【証明責任の分配】法律要件分類説
 訴訟物たる権利関係を基準とし、@権利発生、A権利障害、B権利阻止または消滅のそれぞれの法律効果が自己に有利に働く当事者が、その法律効果を基礎づける要件事実について証明責任を負う。
 その際、ある事実がどの法律効果を基礎づけるかは実体法の解釈による。(法律要件分類説)
 ただし、他の規定との整合性や、当事者の証明負担の公平の観点から、ある事実を権利発生事実とするかあるいは権利障害事実とするかは、証拠との距離、立証の難易、事実の存在の蓋然性などの実質的な要素を考慮して分配すべきである。
    伊藤328
#債務不履行責任(民415)における債務者の帰責性:原則としては債権者に立証責任がありそうだが、帰責性の有無は債務者側の事情であり、その証拠も債務者側にあることから、帰責性の不存在を権利障害児実として、債務者に立証責任を負担させるべきである。
#安全配慮義務違反における義務違反の事実:これも、判例は原則通り、原告に、義務内容の特定と義務違反に該当する事実の立証を要求するが、考え方としては債務不履行の帰責性の有無と同じく考えて(も)よい。
 ☆原則として、義務違反該当事実の立証責任は原告にある→しかし証拠の偏在により著しく不公平→よって、安全配慮義務の前提になる法律関係と事故の存在を原告が立証すれば、被告側が安全配慮義務を尽くしたことの立証を要すると解する。  百選121
#相続回復請求権の消滅時効の援用(民法884):
 ・真正相続人の表見相続人に対しする相続回復請求権は5年で消滅時効に罹る。
 ・表見相続人が時効援用するための条件:真の相続人の存在につき善意であり、かつ知らなかったことに合理的な事由があること(「善意かつ合理的事由の要件」)(制限的肯定説) ☆立証責任は表見相続人にある。←時効の利益を得ようとする者だから。
  #共同相続人間にも適用あり。
   家族法百選59