【相殺の抗弁の既判力 114-2】
 判決理由中の判断には既判力が及ばないのが原則である。114-1
 しかし、相殺の抗弁については、遡求債権を消滅させるに足りる範囲で、既判力が認められる。114-2
 その理由は、相殺の抗弁に既判力を認めないと、訴求債権についての紛争が、反対債権の存否を訴訟物とする後訴によって蒸し返されることを許すことになり、紛争解決の実効性を損なう点にある。
   伊藤489 デp260

     【その既判力の範囲】 相殺の抗弁について、いかなる範囲で既判力が生じるか。
 この点、相殺の抗弁が認められ自働債権が消滅する場合も、逆に自働債権不存在として抗弁が排斥される場合も、いずれにしても基準時における自働債権の対抗額部分の不存在について既判力が生じると考える。
 (理由)(こう考えることが114-2の文言に調和するし、基準時前の自働債権及び受動債権の存在とその相殺による消滅という法律効果を既判力で確定することは既判力の原則に相容れない。)
   伊藤490-
#相殺の抗弁に対する相殺の再抗弁は、法律関係を不安定にすることから許されない。 h10.4.30