する。もともと表見法理は取引安全のためのものであるから、訴訟法に適用を認めるにはなじまないといえる。  また、無効な訴訟行為の効力を救うには、真に代表権ある者による追認を待つしかない。ただし、新たな代表者が実質的に訴訟に関与していた場合には、信義則上権限ある代表者は、追認を拒絶できない。このように解することで相手方を保護することができる。  したがって、表見法理の類推は否定すべきである。

訴え

境界確定の訴え

【論点】境界確定の訴え  境界確定の訴えとは、隣接地相互の境界が争われる場合、判決による境界線の確定を求める訴えをさす。  当該訴えは、形式的形成訴訟か、確認訴訟か。  思うに、土地の境界には租税・行政区画の基準となるなど、公共的性質がある。このような性質の境界を確定する訴えでは、判決をもって境界を合理的に形成する必要がある。  その意味で訴えの取下げや申立事項による裁判所の拘束(246条)など、処分権主義に関する規定を適用することはできない。また、裁判所は当事者の主張には拘束されず、弁論主義も妥当しない。しかし、このような効果は、確認訴訟とした場合、認めることはできないものである。併せて当事者が所有権の確認まで求める場合は、別訴を併合するか、反訴を認めれば足りる。  したがって、形式的形成訴訟説と解するのが妥当である。

二重訴訟の禁止

【論点】二重訴訟の禁止 1、1、既に訴訟係属を生じている時点において、同一当事者間では同一事件につき重ねて別訴での審理を求めることは許されない(142条)。  二重訴訟を認めれば、応訴義務を負う相手方にとって大きな負担であり、訴訟上も不経済である。さらに、判決内容が矛盾・抵触するおそれがあるからである。 2、かかる二重起訴の禁止に触れるか場合とは、具体的には事件が同一でありながら、それらが併合審理されない場合である。  その判断は、当事者の同一性、かつ事件の対象の同一性の有無をもって判断すべきである。  当事者の同一性については、例えば、原告・被告が逆転する場合、判決効の及ぶ者が別訴を提起する場合は問題なく禁止に触れる。いずれも判決の矛盾・抵触の危険があるからである。  さらに、事件の対象が同一であり禁止に触れる例としては、訴訟物自体が同一である場合、事実関係や裁判資料が共通する場合、主要な争点が前訴と共通する場合などである。  なお、二重訴訟の禁止に触れる場合の効果であるが、原則として、後訴が訴えの利益なしとして却下される。しかし、完全に両訴訟が1致する場合でない限り、併合審理を認めることで不適法を回避すべき場合を認めるべきである。訴訟経済上好ましいし、当事者の便宜も図りうるからである。

債権者代位訴訟と二重起訴

【論点】債権者代位訴訟と二重起訴  債権者代位訴訟において、債務者は当事者ではない。そこで、債務者が第3債務者に訴え提起をすることは、訴訟法上の問題はないかに見える。しかし、債務者は、代位訴訟の判決効が及ぶものである(115条1項1号)。したがって、債務者による起訴は二重起訴の禁止に触れる。  また、債権者代位訴訟中は債務者は債権に関して処分行為はできない。すなわち債務者は実体法上も、訴え提起できないはずである。  以上から、債務者が第3債務者に訴え提起をすることは許されないと解する。 (ただし、債権者の代位権限をあらそう独立当事者参加は可能であるし、共同訴訟的補助参加の方法によってその利益を確保させるべきである)。

理由中の判断に既判力が生じる場合

【論点】理由中の判断に既判力が生じる場合 例 前訴で相殺の抗弁を出し、別訴で自働債権の給付訴訟をなす場合、前訴で主張した債権を別訴で抗弁に供する場合  相殺の抗弁は理由中の判断に過ぎない。したがって、説例の訴え提起は、いずれも二重訴訟の禁止とは無関係であるかに見える。  しかし、相殺の抗弁には、既判力が生じるから(114条2項)、これと別訴の既判力の抵触のおそれがある。また、相手方の負担・訴訟経済の点で不都合性があるのは通常の場合と同様である。  したがって、二重起訴の規定が類推され、本件のような訴訟における別訴提起は違法であると解する。

二重起訴の禁止の効果

【論点】二重訴訟の禁止〜効果  裁判所は本禁止に触れるか否かについては、職権で調査し、権利・請求の双方が同一の場合は、直ちに不適法却下しなければならない。また、権利関係が同一の場合、釈明の上で、訴え変更・反訴提起を待つか、弁論を併合するかの態度を採ることになる。  一方、矛盾する判決がでた場合、後になされた判決が再審で取り消される(338条1項)。

時効中断される権利の範囲

【論点】時効中断される権利の範囲 1、訴訟物として主張された権利関係について時効中断が生じる。相手方提起の消極的確認の訴えによっても時効中断効が生じるし、攻撃防禦方法としての権利関係も同様の効果が生じる。 2、一部請求の場合、明示があれば一部請求の残部請求が認められる。その場合、一部について時効中断効が生じる。一方で明示がない場合は、全額について時効中断効が生じることになる。

訴訟上の請求・訴訟物の意義

【論点】訴訟上の請求・訴訟物の意義 1、訴訟物とは、民事訴訟における審判の対象のことである。具体的には、原告から裁判所に対してなされる権利・法律関係の存否の主張をさす。  したがって、訴訟物の特定は、原告によってなされることになる。 2、訴訟物は当初から確定しなければならない。  裁判所は当事者の申し立てた事項についてのみしか審判できる(264条)、訴訟物が特定しなければ裁判所は審理を開始できない。  かつ、二重起訴の禁止に触れるか、再訴禁止効に触れるかなど、訴訟要件の有無を、訴えの理由の有無を判断するためには訴訟物が何かを決定する必要がある。  また、被告としては、審判対象が特定されなければ攻撃防禦が十分にできないし、場合によっては不意打ちのおそれもある。  最後に判決効の客観的範囲を決定するにも訴訟物が何であるかが前提になるし、口頭弁論終結後の承継人など既判力の主観的範囲を決定するにも、訴訟物が何であるかが影響することになる。 *訴訟物論争→上記2の2段落、3段落にある問題を検討する場合に、影響がある可能性がある。ただし、訴訟物を何と見るかによって結論が導かれるという論法は過去のものとなっているので、これに神経質になる必要はない。

訴訟物理論

【論点】訴訟物理論  思うに、訴訟要件の有無に関する判断基準は明確である必要がある。しかも、攻撃防禦の目標とならなかった他の権利については、別訴で争えると解した方が、当事者の手続保障が実現されやすい。  したがって、訴訟物は原告による権利主張であり、その内容は実体法上の個々の権利・法律関係の主張と解する。

処分権主義の根拠

*処分権主義の定義  処分権主義とは、当事者が訴訟の開始、訴訟物の特定、訴訟の終了紛争の実体的解決について処分権能を有し、これらについて自由に決定できる建前のことである。 【論点】処分権主義の根拠  民事訴訟の主題たる私法上の権利・法律関係は、私的自治の原則に委ねられている。したがって、国家は積極的な介入をする必要性はないし、許されもしない。  そこで、私法上の権利実現手続である民事訴訟制度の利用における態度決定も当事者に1任しようとする観点から、処分権主義が導かれる。

処分権主義の機能

【論点】処分権主義の機能  処分権主義の機能は多岐にわたるが、まず原告に民事訴訟制度を利用するか否かの決定を任せ、紛争処理方式の選択を保障する。この現れとして、原告が訴えを提起しなければ、訴訟は開始しない。逆に、訴えの取下げも認められている。  さらに、民事訴訟制度を利用するとしても、その際の審判対象、審理の範囲、審理方式の自主形成をさせる機能を持つ。特に、このことは原告の申立事項外の点についての判決の効力を生じないことに現れている(246条)。  一方、被告にとっては、判決される範囲が明確になることから、処分権主義は不意打ちを防止する機能を果たす。すなわち、手続保障機能を果たすことになる。

246条違反の効果

【論点】246条違反の効果  裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決することができない(246条)。この申し立ててない事項とは、申し立てた事項の範囲を超えた場合を含む。したがって、原告が訴求した以上の請求を裁判所が認めた場合、判決は違法なものとなる。これは、審理の方式に関しても同様であり、例えば、確認の訴えを提起に対して訴えの利益が認められない場合、訴えの変更がないまま給付判決を下すことはできない。  本規定違反により下された判決は、当然に無効とはならず、控訴・上告によって取り消されうるに止まる(312条3項)。ただし、訴えの変更によって、控訴審で申立がない部分につき新たに申立がなされれば、瑕疵は治癒される。

一部認容判決の可否(申立事項の意思解釈による拡大)

【論点】申立事項の意思解釈による拡大  申し立てた範囲以下での一部認容判決は、処分権主義との関係で違法な判決とはらないのか。  一部認容判決が認められないとすれば、原告の請求通りの事実はない以上、原告の請求を棄却せざるを得ない。しかし、このように解した場合、原告に正確な債権額の認識を要求することになるが、これは例えば損害賠償請求の場合などでは困難である。  思うに、原告は棄却判決よりは一部認容を求めるはずだし、被告にとっても、全面敗訴の場合がありうることからしても、不意打ちとはなるわけではない。紛争の1回的解決にも資する。  したがって、一部認容判決が許容される場合はありうると解する。もっとも、建物の明渡請求などは、単なる量的な問題ではない。したがって、このような場合に、一部明渡等の一部認容判決をすべきでないのは当然である。

引換給付判決は認められるか

【論点】引換給付判決は認められるか  引換給付判決とは無条件の給付請求に条件を付している場合である。かかる判決は、一部認容の1場合とみうるから、適法であると解する。

債務の上限を示さないでする一部不存在確認の訴え

【論点】債務の上限を示さないでする一部不存在確認の訴え  本件では、原告は単に100万円を超えて債務は存在しないことの確認を求めている。にもかかわらず、裁判所は200万円を超えて存在しないと判決しているが、かような判決は処分権主義との関係で適法といえるか。  一部認容判決は適法である。とすれば、これも一部認容判決の一部とみうる以上、適法であると解することができる。  とはいえ、この場合、残債務の数額について確定することを債務者たる原告は望んでいないと思える。また、この場合残債務額がいくらになるかの上限を原告が示していない。このことから、攻撃防禦の目標も明確でならず、不意打ちの危険があるともいえそうである。  しかし、残債権額の確定のため、被告に別訴提起を求めるのは手段として迂遠である。また、通常は訴外で債権者が上限を定めているのが通常であるから、そのような事情があれば、攻撃防禦の目標も明確になる。  以上から、裁判所は債務の一部不存在確認に対して、上記のような判決はできる。本件判決は適法である。     

一部請求の問題・残額請求の可否

【論点】一部請求の問題〜残額請求の可否  一部額の給付請求について判決がなされ確定した場合、残額を請求しうるか。  民事訴訟上、訴訟物の範囲の確定について、処分権主義が取られているから、訴外では債権の分割行使はなしえる以上、訴訟上も同様に債権の一部行使をすることを認めるべきである。また、試験訴訟の途を開く必要があるから、残部請求を認める必要もある。  しかし、これを全面的に肯定すると、全部請求だと考えた被告にとって、不意打ちの危険があることは否めない。また、原告によって債権を細かく分割行使することなどによる訴権の濫用のおそれがある。  そこで、前訴で一部請求であることが明示を要求する。このように解すれば被告の不意打ちを避けることができるからである。一方、被告の応訴の煩を避けるには、訴権の濫用として信義則の規定の運用によって対応すればよい。  以上から、前訴において一部請求であることの明示がある場合のみ、残額の請求も認めると解する。  なお、明示があって残額請求できる場合は、既判力は前訴の請求額のみに生じることになる。

後発損害の賠償請求

【論点】後発損害の賠償請求 1、交通事故による損害賠償請求の前訴で勝訴した場合、同一事故の後遺症による後発損害の賠償請求は認められるか。  これを認める構成として、既判力の時的限界の問題として処理する考え方がある。後発損害については、基準時以前に提出できなかった事由とみて、後訴での後発損害の賠償請求を認めるのである。  しかし、後発損害が前訴判決の基準時前に客観的に具体化した場合、請求が認められなくなる結論を導きかねず、不当である。  思うに、後発損害も当初の不法行為を原因として発生したものである。また、通常の債権に一部請求が認められることから、後発損害の賠償請求も、一部請求の問題として考えるべきである。 2、ただ、このように一部請求の問題とすると、前訴において明示を要求するができない。とすれば、本請求は否定されるかに見える。  しかし、原告は後発損害について賠償を請求しようにも請求できなかったものである。請求を認めないとすれば、権利保護を全うすることはできない。また、この場合は、訴権の濫用を招くおそれもない。  したがって、特段の事情がない限り、明示ないまま後訴での残額は認められるというべきである。

一部請求と相殺(または過失相殺)

【論点】一部請求と相殺(または過失相殺)  被告甲は300万円の原告乙に対して有する債権をもって、相殺の抗弁を提出している。しかし、乙は本件訴訟で500万円の債権のうち、一部の300万円を請求している。この場合、相殺の基準となる債権をどのように解するべきか。  思うに、原告の意思としては、300万円を訴求しているから、できるだけこれに近い額を得ることを期待すると思われる。かつ、あえて一部請求している意図は、相殺を予想したものとも考えられる。  以上から、相殺は債権全額を基準としてなすべきである。したがって、裁判所は200万円の請求認容判決をすべきである。

訴訟要件と本案審理の順序

【論点】訴訟要件と本案審理の順序  訴訟要件具備の判断と本案審理とは、並行してなされる。ただし、判断としては、論理的には、訴訟要件が本案審理に先行しなければならない。  しかし、それでも本案棄却の結論の方が先に出てしまった場合どのように処理すべきか。  原則として、本案判決はできないのは間違いない。  しかし、@棄却判決の場合でA被告自身の利益保護・無益な訴訟排除を目的とする訴訟要件が問題となるときは、別異に解する余地がある(無益な訴訟の排除を目的とする要件とは訴えの利益や仲裁契約等である)。この場合、被告の応訴の煩を避けるための要件の判断を待つよりも、終局的判断たる棄却判決をなす方が被告の保護になる。  したがって、このような場合は、訴訟要件の有無が明らかでないまま、棄却判決をなしうるとすべきである。

訴えの利益の有無の判断

*訴えの利益の意義  訴えの利益とは、審判対象である特定の請求が本案判決による争訟の処理に適するかどうかの判断基準である。 【論点】訴えの利益の有無の判断  訴えの利益の有無は、本案判決がなされるべき必要性、本案判決による紛争処理の実効性等の要素から個別具体的に判断すべきである。  訴えの利益が否定される場合として、法律上の争訟性を欠く場合がある。単なる事実の存否の争いなどは訴えの利益を欠くことになる。ただし、証書真否確認の訴えについては例外的に訴えの利益が認められる。紛争解決の実を挙げることができるからである。  他にも、二重訴訟の禁止・再訴禁止、当事者間の特約に触れる場合や、既に確定判決を得ている場合、訴え以外の特別の救済手段がある場合も訴えの利益を欠く。訴権の濫用と評価される場合も同様である。

給付の訴えの利益

【論点】給付の訴えの利益  給付の訴えの利益はいかにして判断すべきか。  まず、現在の給付の訴えは、訴求可能な給付請求権を主張するものであるから、原則として訴えの利益が認められる。  一方、将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる(135条)。しかし、「あらかじめ……請求をする必要がある場合」の内容が不明確であり、問題となる。  思うに、将来の給付の訴えの対象は、権利義務の発生はありうるが、判決の基準時までに履行すべき状態にないものである。そこで、訴えの利益ありといえるには、最低限将来給付を求める基礎となる資格が認められる必要がある。例えば、期限未到来・停止条件未成就の請求権の債権者であることが必要である。  加えて、あらかじめ給付判決を得ておく必要がある場合は原則として認められない。履行期に給付が期待できる限りで、訴訟をする必要はないからである。したがって、必要性が認められるのは、例えば義務の存在・履行の条件などに争いがある場合があげられる。このような場合は履行期の給付が期待できないからである。  また、例えば、定期行為・扶養料等に関する債権についても、将来給付の訴えの利益が認められる。これらの場合、履行遅滞があると意味が無くなったり、損害が極めて重大な結果をもたらす可能性があるからである。

将来の不法行為に基づく損害賠償請求権

【論点】将来の不法行為に基づく損害賠償請求権  将来も継続するであろう不法行為についての損害賠償請求権について訴えの利益は認められるか。  まず、請求権として成立しなければ、将来給付を求める資格はない。加えて、損害の額が明確に確定できなければ、訴えの利益は認めることはできない。  以上の条件をクリアーする例として、不法占拠者に対する明渡義務履行までの損害賠償金の支払請求があげられる。かような場合、明渡日まで必ず損害が発生するし、その額も、賃料相当額と明確だからである。  一方、騒音公害による損害賠償請求権についてはどうか。  思うに、公害による損害は発生するかどうかが不明確であるし、その範囲も明らかではない。したがって、(原則として)請求適格すら認められないということになる。 (ここで否定してよい)  しかし、同一態様による侵害の継続が明確で、賠償請求権発生の事実関係を現在確定しうる場合ならば、上記の不法占拠者による場合と同様に考えられる。  したがって、このような場合は訴えの利益を認めてよいと解する。

確認の利益が認められる場合

【論点】確認の利益の認められる場合 1、確認の訴えの利益はいかにして判断すべきか。  思うに、確認行為という性質上、確認の訴えの対象は無限に拡大しうる。したがって、限界付けが特に重要となる。  しかも、確認の訴えには強制的実現を伴わないから、そのような判決を得ておく実益は低い。給付判決によるべきときには、確認の訴えの利益は認められないことになる。  このような意味で、確認の訴えの利益が認められる場合は相当限定されることになる。 二、1、具体的に確認の訴えの利益が認められる場合を検討する。  まず、現に争われている(1)自己の(2)現在の(3)積極的(4)法律関係の確認請求においては、確認の利益が認められやすい。 2、(1)反対に、他人の法律関係についての確認請求は認められない。これを確認するよりも、その当事者の権利関係を明らかにした方が、紛争解決という意味で直截だからである。 (2)過去の法律関係の確認にも、確認の利益は原則認められない。現在の紛争を解決できないからである。 (3)相手方の所有権不存在確認のような消極的確認の訴についても、原則訴えの利益は認められない。所有権の所在について確定しないから、紛争の終局的解決について実効性が低いからである。 3、しかし、上記で述べた基準に反しても、紛争解決の実効性が認められる限りで、確認の訴えの利益が認められる場合がある。 (1)まず、転借人による原賃貸借契約における貸主の所有権確認の訴えは、自己の法律関係でなくても確認の訴えの利益が認められる。原賃貸借契約の貸主に賃借権限がなければ、転借人は、自己の地位が脅かされるからである。 (2)また、過去の法律関係から派生する現在の紛争を抜本的に処理できる場合は、確認の訴えの利益が肯定されると解する。  例えば、株主総会決議の不存在・遺言の有効性などは上記のような場合にあたる。 (3)債権不存在確認の訴えについては訴えの利益が認められる。債務者が債務が存否が確定しない不安定な地位から逃れるには、事の性質上、確認訴訟によるしかないからです。 (4)また法律関係でなくても、証書の真否確認の訴えは例外的に確認の訴えの利益が認められる。証書は契約の成立や権利の所在を示すなど、事実認定において有力な証拠になる。これが真正であることが判明すれば、それだけで紛争が抜本的に解決される可能性があるからである。

形成の訴えの利益

【論点】形成の訴えの利益  形成の訴えは、法律で規定されている場合に限り認められる。これは、法律が既に形成の訴えが認められる場合を選び出しているとみることができる。  したがって、原則として、形成の訴えの利益は認められることになる。

当事者適格の判断基準

*当事者適格の定義  当事者適格とは、当該訴訟物につき、自ら当事者として訴訟を追行し、本案判決を求めうる資格のことである。 【論点】当事者適格の判断基準  原則、訴訟物の権利の主体と主張し、される者に当事者適格ある。ただし、第三者が当事者として、訴訟追行する場合が例外的に認められる(訴訟担当)。

法人の内部抗争と当事者

【論点】法人の内部紛争と当事者  本問株主総会では、取締役の選出において、Bは落選した一方、Aの取締役への選任決議がされている。法人に関する訴訟においては、(商法その他の法で原告適格に関する規定はあるが、)被告適格に関する規定はない。そこで、かかる決議の効力をBが争う際、誰を相手に訴えを提起すべきか。会社の内部事項に関する訴訟における被告適格を誰に認めるべきかが問題となる。  この点、その者が利害関係を最も有する者であることを理由に、自称代表役員に当事者適格を認めるべきであるとする見解がある。  しかし、対立は代表役員相互間に止まらないから、利害関係人がさらに法人に対して訴えを提起できることになり、紛争の終局的解決ができない。思うに、利害関係人の利害を調整・集約する法人を被告とすべきである。自称代表役人は共同訴訟人とすれば足りる。  以上から、法人に被告適格を認めるべきである。

任意的訴訟担当

*法定訴訟担当の意義  実質的利益帰属主体の権利・法律関係を内容とする訴訟物につき、利益帰属主体に代わって法律上、第三者に訴訟追行権が付与される場合をさす。具体例は、債権者代位訴訟、株主代表訴訟である。 【論点】任意的訴訟担当  任意的訴訟担当とは本来の当事者適格者が、その意思で第三者に訴訟追行権を授与して、当事者として訴訟を追行させることをいう。  法が認めている場合としては、選定当事者(30条)、手形の取立委任裏書をうけた被裏書人などがある。  このうち、選定当事者とは、共同の利益を有する多数の者の中から全員のために当事者となる者を選定する制度である。例えば、組合において代表者の定めがない場合、本制度を利用することによって、組合員全員が当事者になる必要がなくなることになる。 *選定当事者の制度の利用について、訴え提起の当初から当事者を選定する必要は必ずしもない。訴訟係属中に係属中の訴訟追行者を選定当事者とすることも可能である。多数の関与者が発生する紛争の処理において、後になって訴訟が進行中である者の権利保護、紛争の1回的解決を実現しやすくなっている。

任意的訴訟担当における問題点

【論点】任意的訴訟担当における問題点  任意的訴訟担当は、明文にある場合以外に認めることができるか。  これを認めた方が当事者の訴訟行為の便宜になる。例えば、当事者が組合を形成しているなど、多人数に上る訴訟において、業務執行組合員に訴訟を任せることができる。  しかし、安易に任意的訴訟担当の許容すれば、弁護士代理の原則、訴訟信託の禁止の趣旨に反し、その結果、三百代言による依頼者の利益の侵害、訴訟の混乱を招く危険が生じる。  そこで、その許容基準を明確にしなければならない。具体的には、正当な業務上の必要・正当な理由がある場合は任意的訴訟担当は許容されると解する。  これに組合の業務執行組合員があたるか検討すると、その者は訴訟物たる権利関係に包括的な管理権を持っているので、権利主体と同程度以上に権利関係につき知識があるといえる。その意味で充実した訴訟追行が認められる。しかもこの者は、他の者と共同することで適格が認められるし、この者に訴訟担当を認めても、前記の弊害は生じない。  以上から、業務執行組合員による訴訟担当は認められる。  同様に、第三者が自己固有の利益を有する場合も訴訟担当が認められる。かかる第三者は本来の訴訟物たる権利関係に法律上の利害関係があるし、事実についての知識もある。とすれば、充実した訴訟追行が期待できる上に、上述の問題点も生じないからである。  この例として、第三者が占有を継続する場合、所有権に基づく返還請求については、売買の売主にも当事者適格を認めてよい。売主は訴訟の帰趨によっては、買主から担保責任が追及されるおそれがあるからである。

訴訟の審理

口頭弁論中心主義

【論点】口頭弁論中心主義  民事訴訟の審理は、口頭弁論期日に、裁判所の面前で両当事者の関与を保障しつつ口頭弁論の方式で行われることになる(口頭弁論中心主義)。その目的は、当事者に十分手続に関与し、手を尽くさせる機会を保障する点にある。

必要的口頭弁論の原則(87条1項本文)

【論点】必要的口頭弁論の原則(87条1項本文) 1、口頭弁論とは、裁判所の面前で当事者双方の関与の下に、口頭で弁論及び証拠調べを行って裁判資料を収集する審理手続をいう。  判決で裁判をすべき場合には必ず口頭弁論が開かれなければならない(87条1項本文)。また、口頭弁論に顕出された事実主張や証拠だけが裁判資料として裁判の基礎となる資格を持ちうる(158条)。かかる規定から、民事訴訟では審理の方式として、口頭弁論が採用されているといえる。  その趣旨は両当事者に口頭弁論手続による攻撃防禦の機会を保障する点にある。 2、なお、必要的口頭弁論の原則に違反した判決は、上訴の対象となる(上告事由について、312条2項5号)。ただし、再審事由ではない。

口頭弁論における建前

【論点】口頭弁論における建前 1、公開主義とは、訴訟の審理及び裁判を国民一般の傍聴しうる状態で行うべきことをいう。その趣旨は、公開によって審理・裁判の公正を担保し、国民の司法に対する信頼を確保する点にある。  かかる建前に違反してなされた判決は、上訴によって取り消される(上告事由について312条2項5号)。ただ、再審事由ではない。 2、双方審尋主義とは、口頭弁論の手続において、対立当事者双方に言い分を主張する機会を平等に保障すべきとする審理原則である。  これは、裁判を受ける権利(憲法32条)に関する、平等原則(14条)が訴訟上において発現されたものということができる。したがって、かかる建前を維持するため、裁判所の中立性が維持されなければならないことになる。

口頭主義と書面主義

【論点】口頭主義と書面主義 1、1、口頭主義(87条1項)とは、口頭で陳述されたものだけが、裁判資料として判決の基礎たりうるとする建前である。  かかる建前を採用しなければ、公開主義を取った意味が希薄になる。また、口頭による陳述は、印象が新鮮であり、臨機応変に審理が尽くされうるという利点を持つ。これが口頭主義が民事訴訟手続において採用された理由である。  この意味で口頭主義は、公開主義とは密接に結びつく。また、直接主義とは、結合して高めあう関係にあるといえる。 2、しかし、口頭による訴訟資料の提出は、聞き間違い、言い間違いがある可能性があるので確実性に欠けるし、複雑な事項が陳述された場合、理解が困難となり、審理が混乱するおそれがある。  また、口頭による陳述の記憶は困難であるから、口頭主義を貫くと、上級審における下級審の裁判の審理が困難になる。 3、かような短所克服のため、書面による補完が必要となる。  訴訟法上の書面主義の現れとして、争点整理のために、訴状(133条)、準備書面(161条)が作成される。いずれも確実性を期し、複雑な事項の理解を助けるためである。一方、口頭弁論調書(160条)判決書(253条)も書面による。記録を残し、上訴審の審理を可能にするためである。

直接主義

【論点】直接主義 二、1、直接主義とは、当事者の弁論の聴取や証拠調べを判決をする裁判官自身が行う原則を指す(249条1項)。その趣旨は、陳述の趣旨、真偽を正確に理解し、その結果を裁判所に直結させる点にある。  直接主義違反のままなされた判決は、上告事由(312条2項5号)となり、かつ再審事由(338条1項1号)ともなるので、重大な瑕疵ありといえる。 2、ただし、訴訟経済の要請から時には直接主義も後退せざるを得ない。  その現れとして、弁論の更新(249条2項)がある。これは、審理の途中で裁判官が交代した場合、新裁判官の面前で従来の弁論の結果を陳述すればよいとするものである。  ただ、当事者が改めて尋問の申出をする場合は証人尋問をやり直す必要がある(249条3項)。直接主義を骨抜きにしないためため、証人尋問については例外的取扱がなされるものである。

口頭弁論準備の制度

【論点】口頭弁論準備の制度 1、1、口頭弁論準備の制度の目的は、訴訟の審理を充実・促進させることにある。  準備制度が整備されなければ、争点・証拠が未整理なまま口頭弁論が始まらざるをえない。このような場合、準備不足から一方当事者の攻撃防禦に他方が対応できず、新たな期日を開かざるを得ず、併行審理が行われることになる。  しかも、実務法曹の不足の現状では、裁判所・弁護士が忙しく、各期日間の間隔の長期化することを避けられないから、これが相まって訴訟が長期化することになる。 (2)このような訴訟の長期化は、裁判官の交代を招き、直接主義の長所を減殺することにつながる。しかも、口頭弁論期日が準備書面の交換期日となり、口頭主義の長所も減殺されることになる。  このような問題を克服し、審理を促進させ、充実した審理を可能にするため準備の制度が整備されている。 (2、旧法下、準備手続制度は定められていたが、強力な失権効があった。そこでは必ずしも必要でない攻撃防禦方法まで提出せざるを得ず、裁判所・当事者の負担が過大となるので、上記制度はほとんど利用されなかった。  しかも、随時提出主義が取られていたので、時機に遅れた攻撃防禦方法の却下も十分に機能できなかった。  かかる問題点への従来の実務の対応としては、弁論兼和解の方法などが試みられた。  これは、法廷以外でテーブルを囲んで争点整理・和解に重点を置いて、口頭で事案の背景を明らかにする審理方式である。) 二、1、具体的には、次のような制度がある。  まず、当事者に事前調査義務(規則85条)を課した引換えに、当事者照会制度(163条・規則84条)を創設することで調査の手段が与えられている。 2、また、準備書面制度(161条1項)の利用により、最低限の争点・証拠の整理が可能となるが、これで不足する場合のため、争点・証拠整理手続が設けられている。具体的には、弁論準備手続(168条以下)、準備的口頭弁論(164条以下)がある。これらは、旧法下における準備手続・弁論兼和解を整理したものである。  また、書面による準備手続(175条)が設けられ、隔地者間に訴訟が係属した場合など、裁判所が相当と認めるとき、当事者の意見を聞いてなされる。  この手続は当事者の出頭なしに、ファックスなどを利用しつつ、書面をもって争点や証拠の整理をする手続である。当事者の便宜・整理の促進が期待できる。 3、加えて、必要に応じて、口頭弁論の準備をきめ細やかに進めるため、口頭弁論期日外の釈明権・求問権行使が認められた(149条)。さらに、口頭弁論期日において釈明処分として、準当事者に陳述させうることになった(151条1項2号)。

準備書面

【論点】準備書面 1、口頭弁論は書面で準備しなければならない(161条)とされている。準備書面とは、当事者が口頭弁論において陳述しようとする事項を記載し、裁判所に提出する書面をいう。  その目的は、自己の口頭弁論における主張・立証内容を裁判所・相手方に知らせて準備させる点にある。かかる準備書面は、161条所定の方法で作成され、相手方が準備をするのに必要な期間をおいて裁判所に提出する必要がある。  なお、特定事項について証拠の申出をすべき期間を裁判所が定めることができるとされた(162条)。柔軟な訴訟運営を可能にするためである。 2、準備書面の効果として、準備書面の記載事実は、相手方が欠席しても主張できる(158条)。逆に記載していない事項は、相手方が在廷してない場合口頭弁論で主張できない(161条3項)。かかる効果を発生させることによって、準備書面において可能なだけ多数の主張・立証内容があげられることが期待できる。 (なお、口頭主義の建前から、記載内容は弁論しなければ裁判資料とはできない点は注意すべきである)。

準備的口頭弁論(164条以下)

【論点】準備的口頭弁論(164条以下)  口頭弁論の中で争点・証拠の整理を行うもので、口頭弁論としてその原則・手続の規定にしたがって実施される。  社会的関心が大きい事件などでは、弁論準備手続に寄らず、公開手続である本制度が利用されるべきである。  手続としては、裁判所が必要と認めるとき、決定をもって開始される。争点・証拠整理が十分になされたと裁判所が判断した場合、証明すべき事実を確認の上(165条)決定で終了される(166条)。終了後は未提出の攻撃防禦方法を提出する際に提出できなかった理由を書面で説明すべきことになる(167条)。  

弁論準備手続(168条以下)

【論点】弁論準備手続(168条以下) 1、1、弁論準備手続は、旧法下における弁論兼和解から、和解を切り離し、争点や証拠の整理を目的として整備された手続である。  対席手続がとられるが(169条1項)、原則非公開(169条2項)である点が、準備的口頭弁論との違いである。その他の点は、実施の際には口頭弁論の規定が準用される(170条など)。準備段階において実質的審理が開始されることに鑑みて、厳格な手続をおいたものである。 2、上記のように、口頭弁論の規定が準用される結果、弁論準備手続では、例えば文書について証拠調べでき(170条2項)、より周到に証拠・争点の整理が促進されることになる。 3、ただし、本制度は口頭弁論によるものではないから、証拠調べの結果は口頭弁論で結果を陳述しなければ、訴訟資料として採用されるわけではない(173条)。  手続終了後の攻撃防禦方法の提出しようとする者は書面で提出できなかった理由を説明する義務が課される(174条)。このような不利益は、できるだけ準備手続段階で争点・証拠を出し尽くさせるためのものである。

適時提出主義(156条)

【論点】適時提出主義  旧法下では、口頭弁論の1体性から随時提出主義がとられていた。しかし、かかる建前の採用は、訴訟の進行が緊張を欠くきらいがある。しかも、時にはかけひき・訴訟引き延ばし策として濫用される結果を招く。  そこで、新法では、攻撃防禦方法は訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならないとされた(156条)。適時提出主義の採用である。 *口頭弁論の1体性  口頭弁論は全体を1体と捉えて等しく判決の基礎とされること *随時提出主義  口頭弁論の終結に至るまでいつでも随時に攻撃防禦方法を提出することができる建前

継続審理主義

【論点】継続審理主義  継続審理主義とは、1事件のために口頭弁論を集中的かつ継続的に行って、その事件の審理を終了させた上で、他の事件の審理に取りかかるとする審理方式である。  本来、規則では継続審理主義が採用されている。しかし、現実には法曹人口の不足から、併行審理を行わざるをえない状況にある。  現訴訟法下では、争点・証拠整理手続を集中させ、できる限り継続審理を実現するため、適時提出主義、集中証拠調べなどの制度が採用されている。

口頭弁論の制限・分離・併合(152条)

【論点】口頭弁論の制限・分離・併合(152条)  弁論の制限とは、訴訟物が複数、もしくは数個の独立した攻撃防禦方法が争われている場合、そのうちの1つに審理を制限し、集中した審理を行うことをいう。  弁論の分離とは、客観的併合や主観的併合のなされている場合、各請求を別個の手続で審理することをいう。  弁論の併合とは、同一の裁判所に別々に係属している複数の訴訟を、1つにまとめて1個の裁判所による同一の口頭弁論で審理・判決する処置をいう。かかる措置をとるには、共同訴訟・客観的併合の要件を備える必要がある。 *特に弁論の併合は、後発的に複数当事者訴訟を実現する有効な手段となっている。

当事者の欠席

【論点】当事者の欠席 1、最初の期日における一方当事者の欠席 1、最初の期日において一方当事者が欠席した場合、準備書面に記載した事項は、欠席当事者が期日にこれを陳述したものと看做される(158条)。一方、相手方は準備書面に記載のない事項を主張してはならない。  以上から、出席当事者には準備書面に基づいて現実に弁論をさせ、これと欠席当事者の準備書面の内容とをつきあわせて審理することになる。  具体的には、欠席者が準備書面で、相手方の準備書面の内容について明らかに争っていないときは擬制自白が成立する(159条3項)。また、欠席者の準備書面で主張事実を認めるとの記述があるとき、裁判上の自白が成立する。 2、なお、続行期日における一方当事者の欠席においては、158条の適用はない。口頭主義が骨抜きになるからである。 二、当事者双方の欠席  当事者双方の欠席について、審理を進める余地がないから当該期日は終了する。  加えて、1ヶ月内に期日指定申立がなされない場合、訴えの取下げが擬制される。かつ、連続して欠席・退廷をした場合も同様に扱われる(263条)。いずれも、民事訴訟制度を利用する意思がないとみることができるからである。 3、当事者の欠席と判決  新たな訴訟行為が何も行われていなくても、裁判所は終局判決ができる場合がある。審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときである(244条)。

公示送達を不当に用いて被告敗訴判決が確定した場合

【論点】公示送達を用いて、被告敗訴判決が確定した場合  本問では、被告敗訴判決が確定しているから、原則として被告はそれ以上争うことはできない。  しかし、本問原告は、被告の所在地を知りながら、あえて所在不明として、公示送達の方法を用いている。かかる場合、被告は手続に関与する機会を不当に奪われているといえるから、これを保護する必要性がある。  この手段として、まず被告は上訴の追完を求めることができ、(285条)再審を求めることもできる(338条1項5号)。  加えて、端的に判決を無効とできないか。  思うに、判決による訴訟処理の安定性を図る必要があるので、当然無効はよほどのことがない限り認められない。形式的にも、確定判決の自己拘束力によって裁判所は自由に訂正できないともいえる。  したがって、判決は無効とはならない。これを取り消すには、上訴・再審の手続を踏まねばならない。

訴訟行為

【論点】訴訟行為  訴訟行為とは、裁判に向けて訴訟手続を展開させていく当事者・裁判所の行為である。  訴訟行為は訴訟進行のための行為であるから、訴訟手続との関係で評価され、訴訟法上の効果が認められるものである。すなわち、民法等私法上の規定を適用すべきものではなく、その有効・無効は手続固有の要請に基づく原則によって考えるべきである。

私法行為と訴訟行為の違い

【論点】私法行為と訴訟行為の違い  まず、訴訟行為のためには、行為能力ではなく訴訟能力が必要である。訴訟能力欠缺の効果は無効である点に特色がある。  また、訴訟手続は安定していなければならないから、原則私法上の意思表示の規定は適用されない。さらに、条件・期限付きの訴訟行為も許されない。

申立に対する相手方の態度

【論点】申立に対する相手方の態度 1、原告の主張に対して、被告が取りうる態度について説明する。  まず、相手方が証明責任を負う事実を否定することができる。これを否認と呼び、この場合、初めて当該事実の証拠調べが必要になる。  否認には二種類あり、直接に否定する場合である単純否認と、相手方の主張と両立しない別個の事実を主張する理由付否認がある。  なお、不知との主張は、否認と推定される(159条2項)。 2、これに対して、当該事実を認める陳述を自白と呼び(179条)、沈黙した場合は、擬制自白が成立することになる(159条1項)。  ただ、自白しても、自分が証明責任を負う事実を主張できる。これを抗弁と呼ぶ。  抗弁の内容は、相手方の主張する法律効果の発生の障害原因事実、あるいは消滅原因事実の主張である。  抗弁も二種類ある。通常の抗弁の他、相手方の主張を仮に認めた上で行う仮定的抗弁もある。 *制限付き自白→自白があっても、相手方が立証責任を負う別の事実を否定すれば、否認になる。一方、相手方が立証責任を負う事実をすべて自白した上で、抗弁を提出する場合もこれにあたる。

訴訟行為への意思主義の規定の適用の可否

【論点】訴訟行為への意思表示の規定の適用の可否 1、訴訟行為は、訴訟手続の1環をなし手続安定の要請が働く。訴訟行為は判決に向けて裁判所になされるものであるから、公的な陳述としての明確性が要求される。  このような要請から、訴訟行為については、独自の規制の必要性がある。具体的には、訴訟行為には外観主義、表示主義が強調され、意思表示の規定、特に錯誤など意思主義に立脚する規定は訴訟行為になじまない。  すなわち、原則として訴訟行為に意思表示の規定の適用はない。  当事者の保護は、撤回による救済、言い間違い・書き損じに対する補正の制度の運用によって図りうるから、問題はない。 二、ただ、上記の例外が認められる。 1、まず、刑事上罰せらるべき他人の行為を契機としてなされた訴訟行為は、再審事由に該当する(338条)重大な瑕疵があるといえる。とすれば、手続内でもこの無効を肯定してよい。このため民法上の規定を類推するのが妥当である。 2、また、不起訴の合意や、訴え取下げの合意など、訴訟開始前や、訴訟外での訴訟行為は、裁判所の面前においてその指揮下でなされるものではない。とすると、当事者に錯誤や詐欺などの事情がないことを裁判所が確認しているわけではないから、この有効性を無条件に維持するのは、不利益を受ける者の裁判を受ける権利を害する。  また、訴訟手続と直接の関連がないから、手続の安定を害しない。  したがって、上記のような訴訟行為には、意思表示の規定の類推適用が肯定できる。 3、同様に、その上に他の訴訟行為が重ねられることがなく、かつ意思表示の瑕疵を無視することが不利益を受ける者の権利を害する場合として訴えの取下げ、請求の放棄・認諾・和解がある。この際にも、意思表示の規定の類推適用が肯定すべきである。

明文にない訴訟契約

【論点】明文にない訴訟契約 1、例えば、不起訴の合意、訴えの取下げの合意、自白契約・証拠制限契約など、明文にない訴訟契約は認められるか。任意訴訟禁止の原則との関係で問題となる。  思うに、審理の方法・訴訟行為の方式・要件など訴訟に関する事項は、多数の事件公平に処理するため合目的的に定められているから、両当事者の合意で任意に変更することはできない。  しかし、処分権主義が妥当し、もともと当事者の意思に任されるべき事項がある。このような事項は、できる限り当事者の意思を尊重すべきであるし、しても問題はない。したがって、これについての合意はできる限り有効とすべきである。  とはいえ、十分結果の予見できない状況の下でなされる合意については、敗訴と異ならない効果を生じるおそれがある。すなわち、意思の自由を広く保障することが、権利保護の要請と矛盾するおそれは否めない。  以上から、合意の効果として訴訟上いかなる不利益を受けるかが明確に予測された場合に限り、訴訟契約の効力を認めるべきである。

訴訟における形成権の行使

【論点】訴訟における形成権の行使 1、訴訟上権利抗弁として形成権が行使されたとして、このような形成権行使の法的性質をどのように考えるべきか。  これを素直に見れば、実体法上の権利行使の意思表示と形成権の発生原因事実の陳述が併存しているとみることになる。この場合、前者には私法が適用され、後者には訴訟法の規定が適用されることになろう。  しかし、このように考えると、時機に遅れた攻撃防御方法として、抗弁の提出が却下された場合、実体法上は受働・自働両債権が消滅するのに、訴訟法上は、相殺の抗弁はなく、受働債権は消滅しないものと扱われる。そうなると、実体法上、自己の債権を訴求することができなくなる上に、既判力により、自己の債務も争えなくなる。 2、そこで、このような結論を避けるため、訴訟上における形成権の行使は、攻撃防禦方法としての意味を失ったときには失効させる条件付き行為とみるべきである。これは条件付きの相殺・訴訟行為を認めることになるが、これを認めても実質的な不都合はないから、問題はない。  とはいえ、当事者がいつも実体法上の効果発生を欲しないとは限らない。当事者が、これを欲するならば、原則通りその効果を認めて差し支えない。私法上の効果を肯定すべき例としては、建物買取請求権がある。  結局は意思解釈の問題として、場合により私法上の効果を肯定することになる。

当事者の申立権(17条、149条3項など)・異議権(90条)

【論点】当事者の申立権・異議権  申立権とは、裁判所に対して訴訟指揮権の発動を求める当事者の権利である。一方、責問権とは裁判所または相手方当事者の訴訟行為に訴訟手続に関する規定の違背がある場合に、異議を述べてその無効を主張しうる訴訟上の権能である。  責問権を正面から規定した規定はない。しかし、90条はその存在を前提とした規定であり、法は当事者に責問権は認めていると解される。  一方、手続が進行した後に責問権の行使され、当該手続が無効であるとすると、訴訟手続の不安定・訴訟経済は著しい。また、手続の無効についても、不利益を受ける当事者が甘受するなら、無効とする必要はない。  そこで、瑕疵について、瑕疵によって不利益を受ける者に故意・過失あって責問権を行使しなかった場合、責問権の喪失され、瑕疵が治癒される。これが90条である。

事実の収集・弁論主義

【論点】事実の収集〜弁論主義  弁論主義とは、裁判の基礎となる事実と証拠の収集・提出を当事者側の責任とする建前である。  民事訴訟の対象は私法上の権利であり、当事者が任意に処分しうるものである。とすれば、裁判による争訟処理においても、両当事者の自由に任せるべきである。またこのように解すれば、当事者が敗訴し、既判力に拘束されることを、自己責任として正当化できる。  これに対して、職権探知主義をとることは、裁判所の負担が増大する割に効果が上がらない。しかも、裁判所の中立に反する可能性もあり、妥当ではない。  以上が、弁論主義が採用された理由である。

弁論主義の内容

【論点】弁論主義の内容 1、まず、当事者のいずれかが主張して口頭弁論に現れない限り、ある事実を裁判の基礎とすることができない。  これは、当事者の方から見ると、ある事実が口頭弁論に現れない場合に、その事実を条件とする有利な効果が認められないという不利益として訴訟上で現れる。これを主張責任と呼ぶ。  ただ、弁論主義は裁判所と当事者の役割分担の概念である。したがって、いずれの当事者が主張した事実であっても、裁判所はこれを裁判の基礎とすることができる。これを主張共通の原則という。 2、次に、裁判所は、当事者間に争いのない事実はそのまま判決の基礎としなければならない(179条)。これは弁論主義が、自白の裁判所拘束力として現れるものである。 3、さらに、裁判所は原則として当事者の提出した証拠によらなければ、事実を認定してはならない。つまり、職権証拠調べの禁止として、弁論主義は現れることになる。  ただし、裁判所はいずれの当事者が提出した証拠によって事実を認定してもかまわない。これを証拠共通の原則と呼ぶ。

弁論主義の機能

【論点】弁論主義の機能  まず、争訟内容を自主的形成させることで、裁判所の中立を確保することができる。ひいては、公正な裁判であるとの信頼確保につながることになる。  また、自主性を尊重は、反面において、自己責任として敗訴など一方当事者に不利益を負わせることを正当化する根拠になる。しかも、当事者は事件の真相の究明に勤勉であると思われる。したがって、真実発見機能にも資する。  しかも、口頭弁論に提出されない訴訟資料は判決の基礎とならない。このことから、不意打ち防止・手続保障機能を営むことになる。

弁論主義と処分権主義の関係

【論点】弁論主義と処分権主義の関係  弁論主義と処分権主義との関係はどのように考えるべきか。  いずれも、実体法上当事者に私的自治が認められることが訴訟上に反映したものということができる。  しかし、処分権主義は、審理の開始・対象決定・終了に関する問題であり、いわば、手続に対して外在的な建前であるといえる。一方で、弁論主義は、訴訟資料の提出という訴訟手続内の行為について、当事者の自主性を認める建前であるといえる。

弁論主義の適用される事実と範囲

【論点】弁論主義の適用される事実と範囲  弁論主義の適用される事実についていかに解するべきか。  思うに、弁論主義がとられる趣旨は、訴訟資料の提出を当事者に任せることで、判決など訴訟追行の結果を予測させることにある。  とすると、弁論主義の適用範囲としては、訴訟追行・運営の目標の明確性が確保できる範囲で認めればよい。逆にこの範囲をあまりに広く解すると、裁判所の事実認定における自由心証が害されるおそれがある。  ここに訴訟の帰趨を左右する事実は、法律の要件事実にあたる主要事実である。  したがって、原則として、実体法規の要件事実に該当する主要事実と考えるべきである。 *なお、公益性が高度でなく、本案の審理と密接な関係のある訴訟要件(=訴えの利益、当事者適格)には、弁論主義が適用される。本案審理に密接に関連ある以上、そのように解することが上記弁論主義の趣旨に沿うからである。

抽象的な要件事実と主要事実

【論点】抽象的な要件事実と主要事実  本問当事者はわき見運転に攻撃防禦を尽くしている。にもかかわらず、裁判所が酒酔い運転があることから過失を認定することは、弁論主義との関係で問題はないか。  弁論主義の適用範囲は、訴訟追行・運営の目標を明確にするため、原則として主要事実に限定される。  ここで、不法行為における過失は主要事実であり、過失を構成するわき見運転・酒酔い運転は間接事実である。とすれば、裁判所による上記認定は適法であるかにみえる。  しかし、このような結論を認めるならば、当事者に不意打ちとなる結果となり、弁論主義を採用した趣旨に反する。  思うに、抽象的な要件事実の存否について、個別事実をめぐる法的評価が必要な場合は、当該事実に弁論主義を適用すべきでない。その存否の判断は当事者が正確に判断できるものではないから弁論主義の適用になじまない。  一方、実際上も、その前提となる「酒酔い運転」「わき見運転」のような間接事実にこそ争点が集中する。とすれば、当事者への不意打ちを避けるためかかる具体的事実に準主要事実として、弁論主義の原則が適用されるとみるべきである。

事実の来歴・経過

【論点】事実の来歴・経過  本件所有権の確認訴訟において、Cは「Aから売買を受けた」と主張し、被告もそれ以外の事実を主張していない。とすると、裁判所が「Aから売買を受けたBからCが贈与を受けた」と認定することは弁論主義との関係で違法ではないか、検討する。  弁論主義の適用範囲は、訴訟追行・運営の目標を明確にするため、原則として主要事実に限定される。ここに、所有権の確認訴訟における主要事実が何か明らかでない。  思うに、来歴の内容、特に移転事実は所有権の帰属という新たな法律効果の発生に関わる。とすれば、所有権取得の経過・来歴を主要事実として扱うべきである。  以上から売買を受けたのか、贈与を受けたのかという来歴・経過には弁論主義の適用がある。したがって、裁判所が当事者が主張していない贈与の事実を認定することはできない。

弁論主義の補充・修正

【論点】弁論主義の補充・修正 1、釈明権(釈明義務)(149条)とは、当事者の申立や陳述に、矛盾や不明瞭な点がある場合に、事実上・法律上の事項について質問し、又は証拠の提出を促して、事案の解明を図る裁判所の権限ないし義務である。  弁論主義は両当事者の訴訟追行上の攻撃防禦の能力が十分なものであり、かつ対等であることを前提としている。しかし、現実には、当事者間には能力差があり、常に両当事者に十分な訴訟追行能力を期待することはできない。にもかかわらず、事実の主張について当事者の自己責任として全く放置するならば、不公平な結果が招かれることを避けられず、当事者及び国民の信頼を喪失することになりかねない。  ここで、当事者間の公平・審理の充実を図るため、裁判所による釈明権行使の必要があるといえる。  なお、以上は弁論主義の補完原理としての釈明権の意義であるが、釈明権は、請求の趣旨の内容について釈明が促された場合、処分権主義の補完原理としても働くことになる。 二、1、釈明権の行使は、裁判所から当事者又は代理人に対する発問・立証を促す形でなされる。一方当事者は裁判長を通じて発問してもらうことができる。  この場合、釈明された当事者は釈明に応じる義務はないが、心証形成の過程などで不利益を被る可能性がある。例えば発言が不明瞭ならば、それを判断の基礎に入れることができないから、その発言によって得られるべき利益が得られないことになる。 2、かような釈明権の行使にも問題がある。これが過剰行使された場合、かえって公平な裁判であるとの信頼が失われるし、事案の真相を曲げるおそれもある。そこで、釈明権を行使しうる範囲が問題となる。  まず、消極的釈明については、全面的に許容されるべきである。これは、自己責任原理の消極面を補充・回復するという趣旨に添うからである。  一方で、積極的釈明における過度の釈明には、まさに前述の危険性がある。したがって、その行使の範囲は制限されねばならないと解する。  とはいえ、違法な釈明に応じた当事者の訴訟行為を無効となしえない。釈明に応じて訴訟行為をなした当事者の信頼を害するからである。 3、1、一方、釈明権は裁判所の義務としての釈明義務としての面を有する。釈明義務違反によって下された判決は上訴によって取り消される(312条3項)。  この釈明義務の範囲であるが、釈明権の不行使は常に義務違反を構成するわけではない。その意味で、釈明権の行使の範囲は釈明義務が発生する範囲よりも広いことになる。 四、1、釈明権及び義務は口頭弁論におけるものであるが、口頭弁論の準備・補充として訴訟関係の解明のために裁判所は処分をなせる(151条1項)。この処分を釈明処分と呼ぶ。 2、また、裁判資料の提出に対して、法規の解釈・適用は裁判所の責務である。しかも、釈明権は、事実の提出面において後見的作用が期待されるものであるから、法規の解釈・適用に釈明の問題は生じないと考えるのが原則である。  しかし、当事者が法的観点に基づきある法規の適用を前提として争い、裁判所が別の法律構成による判断をする場合がありうる。かかる場合に上記前提を維持するならば、当事者にとって不意打ちになる可能性があるからである。  そこで、法的構成・法的観点を示して、当事者の攻撃防禦の機会を保障し、審理を充実させる裁判所の責務を認めるべきである。これを法的観点指摘義務という。 *証拠能力と証拠力(証拠価値)  証拠能力とはある有形物が証拠方法として取り調べの対象とされ得る資格である。  証拠力は、要証事実の認定にどれくらい役立つかの問題である。その判断は裁判官の自由に任される(247条)。

経験則は要証事項か

【論点】経験則は要証事実か 1、1、経験則とは、経験から得られた事物の性状や因果関係に関する法則である。事実の判断の前提となるから、事実認定に当たって用いられる。かかる経験則自体は要証事実か否かが問題となる。 2、まず、一般常識に属する経験則については、証拠による認定は不要である。  また、専門的知識に属する経験則でも、法規に関する専門的知識は不要証である。法規の解釈・適用は裁判所の職責だからである。もっとも、外国法、地方の条例などで裁判所が知らないものは証明の対象となる。  これらに対して、特殊な専門的知識に関する経験則の真偽は一般人にとって不明である。このことから、これを不要証とすれば、裁判の信頼が維持できなくなる。仮に、たまたまその裁判官が知っているとしても、これは裁判官の私知に過ぎないし、鑑定人と裁判官は同一人であってもならない。  以上から、特殊な専門的知識に関する経験則は厳格な証明の対象というべきである。

不要証の事実

【論点】不要証の事実 1、不要証事実として、まず、顕著な事実、公知の事実があげられる。  公知の事実とは、通常の知識経験を有する一般人が疑わぬ程度に知れ渡っている事実である。  また、職務上顕著な事実も不要証である。これは、判例など裁判官がその職務を行うにあたって知った事実である。 2、さらに、裁判上の自白が成立した場合、当該事実は不要証となる(179条)。争いがない以上、これを証明する実益がないからである。  ここに、裁判上の自白とは、期日における相手方の主張と1致する自己に不利益な事実の陳述である。自己の主張が先行する場合を特に先行自白と呼ぶが、自白の効果において相手方と自己との主張の先後は問わない。 3、(1)かかる自白の効果として、裁判所は自白内容をそのまま判決の基礎としなければならない。これは弁論主義の帰結である。 (2)一方、自白をした当事者は自白に反する事実を主張できない。相手方に与えた訴訟上の有力な地位を任意に奪うわけにはいかないからである。すなわち、その法的根拠は禁反言ということになる。  ただし、例外的にこれを撤回できる場合がある。1つは、相手方の同意がある場合である。もう1つは、自白内容が真実に反し、かつ錯誤に基づく場合も撤回できると解する。この際、反真実の証明があれば錯誤が推定されるとして、両当事者間の公平を図るべきである。

自白の対象

【論点】自白の対象  自白の対象は、事実であり、いかなる事実についての自白も不要証となる。そのため、自白をした当事者は、相手方の有利な地位を任意に奪うわけにはいかないから、自白の撤回が制限される範囲にも制限はない。  ただし、自白の裁判所拘束力は別異に解することになる。  かかる効力の根拠は、弁論主義に求めることができる。ここに、弁論主義は訴訟物に直結する事実である主要事実に妥当する。とすれば、裁判所拘束力が発生する範囲も主要事実について成立した自白に限定されると解する。

公知の事実に反する事実の自白

【論点】公知の事実に反する事実の自白  公知の事実に反する事実について自白が成立した場合、裁判所はこれに拘束されるか。  この点、弁論主義の適用がありさえすれば、たとえ公知の事実に反する事実でも、裁判所拘束力は発生するかに見える。  しかし、民事訴訟制度は国家が関与する公的制度である。にもかかわらず、裁判所が公知の事実に反する事実認定を行わざるを得ないとすれば、国民の信頼を失う。かようにしてまで当事者主義を徹底することはできない。  したがって、公知の事実に反するまでの自白の拘束力は認められないというべきである。 *当事者主義→当事者意思を尊重する建前。処分権主義、弁論主義などがその中に含まれる

間接事実の自白

【論点】間接事実の自白  間接事実とは、主要事実を推認させる事実である。これについても自白が成立すれば1応不要証となる。また、自白がある場合は証拠によらないでその事実を認定してよいと解する。当事者に争いない以上、それ以上判断する必要がないからである。  また、当事者への拘束力は認められる。自らの行動に反する態度を認める必要がないからである。  では、かかる間接事実の自白に裁判所への拘束力が認められるか。  間接事実は主要事実の証明手段として証拠と同等の機能を営む。にもかかわらず、裁判所への拘束力を認めるならば、自由心証主義を害するおそれがある。  したがって、かかる事実の自白には裁判所拘束力は認められない。 *補助事実 証拠の信用性に関する事実。自白については間接事実と同様に考えられる。

権利自白の拘束力

【論点】権利自白の拘束力  権利自白とは、請求の当否の判断の前提をなす先決的な権利・法律関係についての自白である。これについては1応不要証になるし、当事者による任意の撤回も認められない。では、権利自白について裁判所拘束力が認められるか。  しかし、法律問題は裁判所の職責である。また、私人の法的判断には誤解が伴いやすい。  したがって、裁判所の事実認定権は排除されないし、当事者もいつでも撤回できると解する。  もっとも、日常的な法律概念を用いている場合については、具体的な事実の陳述というべきである。したがって、このような場合は、事実の陳述として、通常通り当事者・裁判所を拘束すると考える。

不確定事実(抽象的要件事実)と自白

【論点】不確定事実(抽象的事実)と自白  「過失」「公序良俗」の有無など、不確定事実についての自白はどのように取り扱われるべきか。  思うに、不確定事実の有無の判断は法的評価である。この判断は裁判所の専権であり、当事者による判断になじまない。したがって、権利自白と同様に考えるべきである。

擬制自白

【論点】擬制自白  擬制自白(159条1項)とは、相手方の主張する事実を明らかに争わない場合、自白したものと看做されることをいう。当事者に争う意思がないとみうるからである。  成立の条件として、公示送達による呼び出しの場合は擬制自白は成立しない(159条1項但書)。  明らかに争わなかったか否かは、事実審の口頭弁論終結時点に、それまでの当事者の口頭弁論を1体として観察して判断される。そして、弁論の全趣旨から見て争ったと認められる場合には擬制自白は成立しない(247条)。  効果として、裁判所の判断を拘束するが、当事者への拘束力はないというべきである。

自由心証主義と心証形成

【論点】自由心証主義と心証形成 1、1、自由心証主義とは、裁判官は事実認定の際、論理法則と経験則に基づく自由な判断によって心証形成できるとする原則である(247条)。  証言の内容・生活関係の複雑・多様化の状況からして、機械的に事実を認定する法定証拠主義では対応できない。それよりも、専門家として裁判官が自由に判断した方が適正な事実認定が期待できる。ここに自由心証主義が採用された理由がある。 2、その内容は、証拠方法の無制限と証拠力の自由評価からなる。  前者は弁論の全趣旨を斟酌して、口頭弁論に現れた1切の資料・状況が心証形成の材料たりうることを指す。後者は論理法則と経験則によって裁判官が自由に証拠力を判断してよいことを内容とする。  これに関連して、損害額を立証することが極めて難しい場合、弁論の全趣旨・証拠調べの結果に基づき証明度を低減させて自由な心証で損害額を認定できるとされている(248条)。 3、ただし、自由心証主義にも限界がある。  例えば、証拠方法について手形訴訟では書証に限定される(352条)。さらに違法収集証拠の問題もある。

証拠

違法収集証拠の証拠能力

【論点】違法収集証拠  本件日記は盗写されたものであるし、テープは盗聴によるものである。このように違法に収集された証拠の証拠能力を認めうるか。  これに証拠能力を無条件に認めるならば、相手方当事者について不当な権利侵害を招くおそれがある。しかし、証拠能力を全く否定して、当事者の訴訟活動の自由を抑圧すべきでもない。  そこで、原則として違法収集証拠の証拠能力は肯定すべきである。ただし、人格権を侵害し、反社会的な手段で収集された証拠方法については、その証拠能力を否定すべきであると解する。

表見証明

【論点】表見証明  表見証明とは、間接事実の存在が経験則上相当の蓋然性をもって主要事実の存在を示していると思われる場合、特段の事情がないかぎり証明されたとすることをいう。  不法行為の事件において表見証明の手法を用いると、被害者は具体的に過失・因果関係を証明する必要がなくなり、被害者保護、及び当事者間の実質的公平の実現に資する。

証明責任

【論点】証明責任 1、証明責任とは、ある事実が真偽不明の場合に、判決において、その事実を要件とする自己に有利な法律効果の発生または不発生が認められないことになる一方当事者の不利益をいう。 2、本来、事実の存否が裁判所によって不明である場合、法的効果の発生・原告の主張の理由の有無は判断できないはずである。しかし、ある事実が真偽不明であるとしても裁判所には裁判の回避は許されない。  そこで、真偽不明の場合、事実はないものとし、そのことから発生する不利益を一方当事者に負担させて、裁判を可能にする必要がある。これが証明責任の趣旨である。 3、証明責任は訴訟の帰趨を左右するものであるので、当事者の訴訟追行の指標、及び裁判所の訴訟運営の指標の役割も果たす。そのため本証と反証の配分は客観的に定められなければならない。

証明責任の配分

【論点】証明責任の配分 1、1、証明責任の配分をいかにしてなすべきか。明文なく問題となる。  思うに、立法者は両当事者の公平・訴訟の迅速な処理に資するように、証明責任の配分問題を考慮に入れて立法している。また、証明責任は当事者の訴訟追行の指標、裁判所の訴訟運営の指標の役割を果たすので、基準としての明確性を図る必要がある。  したがって、実体法の規定を基準にこれを定めるのが妥当である。すなわち、一定の法律効果を主張する者は、その効果の発生を基礎づける適用法条の要件事実につき証明責任を負うと解する。  すなわち、@法律効果を主張する当事者は、法律効果の発生を規定する「権利根拠規定」の要件事実に付き証明責任を負う。また、A法律効果の発生を争う者は、法律効果の発生につき障害事由を規定する「権利障害規定」の要件事実につき証明責任を負う。そして、B法律効果の消滅を主張する者は、消滅を規定する「権利滅却規定」の要件事実につき証明責任を負う。  一方で、但書は本文における法律効果の発生を争う者に証明責任がある。さらに、明文を欠く場合や明文にない要件については、法律効果の発生を基礎づけるか、発生障害を基礎づけるかによって証明責任が決まることになる。

証明の負担の軽減・立証困難緩和の法技術

【論点】証明の負担の軽減・立証困難緩和の法技術 1、証明責任の転換  証明責任の転換とは、明文で相手方当事者に反対事実についての証明責任を負担させることである。例としては、使用者責任(民法715条)がある。 2、法律上の推定  法律上の推定とは、証明困難な乙事実の代わりに、証明の容易な甲事実を証明すれば、法律上乙事実を要件事実とする法律効果が認められるとすることである。すなわち、ある証明の容易な事実の証明を条件として、証明責任を転換するわけである。1のように無条件で証明責任を転換するのではなく、特定の事実の証明が条件になっている。  同様の法技術で、ある事実を証明することで権利の存在が推定される場合を権利推定と呼ぶ。 3、暫定真実  暫定真実とは、無条件に一定の事実を推定することで、ある規定の要件事実の証明責任を相手方に転換する法技術である。占有者の所有意思・善意・平穏・公然などが推定されることがこれに当たる。(民法186条)  かかる規定が適用され、証明責任が転換されるには、2と異なり、何の証明もいらない。結局、証明責任の転換と同一の機能を営むことになる。 4、意思推定  意思推定とは、ある法規が意思表示の内容を推定する法律行為の解釈規定である場合、その適用を争う当事者に証明責任が負わされるというものである。  具体例は期限の利益についての民法136条1項である。

証拠の偏在と実質的平等

【論点】証拠の偏在と実質的平等 1、現代型訴訟(公害訴訟・製造物責任・医療過誤・自衛隊事故)では重要な証拠が相手方にあることが通常である。  このような場合に法律要件分類説によって証明責任の配分をすれば、当事者間において、不平等な結果を生むことになる。そこで、かかる当事者間の公平をはかるため、二つの方法がある。  1つは、法律要件分類説による証明責任の配分を実質的に変更することである。もう1つは、証拠開示的処理によるものである。

間接反証

【論点】間接反証  ある主要事実につき証明責任を負う当事者が、その事実を推認させるにたる間接事実Aの存在を証明することで、事実上要件事実の存在を推定させるに至ることがある(表見証明)。ここで、相手方が、間接事実Aと両立しうる別の事実Bの存在を立証することによって、主要事実につき裁判官が存在するとの心証を形成するのを妨げるための証明活動を間接反証という。  別の事実の存在を証明する点では本証であるが、主要事実についての心証形成を妨げる点では反証といえる。  この概念は、法律要件分類説を前提として、間接事実についての証明の負担を両当事者のいずれかに分配し、結果として証明責任の制度の公平な運用を図るために有用である。

文書提出命令

【論点】文書提出命令 1、文書提出命令の手続としては、申立は必要事項を示した上で書面によらなければならない(221条1項)。これに対応し、裁判所は必要があると認める場合、文書提出命令を下す。この場合、一部提出命令も出せる(223条1項後段)。  この制度に付随し、実効性を高める制度として、文書特定手続がある(222条1項)。これは、文書提出命令の申立において、文書の表示・趣旨を明らかにすることが「著しく困難な場合」のため、文書の特定に必要な情報を開示させる制度である。 2、提出命令に反した文書不提出の効果としては、記載内容について裁判所は真実と認めることができる(224条)。また、内容について具体的な主張をすることが著しく困難な場合は、その事実に関する申立人の主張を真実と認めることができる。(224条3項)

文書提出義務(220条)

【論点】文書提出義務(220条) 1、220条各号は、文書提出義務が発生する場合を規定している。各号の解釈は、証拠の偏在現象の下、当事者間の実質的公平を図るため、柔軟になすべきである。 2、1号では、訴訟で引用された文書について提出義務が発生するとしている。裁判所の印象を一方的に形成させる危険を避けるためである。  1号の解釈として、文書自体を証拠として引用した場合のみならず、文書の存在を引用した場合も含めるべきである。  また、2号では引渡・閲覧請求権があるときが規定されている。当事者に権利があれば、相手方に提出義務は当然認められるからである。2号の解釈として、「権利」とは、実体法上明確に認められていることを要しないというべきである。  さらに、3号では、挙証者の利益のために作られた場合、及び法律関係について作られたものである時があげられている。  本号もまた、証拠開示のために、拡大解釈して考えるべきである。すなわち、「利益」とは、申立人のために作成された文書に限らないで、申立人のために客観的に利益になればよいというべきである。一方、法律関係文書については、法律関係自体を記したものに限らず、法律関係生成の過程法律関係と関係のある事項を記載した文書も含めるべきである。 3、なお、新法では220条4号では、文書提出義務が本条所定の例外を除いて一般的義務とされることとなった。

証拠調べ手続についての民訴法の態度

【論点】証拠調べ手続についての民訴法の態度  民事訴訟法は、証拠調べ手続について証拠結合主義を採っている。証拠結合主義とは訴訟手続の進行中に、必要に応じて証拠調べをすることができる建前をいう。  しかし証拠結合主義をそのまま取る限り、併行審理を招き、審理の充実と促進が妨げられる可能性がある。  そこで、争点整理手続の段階で、できる限り争点と証拠を出し尽くさせ、証拠調べは整理終了後の口頭弁論期日に集中して行わねばならないとされた。集中証拠調べが義務化である(182条)。これによって、集中・継続審理の実現による審理の充実・促進を実現させようとしたものである。

訴訟の終了

訴えの取り下げとその要件

【論点】訴えの取下げとその要件  訴えの取下げ(261条)とは、訴えによる審判申立の撤回をする旨の意思表示である。処分権主義の現れである。事の性質上、原告しかなしえない。  訴えの取下げは、判決確定まで原則として自由にすることができる。  ただし、被告が準備書面の提出・準備手続での申述等、本案につき争う姿勢を示した以後、取下げには被告の同意が必要である(262条2項)。審理がなされれば、請求棄却判決がなされる可能性がある以上、これを得るという被告の既得の地位を保護するためである。

訴えの取り下げの効果

【論点】訴えの取下げの効果 1、訴えの取下げの効果として、訴訟係属の効果が遡及的に消滅し、訴訟は終了する(262条1項)。  これについて、訴訟手続の安定のため、撤回は許されない。ただし、例えば、取下げが錯誤によってなされた場合など一定の事由ある場合、原告の保護のため、無効・取消は認めるべきである。 2、本案につき終局判決がなされた後(も、判決確定までは訴えの取り下げができる。ここで)訴えを取下げた原告は、その後に同一の訴えにつき別訴を提起できない(262条2項)  その趣旨は、判決に至るまでの裁判所の努力を徒労に帰せしめたことに対する制裁である。  問題は、かような再訴禁止効が発生する範囲である。  原則として、前訴と後訴の間の訴訟物が同じであれば同一の訴えといえ、再訴禁止効が働く。ただし、後訴の訴え提起時に、原告側に再訴を正当ならしめる利益がある場合は、再訴禁止効に触れないと解する。これは再訴の禁止の趣旨に反しないからである。  そのような例として、被告が原告を騙して訴えを取下げさせた場合が挙げられる。

放棄・容認の既判力の有無

【論点】放棄・認諾の既判力の有無  既判力がある訴訟終了原因については、再審事由ない限り無効・取消は認められない。そこで、放棄・認諾に既判力があるかが問題となる。  放棄・認諾調書の記載については、確定判決と同一の効力が認められる(267条)。このことから、放棄・認諾に既判力があると解することもできそうである。  思うに、放棄・認諾の意思表示に至る過程において、裁判所が常に関与・調査して、錯誤・強迫のないことを確認しているわけではない。にもかかわらず既判力を発生させれば、瑕疵ある意思表示をした者の権利保護の要請に反する。放棄・認諾は、当事者の意思に基づくものであるから、このような根拠がない場合に拘束力を認めることはできない。  したがって、放棄・認諾に既判力は認められないと解するべきである。  そして、要件を欠く場合や意思の瑕疵がある場合、これをいかにして争うべきかの方法が明らかでないので、検討する。  思うに、争いの対象は放棄・認諾自体の無効である。これは、全く別個の新たな紛争が生じているわけではなく、訴訟終了の効果自体を争っているといえる。また、旧訴の裁判資料や手続を利用できた方が訴訟経済に資するからそのような結論を採るべきである。  したがって、当該当事者は無効・取消を主張し、旧訴再開の可否の審理についての開始を申し立てるべきである。ここで無効・取消し事由があれば、旧訴の手続が続行されることになる。 *【論点】訴訟上の和解に既判力が認められるか、【論点】和解に無効・取消原因がある場合の争う方法も同様に論ずることができる。

訴訟上の和解に既判力が認められるか

訴訟上の和解

【論点】訴訟上の和解  訴訟上の和解とは訴訟係属中に、両当事者が訴訟物をめぐる主張につき、相互に譲歩することによって訴訟を全部または一部終了させる旨の期日における合意のことである。  解成立を強力に促進するための制度として、和解条項案受諾書面制度(264条)、和解条項告知制度(265条)が設けられている。前者は遠隔地の当事者が裁判所の和解条項案を書面で受諾した場合、本当事者は口頭弁論期日に出頭しなくてよいとするものである。後者は和解の申出をまって、裁判所が和解条項作成し、それが双方当事者に告知された場合に和解が成立するというものである。  思うに、旧訴の裁判資料や手続を利用できた方が訴訟経済に資する。また、和解が無効だとすれば、訴訟は終了していないと言える。  したがって、和解に無効・取消原因ある場合、期日指定申立によるべきであると解する。

和解が解除された場合

【論点】和解が解除された場合  裁判上の和解の内容に不履行があった場合、解除を主張する当事者はこれをいかにして争うべきか。  思うに、契約の解除は和解成立後の新たな事由に基づく権利変動であり、旧訴と別個の争いというべきである。  したがって、この場合は、新訴提起によって争うべきである。解除請求の審理が開始されても、旧訴が復活するわけではないと解する。

瑕疵ある判決と判決の無効

【論点】瑕疵ある判決と判決の無効  裁判官によって言い渡された判決について、たとえ違法な事由があっても、当然の無効は認められないのが原則である。これは、後日の無効主張によって法的安定性が揺るがされることを防ぐ必要があるからである。自己拘束力により、裁判所も自由に判決は変更できないともいえる。  以上から、例外的に無効とされる判決は死者に対する判決、当事者適格欠く者になされた対世効ある判決等に限られるべきである。  したがって、判決の取消は、原則として上訴、再審の訴えによることになる。  cf.不成立の判決 言渡しがない、裁判官でない者が言い渡した場合→判決自体が存在しない場合

確定判決の不当取得

【論点】確定判決の不当取得  故意に相手方当事者や裁判所を欺いて確定判決を取得することを確定判決の不正取得という。その例として、まず、被告の居所不明と偽って訴状等の公示送達を申し立て、被告の手続関与の機会を奪って勝訴判決を得た場合がある。また、刑事上罰すべき他人の行為による自白、証拠の偽造・変造の結果得られた判決も不当取得されたものというべきである。  このように、不正取得された判決の是正の方法については、再審の訴え・上訴の追完によるべきであると解する。法的安定要求が強調されるべきだからである。

既判力

【論点】既判力 1、確定した終局判決の判断内容は、後訴で当事者、及び後訴裁判所を規律する基準となる。かかる基準としての役割を果たすには、当事者が同一事項につき判断内容に矛盾する主張は排斥すべきだし、後訴裁判所は前訴判決内容に反する判断もできないとしなければならない。  このように確定判決に認められる後訴での通用力を既判力とよぶ。 *既判力の作用としては、消極的作用と積極的作用がある。  消極的作用とは、当事者は既判力の生じた判断を争うことは許されず、後訴裁判所はこれを争う当事者の主張を排斥しなければならないという作用である。  一方、積極的作用とは、裁判所は既判力で確定された判断に拘束され、これを前提として後訴の審判をしなければならないとする作用である。  既判力に反する判決は、上訴・再審によって取り消される(312条3項、338条1項10号)。ただし、取消されるまではその判決自身が既判力を有すると解する。

既判力の根拠

【論点】既判力の根拠  既判力発生の根拠は次の二点に求められる。  民事訴訟は公権的判断によって終局的に紛争を解決することを目的とする。このような目的を達するには、判決には法的安定性・不可争性が与えられなければならない。また、審理において手続保障要求が充足されたならば、既判力による拘束は、当事者の自己責任として正当化される。

既判力の客観的範囲

【論点】既判力の客観的範囲  既判力の客観的範囲とは、判決でなされた判断のどの部分につき既判力を生じるのかの問題である。  これについては、「判決主文に包含する判断」に限り生じるのが原則である(114条1項)。  具体的には、@基準時における権利・法律関係についての判断に既判力は生じる。また、A判断とは、原則として訴訟物たる権利・法律関係の存否についての判断に限られるというべきである。

時的限界

【論点】時的限界  権利関係は、訴訟中も時の経過とともに発生・変更・消滅など変化をきたす。したがって、判決で確定されるのは、ある時点における権利関係のみである。これを基準時という。  この権利関係があるか否かは、裁判資料として提出される事実により判断されるが、当事者は事実審の最終口頭弁論終結の時点まで事実を提出できる。とすれば、最終口頭弁論終結時における権利関係が判決主文で判断されることになる。  以上から、既判力の基準時は事実審の口頭弁論終結時に求めることになる。

既判力の遮断効

【論点】既判力の遮断効  当事者は基準時における権利関係に矛盾する主張はできない。そのため、例えば前訴の訴訟物に関する無効・弁済・免除等の事実など、基準時以前に既に存在していた事由を後訴で提出して争うことはできないのが原則である。かかる主張は、基準時における判決による判断に矛盾する以上、既判力に遮断されるからである。  例外は、前訴で提出して争っておかねばならなかったといえない事実である。この場合、既判力の正当化根拠である手続保障が与えられたとはいえないからである。かように解した方が当事者の権利保護に資する。  それに対して、基準時後に成立した事由は、後訴に提出できるのが原則である。これについては基準時における権利関係の存否に関する判断に矛盾しないのが通常であるし、前訴で提出すること自体が要求できないからである。

形成権の基準時後行使と遮断効

【論点】形成権の基準時後行使と遮断効 1、基準時前に形成権が成立していた場合、前訴で形成権を行使して、変動の結果を主張しておくべきであったと評価できるのが原則である。  よって、この場合形成権の行使は遮断される、許されないことが原則である。ただ、前訴において提出し、争っておかねばならなかったといえない事由はこの限りでない。  この点、取消権は前訴で十分提出することが期待できる抗弁である。また、より重大な瑕疵である無効事由が遮断される。このこととの均衡からもも取消権の行使は既判力に遮断されると解する。  なお、解除権も同様に扱うべきである。 2、一方で、相殺の抗弁は遮断されるか。  相殺は自己の出捐を伴うので、最後の手段としての性質があるから、これを前訴に提出し、争っておくべきだとはいえない。  また、自動債権は訴訟物たる受働債権とは全く別個の債権であるから、前訴判決の効力が自働債権に及ばない。ここで相殺を許さなければ、自働債権の回収と、受動債権の回収の掛け合いになり、不経済である。  以上から、相殺の抗弁は既判力によって遮断されないと解する。  建物買取請求権も既判力に遮断されない。最後の手段であるし、政策的に賃借権とは別個に認められた権利であるという点で相殺の抗弁と同様に見ることができるからである。 3、手形の白地補充権は既判力によって遮断されるか。  白地補充権が遮断されるとなると訴訟敗訴の理由が白地手形であることである場合、訴求の途が封じられるかにみえる。しかし、白地補充を怠るという自らの事情により、訴訟上不利益を被るのは、取消権などでも同様である。  思うに、権利者による白地補充は容易になし得ることであるし、上訴の機会も保障されているといえる。前訴で提出する機会は十分に与えられているといえる。  したがって、白地補充権は既判力によって遮断されると解する。

理由中の判断に既判力は及ぶか

【論点】理由中の判断に既判力は及ぶか  既判力は主文の記載についてのみ生じるのが原則である(114条1項)。  主文の記載に既判力を認めれば紛争の処理手続として十分であし、訴訟物とされた権利関係に当事者は攻撃防禦を集中するから、既判力を認めても不意打ちとならない。理由中の判断に既判力が生じないとすれば、処理の論理的順序などに拘束されずに審理を進めることができ、審理の簡易化・弾力化にも役立つ。  以上のような理由から、条文通り、理由中の判断には既判力が生じないと解する。  ただし、例外として、相殺の抗弁(114条2項)がある。この場合は判決理由中の反対債権の存否にも既判力が及ぶ。その根拠は、訴求債権の存否の争いが、反対債権を訴訟物とする後訴で蒸し返される結果を防ぐ点にある。

相殺の抗弁に及ぶ既判力の範囲

【論点】相殺の抗弁に及ぶ既判力の範囲  本件訴訟では、相殺の抗弁を認められ、その限度で原告の請求を棄却されている。既判力は主文及び、相殺の抗弁についてのみ理由中の判断に及ぶ。しかし、理由中の判断のうち、いかなる範囲に既判力が及ぶ解するべきか。  この点、理由中の判断のうち、両債権の存在と相殺による消滅につき既判力を認めるという見解がある。反対債権が当初から存在しなかった、もしくは原告の債権は相殺以外の別の理由で不存在だったという理由で、当事者が紛争を蒸し返すおそれがあることを理由にする。  しかし、前者は主文における訴求債権の不存在、後者は反対債権の不存在という理由中の判断で排斥できる。上記のような紛争の蒸し返しのおそれはない。  思うに、既判力による拘束力が広く及べば、後訴における当事者の訴訟行為の自由が拘束され、審理の弾力性も失われる。とすれば、その範囲は目的が達成できる限度においてのみ認めるべきである。  したがって、理由中の判断に既判力が及ぶ範囲は、反対債権の不存在についてのみであるというべきである。

争点効

【論点】争点効 1、A建物の占有者甲は乙からの所有権に基づく明渡請求を賃借権の存在を理由に拒みながら、乙からの賃料請求においては一転して賃貸借契約の不存在を主張している。かかる乙の主張は、前訴における主張と矛盾するものとして、認められないのではないか。  既判力が及ぶ範囲は主文の範囲に限定される。しかし、前訴における賃借権の存在は理由中の判断に過ぎないから、かかる建前を維持する限り、乙の主張は認められることになりそうである。 2、かかる結論は不当であるとして、争点効によって乙の主張を封じるとの見解がある。  争点効とは、前訴で当事者が主要な争点として争い、かつ、裁判所がこれを審理して下したその判断について生じる通用力である。同一の争点を主要な先決問題とした別異の後訴請求の審理において、その判断に反する主張・立証を許さず、これと矛盾する判断を禁止する効力である。  しかし、かような効力が発生するとの明文はない。訴訟法上このような効力の発生は認められるか。  思うに、いかなる場合にこのような効力を認めるのか、基準が不明確である。しかも、このような効力の発生をきらい、裁判資料選択の自由が喪失され、手続が硬直化するおそれがある。既判力は後訴における当事者の訴訟行為の自由度を奪う効果を持つので、その範囲は必要最小限度に留めるべきである。  とすれば、かような既判力類似の効力を明文もなく認めることは避けるべきである。以上から、本論点は消極的に解するべきである。 3、ただし、上記効力を認めねば不都合が生ずる場合、信義則によって個別に既判力と同様な拘束力を認めるべきである。信義則が適用すべきか否かは、実質的に前訴の蒸し返しであるか、前訴で争うことができたか、長期間の経過などの事情を持って判断することになる。  本件乙の態度は前訴と矛盾するものであり、禁反言に触れる。したがって、乙の賃貸借契約の不存在の主張は認められないと解する。

既判力の主観的範囲

【論点】既判力の主観的範囲 1、既判力の主観的範囲については、原則として、当事者相互間にだけ作用する。既判力を正当化するため、この者らが対等に手続上の地位を保障されて訴訟を追行する機会が十分与えられたことも必要である。  しかし、多数の関係人の間の権利・法律関係については、実体関係に即した矛盾のない統一的な紛争処理をすることが望ましい。したがって、既判力を第三者へ拡張を認める必要性がある。 2、既判力の拡張がされる者として、形式的当事者と同視すべき者がある。具体的には、家族・同居人のような請求物の目的物を所持するものである(115条1項4号)。  この者らには権利関係をめぐる独自の利益はない。かような第三者は、訴訟上も独自の当事者権保障の下に訴訟を追行させる必要がなく、実質的にいって形式的当事者と同様の地位にあるものといえる。  そこで、紛争の実効的解決と勝訴当事者の保護のため、既判力が拡張されるものである。 このような者として、仮装の登記名義人や、法人格否認の法理が適用された場合の背後者もあげられる。 2、また、代替的手続保障がある場合も独自の訴訟追行をさせる必要がない。具体的には、代位訴訟の債務者など、訴訟担当の場合の利益帰属主体(115条1項2号)がこれにあたる。

代位訴訟の債務者への判決効拡張

【論点】代位訴訟の債務者への判決効拡張  債権者代位訴訟は、法定訴訟担当の一つである。これは代替的手続保障がある場合として、利益帰属主体たる債務者に判決効が拡張されるのが原則である(115条1項2号)。しかし、債権者が敗訴した場合も債務者に判決効は拡張されるか。  この点、債務者の権利保護の要請と、債務者と債権者は利害が相反することを理由に、判決効は拡張されないとする見解がある。  しかし、何度も訴えられるのは相手方にとって迷惑であるし、訴訟経済にも反する。また、債務者保護は、訴訟告知、独立当事者参加、共同訴訟的補助参加への途を開くことで図りうる。  したがって、敗訴の場合も、代位訴訟の債務者へ既判力は拡張されると解する。

口頭弁論終結後の承継人

【論点】口頭弁論終結後の承継人  口頭弁論終結後の承継人とは、判決の基準時後に訴訟物たる権利関係に関する実体法の法的地位を、前主である当事者から承継した者をいう。  この者には既判力が拡張される(115条1項3号)。その趣旨は、敗訴当事者が訴訟物に関する地位を処分したことによって、勝訴当事者の訴訟追行が無駄になることを防ぐ点にある。

承継人の範囲決定の基準

【論点】承継人の範囲決定の基準 1、「口頭弁論終結後の承継人」には既判力が拡張される(115条1項3号)。しかし、この「口頭弁論終結後の承継人」にあたるか否かの判断基準をどのようになすべきか。 2、包括承継があった場合は、承継人は被承継人の身代わりであるから、全面的に既判力が拡張されて構わない。問題は特定承継があった場合である。 (適格承継説)  思うに、有利な既得の訴訟上の地位を維持し、訴訟追行が無意味になることを防ぐ制度 としては、訴訟承継の制度がある。これと口頭弁論終結時の承継人の問題とは、地位が移転した時点が、判決基準時前か後かの違いしかない。  とすれば、承継人の範囲決定の基準としては、訴訟承継の問題と同様に考えればたる。ここに、訴訟承継の制度は広く特定承継により、新たに当事者適格を取得した者すべてに適用される。  したがって、「口頭弁論終結後の承継人」とは、当事者適格を当事者から伝来的に取得した者を指すと解する。 (依存関係説)  承継人の範囲決定の基準としては、当事者適格を当事者から伝来的に取得した者を指すという見解がある。この見解は、訴訟承継と本論点をパラレルに考える考え方である。  しかし、訴訟承継と本問題点は別の問題である。前者は、これから訴訟追行をするものは誰であるかの問題であるのに対して、後者は訴訟追行できないものである。とすれば、全く同じに考えるならば、既判力が及ぶ者への手続保障上問題があるというべきである。  そこで、当事者と第三者との実体法上の法的地位の依存関係によって、承継人の範囲を決定すべきである。依存関係ある者には既判力が拡張されても手続保障に反するとはいえないからである。 3、ここで、虚偽表示の第三者における94条2項のように、承継人に固有の抗弁ある時も既判力を及ぼすべきか。 (適格承継説から→形式説)  承継人が特定承継によって、法律関係にをめぐる地位を取得したといえれば、伝来的に当事者適格を取得した者ということができる。この者が固有の抗弁を持つか否かは、かかる要件があるというための妨げにならない。  したがって、固有の抗弁を持つ者にも既判力は及ぶ。ただし、固有の抗弁については前訴において提出をし争っておくべきとはいえない。したがって、既判力には遮断されないから、別訴提起してここで提出することは可能である。 (依存関係説から→実質説)  思うに、このように固有の抗弁ある者は、前主の不利な法律的地位を承継しないから、当事者に対する依存関係はない。  したがって、このような者は承継人ではないとすべきである。したがって、固有の抗弁は問題なく提出できる。 *形式説・実質説は既判力の観点からは、結論に違いはない。執行力が及ぶかどうかが一番の大きな違いである。 4、以上の基準によって既判力が及ぶ承継人とされる者は次のようなものである(*注 いずれの説からも大きな結論の違いはないが適格承継説から)。  まず、一般承継人は、前主の法的地位を包括的にそのまま承継するものであり、実体法上の地位を完全に前主に依存する。したがって、この者には、問題なく判決効は及ぶ。  特定承継の場合として、訴訟物たる権利・義務の譲受人があげられる。債務の引受人が具体例である。また、訴訟物たる権利関係をめぐる法的地位を当事者から承継した者もこれにあたる。家屋収去土地明渡請求後土地を借り受けた者等がその具体例である。 *要するに訴訟物たる法律関係の権利者・義務者そのものでなくても、よい。訴訟の当事者の一方によって、法律的な利害関係を持つような地位を得た者ならよいということ。 *訴訟物理論との関係  訴訟物の承継人に既判力が拡張されることは明らかである。この点、基準の明確性の点から、訴訟物は実体法における権利を下に決定されるべきであると解する。  とすれば、主張の内容が物権的請求権である時に権利関係を承継した者に既判力は拡張される。一方で、債権的な地位を譲り受けた者には既判力が拡張されないことになる。すなわち、明渡請求訴訟をされた賃借人が第三者に賃貸目的物の占有を移転した場合、貸主は所有権に基づく明渡請求については、既判力の拡張が肯定されるが、賃貸借契約に基づく明渡請求の効果は拡張されないことになりやすい。

反射効

【論点】反射効  本件では債務者甲が債権者乙に勝訴している。その後乙が保証人丙に保証債務の履行を求め訴求した場合、丙は乙に対して、甲勝訴の結果を援用できるか。  既判力は訴訟に参加し、現実に訴訟追行した形式的当事者に及ぶのが原則であり、例外として、民事訴訟法上、一定の拡張事項が定められている(115条)。しかし、主債務者に対する保証人は、当事者ではないし、115条所定の者ののいずれにもあたらないからこれに既判力は拡張されないかに見える。  しかし、主債務者に敗訴した債権者の請求は不当であるばかりではなく、訴訟不経済、判決の矛盾を招くおそれがあるので、これを認めるべきではない。  そこで、かかる結論を導く理論構成として、反射効なる概念を認める見解がある。反射効とは当事者間に既判力が生じたことが、当事者の一方と特殊な関係にある第三者に反射的に有利または不利な影響を及ぼす効力である。  しかし、処分権主義・弁論主義の下で、既判力の拡張と同視できる効果を発生させるには明文ある場合に限るべきである。さもなければ、手続保障の観点から問題あるからである。したがって、上記概念は認められない。  ただし、実体関係上依存関係が認められる場合、実体法規が既判力の拡張を導き出しているといえる。すなわち、この場合は実定法によって既判力の拡張が認められている場合と見られる。  したがって、このような場合は、明文あるから依存関係ある者に既判力を拡張することは許される。先の例についていえば、民法上主債務者に生じた事由は、附従性により保証人にも及ぶ。これを根拠に、既判力は保証人丙にも拡張されるといえる。  したがって、丙は先の甲乙間の訴訟の結果を援用でき、乙の丙への請求は棄却されることになる。

訴えの変更の意義

【論点】訴えの変更の意義 1、訴えの変更とは、訴訟係属後に、原告が当初からの手続を維持しつつ、当初の審判対象を変更することをいう。 2、訴えの変更の態様としては、追加的変更、交換的変更の二つがある。  追加的変更とは、当初からの請求を維持しつつ新請求についても審判を求める場合である。それに対して、交換的変更とは、従来の請求に変えて、新請求につき審判を求める場合である。 3、訴えの変更と扱うべきか否かは、訴訟物をいかに捉えるかの影響を受ける。例えば、不動産の明渡請求において、占有権に基づく訴えを所有権に基づくものに変更する場合、旧訴訟物理論では訴えの変更手続が必要になる。しかし、新訴訟物理論では単なる攻撃防禦方法の変更に過ぎないことになる。  このように旧訴訟物理論において訴えの変更と扱われるものも、新訴訟物理論では、攻撃防御方法の変更に過ぎないことがある。  また、請求の範囲の変更のうち、請求の減額について訴えの変更の一態様と見ることもできそうである。しかし、一部請求が処分権主義からして当然できることからすれば、請求の減額は、訴えの一部取下げと見るべきである。 4、(1)訴えの変更の要件としては、複数請求訴訟の一般的要件(管轄の有無など)が要求される他、「請求の基礎」の同一性(143条1項本文)が要求される。  権利関係にも訴訟資料の共通性がないような全く無関係な訴訟に変更された場合、そこまでなされた訴訟行為が無に帰する一方で、被告は新たな対応を迫られることになる。かような事態を防止するために、上記要件が必要とされたものである。  同一性の有無は、上記趣旨を満たすように判断されるべきである。すなわち両請求の利益関係が社会生活上共通であるか、旧請求をめぐる裁判資料の継続利用が可能であるかという観点から判断される。  さらに、かような要件は被告保護にあるわけであるから、被告の同意・応訴があるときは請求の基礎の同一性は要求されない。 *要件を満たす例として、土地所有権確認請求に加え、土地引渡請求をなす場合や、特定物引渡請求から損害賠償請求に交換する場合が考えられる。 (2)さらに、要件として、著しく訴訟手続を遅滞させないこと(143条1項但書)事実審の口頭弁論終結前であることが要求される。上告審は法律審であり、事実主張はできないから当然である。  手続的要件としては訴えの変更は書面でなされる必要がある(143条2項)。  なお、交換的変更をするには相手方の同意も要件とされる。交換的変更は旧請求の継続を消滅させるので、相手方の地位を既得が無に帰するおそれがあるからである。

相手方の陳述した事実を新請求の原因とする訴えの変更

【論点】相手方の陳述した事実を新請求の原因とする訴えの変更  甲は乙への丙土地明渡請求訴訟において、乙が賃借権の抗弁を提出したことに対して、土地の賃料支払請求へ訴えを変更する構えを見せている。かような訴えの変更は適法か。  甲の新たな請求は、同じ丙土地をめぐる法律関係に関するものである。したがって、元の請求と後の請求との請求の基礎の同一性は認められる。  仮に、これが認められないとすれば、乙の同意が必要であるかに見える。しかし、甲の訴えの変更は、被告が陳述した事実を新請求の原因とするものである。かような場合、乙が訴えの変更に同意しないことは、態度が矛盾するものとして許されない。  したがって、乙の請求の基礎の同一性も、乙の同意がなくても、甲は本件訴えの変更を有効に行うことができる。

反訴

【論点】反訴 一、反訴とは、係属中の本訴の手続内で、関連する請求につき、被告が原告に対して提起する訴えである。  原告には訴えの客観的併合・訴えの変更が認められるとされる。とすれば、公平の観点から、被告にもそれに対応した手段が認められるべきである。また、反訴を認めることによって、審理の重複・矛盾する判決が下されることも回避できる。反訴の趣旨はこのような点にある。 二、反訴の要件は次の通りである。 1、まず、管轄の有無など、請求複数訴訟の一般的要件が要求される。 2、次に、反訴請求と本訴請求・防御方法との関連性が要求される(146条1項)。訴えの変更に請求の基礎の同一性が要求されることに対応している。  かかる関連性が認められる場合として、両請求がその内容または発生原因において法律上・事実上共通性がある場合が挙げられる。例えば、賃貸借契約終了にともなう目的物の明渡請求に対して、賃借権確認の反訴請求をする場合がこれにあたる。  または反訴請求が、本訴請求を理由なからしめる事実と内容や発生原因で共通する場合もかかるかかる関連性が認められる。例えば、金銭の支払い請求に対する相殺の抗弁に加えて、相殺に供した額を超える部分の請求をなす場合がこれにあたる。 3、また、本訴の事実審口頭弁論終結前であること(146条1項本文)が要求される。なお、反訴提起後、本訴が却下され、取下げられても反訴に影響しない。  加えて、著しく訴訟手続を遅滞させないこと(146条1項但書)が要求される。旧法は上記要件について明文がなかったが、新法で新設された。最後に、控訴審での反訴提起については、相手方の同意・応訴あることが要求される(300条)。

控訴審での反訴についての相手方の同意

【論点】控訴審での反訴についての相手方の同意  控訴審での反訴提起には、相手方の同意が必要である。  同意が要求される趣旨は、相手方の審級の利益を保護し、手続保障を全うする点にある。  とすれば、その趣旨に反しない場合は、原告の同意なくとも反訴を提起できると解する。 例えば、反訴請求と関連する事項について、一審裁判所で審判がなされた場合は原告の同意なく控訴審で反訴をすることができる。この場合は原告の一審の利益は害されないからである。 *訴えの変更・反訴それぞれの要件 (1)請求の基礎の同一性→反訴では請求の関連性 (2)事実審の口頭弁論終結前であること、著しく訴訟手続を遅滞させないこと、複数請求 訴訟の一般的要件(管轄があること、同種の手続による処理が可能なこと)   →両方の手続で共通して必要とされる (3)控訴審における相手方の同意→訴えの変更では不要、反訴では必要 ∵訴えの変更による新たな請求に関連する事項は、一審で必ず審理されている→手続保障に欠けていない→反訴でも同様の事情があれば、同意は不要となる (4)交換的変更における相手方の同意→反訴は必ず追加的変更なので問題にならない *中間確認の訴えの要件 ・請求の前提問題の確認に限定される→請求の基礎の同一性、請求の関連性、訴訟手続遅延のおそれについては考慮する必要がない、手続保障の問題もない→相手方の同意は不要 ・事実審の口頭弁論終結前であること、複数請求訴訟の一般的要件は必要

複数請求訴訟

多数当事者訴訟

通常共同訴訟の審理方式(共同訴訟人独立の原則)

【論点】通常共同訴訟の審理方式〜共同訴訟人独立の原則 1、共同訴訟人独立の原則とは、各共同訴訟人は他の共同訴訟人の訴訟追行に制約されず、それぞれ独自に訴訟を追行しその効果を受けることである。  通常共同訴訟とは、別々の手続で処理できる訴えをたまたま同一手続内で処理するものに過ぎない。独立原則は、このような事情から認められるものである。 2、独立原則の結果、訴訟行為の効果は共同訴訟人互いに影響は及ぼさない。したがって、各当事者は他の共同訴訟人とは無関係に放棄・認諾・和解等訴訟上の地位の処分や上訴をなしうる。  さらに、共同訴訟人の一人につき中断・中止事由があったり、期日に出頭しなかったりしても、他の共同訴訟人にはその効果が及ばない。

証拠共通の原則

【論点】証拠共通の原則  共同訴訟人間の証拠共通とは、共同訴訟人の一人が提出した証拠は、他の共同訴訟人が援用しなくても、その者の主張する事実の認定のためにも、共通して資料たりうることを指す。  その根拠は、自由心証主義の下では、1つの歴史的事実の心証は1つしかあり得ないことに求められる。ただし、弁論主義の不意打ち防止機能からして、全面的に独立原則を採用するのは問題である。

共同訴訟人独立の原則の修正(主張共通の導入の可否など)

【論点】共同訴訟人独立の原則の修正〜主張共通の導入の可否など 1、連帯債務者甲は訴訟の当初から欠席をしている一方で、他の連帯債務者乙が弁済済みの抗弁を提出している。通常共同訴訟では、共同訴訟人間には独立原則が働くので、乙が提出した弁済済みの抗弁は甲に影響を及ぼさない。とすれば裁判所は、甲との関係では債務が存在し、一方、乙との関係では債務が消滅しているという判決を下さざるを得ない。  これは、内容的に矛盾しているので、かかる判決を下すことは好ましくない。そこで、乙の抗弁の効果を甲に及ぼす法律構成が問題となる。 2、まず、乙が甲に補助参加をすれば、乙がした訴訟行為の効果を甲に及ぼすことができる。そこで、裁判所が釈明の上、乙に補助参加をするように促すことが考えられる。  しかし、これに乙が応じない場合、当然の補助参加を認められないか。  これについて、抗弁の内容について、甲に有利なものについては、当然の補助参加の理論を認めてよいとの見解がある。甲にとって不意打ちになることはないし、不利益がない以上これを認めてよいということである。  しかし、いかなる事実主張をするかの自由は弁論主義に妥当するものである。証拠共通は自由心証との関係で認められても、事実主張のレベルにおいては同じであるとはいえない。とすれば、明文もなく、その自由を侵害することは許されない。  したがって、当然の補助参加の理論は認められない。同様に、主張共通の原則も認められないと解する。

類似必要的共同訴訟が要求される場合

【論点】類似必要的共同訴訟が要求される場合 3、(上記と同じ事例で)さらには、本件のように論理的に結論が矛盾する場合、類似必要的共同訴訟として、必要的共同訴訟の審判の原則を導入することはできないか。  思うに、必要的共同訴訟の審判の原則は、訴訟人の訴訟上の処分権能を否定する度合いが大きく、その範囲は限定されるべきである。通常共同訴訟でも証拠共通の原則が認められ、ある程度の合一確定は保障される。  したがって、類似必要的共同訴訟が要求される場合は、対世効ある時など、判決効が拡張される場合に限定するというべきである。個別訴訟によると論理的に矛盾する場合であっても、類似必要的共同訴訟とせず、通常共同訴訟となると解する。  以上から、乙による甲への補助参加がない限り、その抗弁が甲に影響することはない。

固有必要的共同訴訟

【論点】固有必要的共同訴訟 一、固有必要的共同訴訟とは、数人が共同して初めてある訴えにつき当事者適格が認められる共同訴訟の類型である。  制度目的は判決の矛盾回避と、当事者適格者全員の訴訟関与の機会を確保する点にある。 二、1、固有必要的共同訴訟が要求される範囲の決定は、訴訟物である権利関係をめぐる関与者の地位との関係で、客観的になされる必要がある。訴訟形態が決まらない限り、訴訟を開始することができないからである。  しかし、それに加えて、手続上の要求も考慮して決しなければならない。例えば、被告複数の固有必要的共同訴訟とした場合、被告全員が揃わない限り訴えができないということになる。そうなると、原告の訴権が害されるからである。 2、以上を踏まえて、固有必要的共同訴訟になる場合をあげる。  第三者提起の婚姻取消の訴えなど、他人間の権利関係の変動を結果する形成訴訟は固有必要的共同訴訟とされねばならない。また、共有関係での処分行為など、実体法上単独で処分できない権利が訴訟物となっている場合は、原則として固有必要的共同訴訟となるべきである。いずれも、権利関係の当事者全員の訴訟関与の機会を確保すべきだからである。  逆に、通常共有者は持分を自由に処分できるから、このような持分権に関わる訴訟は個別訴訟を認めうることになる。  一方で、共有者が被告になる場合の共有物の明渡請求訴訟などは、これを通常共同訴訟とするべきである。原告の権利保護の要請があるからである。理論的には、共有者の負う債務が不可分債務であることに求めればよい。

主観的予備的併合は許されるか

【論点】主観的予備的併合は許されるか 1、主観的予備的併合による共同訴訟の成立は認められるか。  思うに、このような訴訟形態を認めた場合、予備的被告の地位が手続上不安定な状態におかれる。しかも、上訴がなされた場合裁判が不統一となる可能性がある。したがって、このような訴訟形態は否定すべきである。  しかも、実体法上両立しない複数の請求について、原告の同時審判の申立により、弁論と裁判の分離を禁じることができる(41条1項)。かつ、各共同被告の控訴事件が同一控訴裁判所に各別に係属する場合、弁論と裁判は併合してしなければならない(41条3項)。 この制度によれば、順位付けはないが、主観的予備的併合とほぼ同じ目的が達成できるので、上記のような訴訟形態を認める必要性はない。  なお、かかる申立は、控訴審口頭弁論終結までに行わねばならない。

第三者による主観的追加的併合(参加型)

【論点】第三者による主観的追加的併合 1、これは、他人間の訴訟の請求と関連性がある請求をたてて、第三者が原告または被告に対する訴えを併合提起しうるとするものである。後発的に通常共同訴訟が成立する場合といえる。  しかし、かかる制度に明文があるのは、参加承継の場合、共同訴訟参加、選定当事者による追加定立、片面的独立当事者参加の場合があげられる。これ以外の明文がない場合に、第三者による主観的追加的併合は認められるか。 2、思うに、複数当事者訴訟を後発的に形成することは、必ずしも審理の効率化を図りうるものではない。場合によって訴訟の複雑化及び遅延を呼ぶ危険性があるし、訴えの相手方の審級の利益・手続保障の点でも問題がある。  したがって、私人が主導権をもって、後発的に複数当事者訴訟を形成できるのは、明文があるときに限定すべきである。それ以外に複数当事者訴訟を形成するには、別訴を提起させ、審理の効率化を図りうると裁判所が判断した場合、弁論を併合することで実現すべきである。

当事者による追加(後発的主観的併合)(引込み型)

【論点】当事者による追加(後発的主観的併合)  当事者による追加とは、38条前段における通常共同訴訟の要件を備えた場合、一審に訴訟が係属中に第三者を被告側の共同訴訟人として加えることをいう。  しかし、これについて明文があるのは、引受承継の場合のみである。それ以外の場合に、このような通常共同訴訟の成立を認めることができるか。  思うに、引き込まれた第三者との関係で旧訴訟の訴訟状態を利用できるかは疑問である。しかも軽率な提訴・濫訴を招き、訴訟を複雑化させ、訴訟遅延のおそれもある。  したがって、このような訴訟成立形態は認められない。必要ある場合は、別訴提起と弁論の併合によるべきである。

補助参加訴訟

【論点】補助参加訴訟  補助参加とは、他人間の訴訟の結果につき利害関係を持つ第三者が、当事者の一方を勝訴させることによって、間接的に自己の利益を守るためにその訴訟に参加する参加形態である。  その要件としては、訴訟係属中であることがあげられる(42条)。その場合、審級を問わない。旧法下では上記点について争いがあった。しかし、新法では旧法64条から、訴訟係属中という語を削除し、再審の訴えにおいても補助参加ができることを例示し、その趣旨を明らかにした。  その他の要件としては、他人間の訴訟であること、第三者が訴訟の結果に利害関係を有することがあげられる。  なお、共同訴訟人において、相互の利益が相反する場合、相手方に補助参加できる。これは「他人間の訴訟に参加すること」の例外である。

補助参加人の訴訟上の地位

【論点】補助参加人の訴訟上の地位  補助参加人は当事者とは独立した地位を有する。例えば、独自の判断で攻撃防禦方法の提出、異議申立、上訴提起などの1切の訴訟行為をすることができる(45条1項)。  そのことに関連し、新法では再審の訴えの提起ができることが明文化された(45条1項)。

参加的効力の性質

【論点】参加的効力の性質  参加的効力と似た概念に既判力がある。しかし、既判力の根拠は、紛争解決基準としての、法的安定要求にある。  それに対して、参加的効力は、同一当事者で共同して訴訟を追行し、敗訴した者相互間の責任分担原理から認められるものである。すなわち、衡平・禁反言を根拠とする効力と解するのが妥当である。 *訴訟告知(53条)  訴訟告知とは、訴訟係属中に、当事者が当該訴訟につき利害関係を有し参加しうる第三者に対して、法定の方式により訴訟係属の事実を通知することである。

被告知者が告知者の相手方当事者に参加した場合

【論点】被告知者が告知者の相手方当事者に参加した場合  このような場合、告知者との後訴において、参加人に参加的効力は及ぶか。  思うに、告知制度は、告知された者に訴訟参加の機会を与えると同時に、その者に参加的効力を及ぼし、来るべき訴訟に備え、告知者に準備をさせるものである。以上からみれば、告知制度は、告知者のための制度であると同時に、紛争の統一的解決のための制度である。かような趣旨からすれば参加的効力の発生はできる限り広く認めるべきである。  したがって、参加的効力の発生を肯定すべきであると解する。

独立当事者参加訴訟(47条)の要件としての権利侵害

【論点】独立当事者参加訴訟(47条)の要件としての権利侵害とは  独立当事者参加訴訟において、詐害防止参加をするには、参加者は権利が害されることを主張しなければならない。かかる要件はどのような場合に認められるか。  権利侵害の内容を、判決の既判力が第三者に及ぶことによってその権利が害される場合に限定する説がある。しかし、このような場合、共同訴訟参加・共同訴訟的補助参加の制度でも、判決効が拡張される者の保護は図りうる。かかる限定した解釈を取れば、別に本訴訟形態を認める意義がなくなるおそれがある。  本訴訟形態が改めて法定された趣旨を重視し、権利侵害の意義は広く解するべきである。すなわち、第三者の権利が他人間の権利関係の存否と論理的関係があるため、詐害判決によって事実上影響される場合を含むと解する  こう解することいよって、設定登記を受けた者が、土地所有権移転登記の抹消請求訴訟に参加することができることになる

片面的(準)独立当事者参加(47条1項)

【論点】片面的独立当事者参加(47条1項)  片面的独立当事者参加とは、当事者の一方が参加人の主張を争わないで、独立当事者参加を行うことをいう。  旧法では、このような参加形態が認められるか争いがあり、片面参加を新訴提起と扱うべきとして、参加形態を認めない見解もあった。しかし、その場で弁論の併合・必要的共同訴訟として統一的処理がなされる保障がない。しかも、争わない当事者に参加請求をたてる必要はない。  そこで、片面的独立当事者参加を認めるべきであるとされたが、法改正によって明文で認められるに至った。

上告審での独立当事者参加

【論点】上告審での独立当事者参加  上告審で第三者は独立当事者参加をなしうるか。  思うに、上告審では、参加人の請求の当否の審判ができない。また、この者は下級審で敗訴したわけでないから、上告の利益もない。  したがって、本論点は否定的に解するべきである。

一人の上訴と上訴審の審判範囲

【論点】一人の上訴と上訴審の審判範囲 1、独立当事者参加がなされ、三面訴訟が形成された場合において、一人だけ上訴したとき、全訴訟が上級審に移審する。  しかし、上訴審では不服の限度でのみしか審判できない(304条)のに、上訴しなかった二者の間の訴訟について、審判してよいのかについて検討する。 2、まず、上訴しなかった三人目の者の地位をいかに見るべきか。  この点、敗訴者のうちの一人が上訴したということは、これは他の敗訴者との関係でも有利な訴訟行為である。このことを理由に、上訴人の上訴の効果は上訴をしない者にもそのまま及ぶという見解がある(40条1項準用)。  しかし、三人目の者は上訴人とは、相争う関係にあるから、かかる見解を取るのは無理がある。三人目の者は、上訴人との関係では相手方である被上訴人とみるべきである。この場合、上訴人の訴訟行為は三人目の者にも及ぶことになる(40条2項)。 3、そうすると、裁判所が上訴人の請求を認めた場合、三人目の者の請求も一部認められることになるから、これは不利益変更の禁止に触れないのか。  思うに、独立当事者参加制度は、合一確定の要請の下、通常とは異なる三面訴訟の形態をとったものである。  したがって、上訴審での審判範囲の原則は、このような合一確定の要請の前に一部修正されるとみるのが妥当であると解する。

脱退者への効力

【論点】脱退者への効力  独立当事者参加後、当初の訴訟当事者が脱退した場合、二当事者訴訟に還元される。かかる訴訟脱退の法的性質をいかに解するべきか。  思うに、脱退者は訴訟上の地位を参加人、相手方の訴訟追行の結果に委ねたものである。  とすれば、訴訟脱退とは、条件付き放棄・認諾と解するのが妥当である。  すなわち、参加人が勝訴した場合は自己への請求を認諾することになる。一方、相手方が勝訴した場合は、自己が原告の場合は放棄、被告の場合は認諾したことになる。

任意的当事者変更の性質

【論点】任意的当事者変更の性質 一、任意的当事者変更の法的性質をいかに解すべきか。  この点、訴えの変更と見る見解がある。  しかし、訴えの変更は、請求の変更だけを予定しており、新当事者への手続保障への配慮が欠ける。したがって、新当事者の手続保障の要請と従来の手続利用の要請との調整に向かない。  上記のような要請を満たすため、任意的当事者変更とは、変更を求める当事者が、新訴の主観的追加的併合と、旧訴の取下げをなすものと解すべきである。  したがって、任意的当事者変更は上記行為の複合行為であることになる。 二、1、以上から、任意的当事者変更の手続には、主観的追加的併合・旧訴の取下げの要件が必要ということになる。  しかも、新当事者の審級の利益を保護すべきであるから、一審係属中に限る。 2、ただし、新旧両手続の分断を防ぐ必要もある。そこで、旧訴状を補正して用いてよい。また、印紙を貼付しなくてよいし、時効中断等の効果は旧訴提起の時点に生じると考えるべきである。 3、また、新当事者は従来の訴訟追行の結果を一括でも個別にでも追認できる。一方で、旧当事者が自白した事実に反する主張ができる。信義則に反しない限り攻撃防禦方法の提出も自由である。  ただし、新当事者が実質的に従来の旧訴訟手続に関与し、旧当事者の訴訟追行が新当事者のそれと同視できる場合がある。このような場合、新当事者は追認を信義則上拒絶できない。かように解することで、訴訟追行の結果は維持され、新旧訴訟の分断を防ぐことが可能になる。

参加承継・引受承継

【論点】参加承継・引受承継  実体関係につき特定承継があった場合、承継人が、被承継人の承継の時点での訴訟追行上の有利・不利な地位を承継するとされる建前を、訴訟承継主義と呼ぶ。  承継人の訴訟参加の申出、あるいは承継人に対する前主の相手方当事者からの訴訟引受の申立によって承継が生じる。  現行法では、訴訟承継主義が明文で規定され、上記趣旨が明らかになっている(49、50、51条)

引受承継時の訴訟形態

【論点】引受承継時の訴訟形態  参加承継では、47条が準用されるから(51条)、必要的共同訴訟となる。  一方、引受承継では通常共同訴訟の審判の原則が取られる。しかし、被承継人が脱退しない場合、引受申立を同時審判申出ある共同訴訟の申立と扱うことにされている(50条3項)。結果、弁論と裁判の分離は禁じられ、判決の矛盾は避けられることになる。 *訴訟の関係人が入れ替わる場合の比較  任意的当事者変更 → 訴える相手を間違ったときに用いる  (変更される当事者間に連続性はない)  訴訟承継 → 実体上の地位が移転した場合に使用される  (変更される当事者間に連続性ある)  代理人の補正 → 当事者は変更されず、権利ある代理人が訴訟追行する

不利益変更禁止の原則

【論点】不利益変更禁止の原則  認容判決をするのは不服申立の範囲内に限られる(304条)。  この定めによって、控訴審の判断は悪くとも一審判決が維持されるから、不服の範囲を超えて不利益な判決を受けることはない。ただし、控訴人が不服を申し立てていない敗訴部分につき、控訴人に有利に変更することも許されない。  以上は、当事者主義の現れということができる。

不利益変更の禁止と全請求の移審

【論点】不利益変更の禁止と全請求の移審  控訴は不可分であるから、全請求が移審することになる。しかし、このような控訴不可分の原則は、当事者が控訴した範囲でしか裁判所が審判できないとする不利益変更の禁止は矛盾するかに見える。  これは、全請求が移審するが、当事者主義の結果として控訴、附帯控訴を条件として判断できるに過ぎないとみれば足りる。したがって、矛盾は生じないというべきである。

多数関与者訴訟と当事者適格

【論点】多数関与者訴訟と当事者適格 1、住民が環境訴訟を起こす場合、代表者の定めある権能なき社団ながら、29条により訴訟能力は認められないのか。  思うに、住民が権利能力なき社団と評価される場合ならば、29条の適用を認めてよい。  ただし、この場合訴訟追行を担当する者に全員が訴訟追行権を授権する必要がある。人格権は社団ではなく構成員に帰属するものだからである。 2、なお、他の方法として、組合ならば組合に当事者能力を認めることができる。また、選定当事者制度を活用する方法がある。

上訴

控訴審での反訴についての相手方の同意

上訴の利益の判断方法

再審

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