【放棄認諾調書の既判力の有無】肯定説
(既判力の有無) 和解または請求の放棄認諾の調書は、確定判決と同一の効力を有する267。しかし、当事者の行為であるものに既判力まで認めるべきか。
 この点、@当事者の放棄認諾の陳述のみならず、一定の要件の具備を裁判所が確認したうえで調書が成立したことが確定判決と同一の効力の発生要件とされている、
 また、A既判力が一般的に既判力を有しないならば、当事者は何ら訴訟法上の制約なしにその記載内容を争えることになり、和解・放棄認諾の紛争解決機能が著しく損なわれる。
 よって、既判力も認めることが合理的である。

(意思表示の瑕疵) 放棄認諾の意思表示に瑕疵がある場合に民法の意思表示の規定を類推適用できるか。この点、既判力の付与といっても、公権的判断作用による確定判決同様に厳格に解する必要はないので、法的安定性よりも当事者の保護を優先することが許容できる。従って、放棄認諾などの意思表示に瑕疵がある場合には、再審事由に限定せず、民法の意思表示の規定を類推適用できると考える。(制限的既判力説)

(無効主張方法) 和解・放棄認諾の効力は、確定判決によらず、調書への記載という簡易な方法によるものなので、無効主張には、当事者が期日指定の申立てをし、開かれた口頭弁論期日で無効主張するという方法を認めてよい。
     伊藤424,295,437