【訴えの取下げへの民法意思表示規定の類推適用】
 訴えの取下げの意思表示に瑕疵があった場合、民法の意思表示規定を類推適用すべきか。
 この点、手続安定を重視する観点から民法規定の類推適用を否定する見解がある。
 たしかに、管轄の合意や証拠契約など、その意思表示を前提に、当事者や裁判所の訴訟行為が積み重なり訴訟法律関係が形成されるものについては、手続安定の要請が強いため、再審理由のある場合のみ無効主張を認めるべきである。
 しかし、訴えの取下げや、請求の放棄認諾など、訴訟係属を消滅させる訴訟行為については、手続安定以上に当事者の利益保護を優先して、意思表示の瑕疵に関する民法規定の類推適用を認めても支障はないと考える。
 よって、訴えの取下げについて錯誤無効などの主張をすることは許されると考える。
       伊藤295