【一部請求後の残部請求は二重起訴にあたるか】
 (前提)まず、数量的に可分な債権についての一部請求は、処分権主義から(また試験訴訟の実際的な必要性からも)認められる。
 そして、この場合の訴訟物の範囲については、争いあるも、債権全体が訴訟物であり、既判力の客観的範囲もそれに従うと解する。
 従って、一部請求の棄却判決が確定すれば、全部分の不存在が確定し、残額請求は既判力によって遮断される。
 これに対し、一部請求が容認された場合、その判決が残部請求にどう影響するかは、一部請求であることが明示されたかどうかで異なる。
 @明示されなかった場合は、当該債権の額が給付を求められた額によって確定されたことになり、残部請求は判決に矛盾する主張となるので既判力によって遮断される。
 Aこれに対し、明示の一部請求後の残部請求訴訟では、原告は既判力によって存在を確定された債権の残額の給付を求めるのであるから、既判力が残額請求を遮断することはない。
    伊藤187