【表見代表取締役】354
 354は、外観として代表権を有すると認められる名称を与えられた表見代表取締役の行為は、善意の第三者に対して責任を負うと定める。
 しかし代表取締役の氏名などは登記事項であり911-3.14、登記後は第三者の悪意が擬制されて908、354が働く余地はないとも思われる。
 そこで両規定の関係が問題となるも、354条は908条の特別規定であって354に該当するかぎりで908は機能しないと考える。
 相手方としては取引に際していちいち登記を閲覧することは煩瑣であるが、代表権を有すると認められる名称を持った者を代表取締役と信じて取引すれば、この規定によって保護されることになる。
   前田〔533〕
☆要件: @ 善意・無重過失 A外観付与に関する会社側の帰責事由 B外観への信頼
 ※A帰責性は黙示的に名称の使用を許していた場合にも認められる。