【管轄の合意の錯誤の場合、民法の規定の類推の可否】(場合分け説)
(訴訟上の合意の法的性質)
 争いあるも、その合意の内容に従って、私法上の契約と訴訟上の契約が併存しうると解する。
    【訴商行為に対する私法規定の適用可能性】 意思表示としての性質を持つ訴訟行為について、民法の意思表示の瑕疵にかんする規定の適用があるか。
 (1)この点、管轄の合意や証拠契約のように、それを前提として訴訟法律関係が形成される行為については、訴訟手続安定が強く要請されるので、再審事由が認められる場合のみ無効主張を認めるべきである。
 (2)これに対し、訴えの取り下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解など、訴訟係属を消滅させる行為については、手続安定の要請よりも当事者保護を重視して、意思表示の瑕疵に関する私法規定の類推適用を認めてよいと考える。
     伊藤294-296