【移送前に移送裁判所でなされた訴訟手続の効力】
 移送が確定すると、最初から受移送裁判所に訴訟係属があったものとみなされる。20-3 よって、時効中断などの訴え提起の効力は維持される。
 では、移送前の当事者や裁判所が行った訴訟行為(攻撃防御方法の提出、証拠調べなど)の効力は、移送後も維持されるか。
 この点、管轄違い移送以外の場合は、管轄権のある裁判所で裁判を受ける権利が保障されているので、移送前の訴訟行為の効力が維持されると考える。
 逆に、管轄違い移送の場合は、管轄権が本案審理の前提条件である以上、それを欠く訴訟行為に受移送裁判所が拘束されるべきではない。 しかし、任意管轄違背の場合は、管轄違いの抗弁を主張せず応訴すれば、応訴管轄が生じる12。であれば、この抗弁を留保しつつ行った訴訟行為の効力が移送後失われるとするのは妥当ではない。かかる場合には、移送後も、移送裁判所での訴訟行為の効力は維持されると考える。
    伊藤71
#管轄違いの場合すべて失効すると解するのが通説。