【一部請求の可否と既判力の範囲】
【一部請求の可否と既判力の範囲】

 一部請求とは、数量的に可分な債権について、その一部のみを裁判上請求することを言う。これは、訴訟物の範囲を決定するにあたっての当事者の処分権の現れとして当然に認められる。
 この一部請求は、例えば損害賠償請求訴訟などにおいて、損害額の特定が困難であることや、試験訴訟としての一部訴訟を認めることが費用の乏しい原告に訴訟機会を保証する意義があることからも認める実益がある。

 
 では、この場合、訴訟物の範囲は請求された一部分なのか、それとも残部を含む全体となるのだろうか。
 思うに、原告の処分権として請求の範囲を決定する権限が認められることから、実際に請求された一部のみが訴訟物であると考える。
 よって、判決の既判力は残部には及ばず、残部についてのちに提訴することが出来る。

 もっとも原告による恣意的な訴訟物の分断を認めると、被告に二重応訴の不利益を与えることになり妥当ではない。よって、原告によって、一部請求であることが明示された場合にのみ、その一部分だけが訴訟物となると考える。