【表見法理の類推可能性】
【表見法理の類推可能性】

 商業登記簿上の代表者を代表者として訴え提起したが、真の代表者ではなかった場合、実体法の表見法理(民法109、112条、商法12、14条等)を類推して原告を保護すべきかが問題となる。

 登記を怠った会社を保護するために、原告に訴訟手続きをやりなおさせるのは、酷であり公平に反するとも言える。

 また、36条1項が、法廷代理権の消滅は相手方に通知しなければ主張できないとして相手方を保護している趣旨からも、表見代理規定の類推を認めるべきであるとも思われる。

 しかし表見代理法理を類推するとすれば、原告の善意悪意により類推の可否が左右され、法的安定性を欠く。
 そもそも表見法理は取り引きの安全を図るための制度であり、手続きの安定性を重視する訴訟行為に類推すべきではない。この理は、商法24条において表見支配人が有すると見なされる権限から、訴訟行為が除外されていることからも明らかである。 (否定説)


 →ただし、登記を信じた原告を保護すべきである……
  よって、登記の訂正を怠ったなどの過失がある会社は、既に行われた訴訟行為の追認を求められた場合に、信義則上これを拒めないと考える。(?)