【第三者に対する損害賠償責任】429条
  (429条の法的性質) この点、会社の業務が複雑多岐にわたることから、役員等の責任を民法の不法行為責任(民709)の一般原則から悪意重過失の範囲に縮減する規定であるとする説もある。
 しかし業務の複雑さを責任軽減の理由とすることは妥当ではない。むしろ、企業活動の社会的影響の大きさから、それにより損害を受ける第三者を保護するために責任を加重した規定だと考えるべきである。
 すなわち、第三者の権利侵害については故意過失がなくとも、業務の執行について悪意又は重過失があれば、それによって生じた損害の賠償責任を負うことになると考える。 (法定責任説)
   前田〔503,504〕 百選77

  (429条の要件、損害賠償請求の範囲) ☆「第三者」の範囲に株主は含むか? →含む。※個々の株主が取締役の業務執行によって蒙った損害を回復する必要性があるから。
 ☆直接損害…債権者にも株主にも認められる。
 ☆間接損害…株主の間接損害については、株主代表訴訟により会社の損害を回復しうるのでそれによれば足りる。本条の請求を認めると株主平等原則に反する恐れがある。 ※@423条によってまず会社が取締役に責任追及する、それがなされない場合には株主代表訴訟847-3によるべし
 ※株主の間接損害以外は429の適用がある(通説)
 ※直接損害の例:取締役の虚偽の発表により高騰した株式を取得したが、虚偽が発覚して株価が下落し損害を蒙ったetc
 ※中小企業において、この規定が実質的には法人格否認の法理に代わる機能を果たしている。
 ※取締役会の代表取締役監督権限についても適用した判例がある。
   前田〔505,506〕 百選78