【失念株主と剰余金配当請求権・株式割当権の帰属】
 剰余金配当請求権・株式割当権は決算期現在・基準日(124-1)現在の名簿上の株主に与えられる。よって名義書換を失念した株主はこれらの権利を行使できない。
 もっとも、譲渡人が右権利を行使した場合は、譲渡人譲受人間の法律関係が問題となる。
 この点、両者の間では右権利は譲受人に帰属し、譲渡人には不法利得(民703)が成立し、現存利益の返還義務を負うと考える。※
 ・現存利益の範囲とは
  @募集株式発行直後の時価と払込金の差額を上限とする。
  A株価が一旦下がった時は、その下がった額と払込金の差額が現存利益となる。
  かく解することで、新株発行直後の値動きによって失念株主が不当に利得することを阻止できる。
  (なお株式そのものの返還は認められないと考える。新株を引き受けることは株主の義務ではないし、株価下落の危険を失念株主が譲渡人に転嫁することを認めるのは妥当ではないからである)
   前田〔284〕

 ※(譲渡人の二重のプレミアム:@増資が見込まれることにより高値となった株式を譲渡している、A市場価格より安価に引き受けた新株の売却益)←これが不当だから現存利益の返還がされるべき