法学座敷牢 別名 ろおやぁ
択一対策知識整理ノート:刑法 各論
・障害は暴行(物理的有形力の行使)によって生じる(基本型)
・が、暴行によらない障害(無形的手段)も可能。
・ex. 嫌がらせ電話→精神衰弱に。 怒号等→不安・抑鬱状態に。 性病であることを隠して、性器を押し当て→性病を感染させる。
(事例:暴行の故意で障害結果を生じた場合の処理)
傷害罪説(暴行罪の結果的加重犯を含むとする説)(通説)
・暴行罪の規定208が「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、」と定めるのは、傷害するに至ったときは204(傷害罪)で処断する趣旨と解する。
・204は38.1(故意犯処罰規定)の但書の場合に当たると解する。
第三十八条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
暴行罪と過失致傷罪の観念的競合説(傷害の故意を要求する説)(木村)……根拠は38.1本文。
★無形的方法による場合、暴行は経由せず、暴行の故意が考えられない以上、傷害の故意が必要である。前田p32
(現場助勢)
第二百六条 前二条注:傷害、傷害致死の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
☆論点=適用範囲が、それを軽く処罰する趣旨との関連で争われる
判例=幇助にならない行為を処罰する趣旨。幇助に当たれば、現場で行われても幇助罪とする。妥当な気がする……
他の学説(山口)=幇助(及びその実行未遂形態)に当たる行為で、現場で行われたものを、野次馬的な群集心理を考慮して軽く処罰する趣旨。軽く処罰する根拠は、野次馬的心理を考慮した責任の減少。また、幇助行為も「勢いを助けた」と言える以上、現場助勢罪の適用範囲から除外するべきではない。これも理屈はわかる
保護法益は「名誉」
1、内部的名誉=自己又は他人の評価とは独立した「人の真価」←自己以外によって侵害は不可能であり、刑法の保護対象にならない。
2、外部的名誉=人に対する社会の評価、世評、名声。社会的名誉とも。(虚名含むw)
3、主観的名誉=本人が自己に対して抱く名誉感情
(親族間の犯罪に関する特例)
第二百四十四条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
★1項と2項で扱いに不均衡! 1は、刑の免除という有罪判決。2は親告罪とされ、告訴ない限り処罰されない。
A・1項も、刑訴法399.1:2に準じ、公訴棄却すべき、とする説←条文上の根拠に乏しい
刑訴法 第三百三十九条 左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。
一 第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。
二 起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。
B・1項についても2項との均衡上、解釈として親告罪として扱うべきとする説(団藤、山口)
@手段説:強盗の手段である暴行・脅迫から生じたものに限定
←批判:強盗致死傷罪の成立範囲が狭すぎる
A密接関連性説(学説):@+「強盗の機会」に行われたもののうち強盗行為と密接な関連を有する行為
←批判:限界が明瞭でない点に疑問がある。
B機会説(判例通説):「強盗の機会」に死傷の結果が生じれば足りる
←批判:成立範囲を拡張しすぎる。「強盗の機会」に、元から恨みのある第三者や、仲間割れした仲間を死傷した場合まで含まれてしまう。
C拡張された手段説(山口、西田説):@+事後強盗類似の状況における暴行・脅迫
@殺人罪と強盗致死罪との観念的競合(旧判例)
←批判:死を二重評価することになる。
A240後段のみを適用し強盗致死罪とする(判例・通説)
B殺人+強盗罪成立としたのでは、死の結果に過失がある場合(強盗致死罪)よりも刑が軽くなり均衡を失する。
よってAが妥当であり、傷害に故意ある場合も、240前段のみを肯定することが妥当。
こうして、240条は「強盗殺人罪」(故意あり)「強盗致死罪」(故意なし)「強盗傷人罪」(故意あり)「強盗致傷罪」(故意なし)の4類型からなることになる。山口各論p234
=事例=
A・財物奪取の意図で殺害し、後に財物を奪取
B・殺害後に、財物奪取の意図を生じ、財物を奪取
C・殺人と無縁の第三者が、死体から財物を奪取
【判例の処理】A=強盗殺人、B=殺人+窃盗罪肯定、C=窃盗罪肯定。Bにつき、「生前有していた財物所持は死亡直後も継続して保護するのが法の目的にかなう」として「死者の占有」を認める。
【「死者の占有」否定説(山口)の処理】A=強盗殺人、B=殺人+遺失物等横領罪、C=遺失物等横領罪とする。「死者の占有はフィクション。肯定される範囲も不明瞭。恣意に流れる危険」と指摘。なお、Aにつき、「生前の占有を侵害し、財物の占有離脱状態を生じさせた後、その占有を取得することから盗取罪が成立するのであり、死者の占有を肯定するものではない」と説明。(まー、これもフィクションっぽいかな?)
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
☆一項詐欺=財物交付。二項詐欺=利得を得る。
【裁判所は錯誤に陥るか】
・形式的真実主義が妥当するので、虚偽だと分かっていても勝訴判決を出さざるをえない場合があり、欺罔行為・錯誤の要件を充たさない疑問。
また、敗訴者の交付行為が「意思に基づく交付」と言えるか疑問→(否定説:団藤)
・(自由心証主義から)裁判所が欺罔されることがあるのは否定できない。
また、交付者は敗訴者ではなく、被欺罔者である裁判所である。(裁判所の強制執行を処分行為と考える)(前田p234)
これは、被欺罔者・交付(処分)行為者と被害者が分離する三角詐欺の一種→肯定説(判例通説)
民法709の規定から、不法の原因のための給付は返還請求できない。そこで、詐欺により不法原因給付をした場合は、返還請求権がなく(=財産的損害がなく)、詐欺罪は否定されるか?
判例:詐欺罪を肯定する。「財物に対する支配権を侵害したから」=占有それ自体を保護法益とする。
否定説上記下線部。
☆二項詐欺については、裁判例は分れている。
(肯定説)処罰根拠は財産保護だけでなく、違法な行為が社会秩序を乱すのを抑止すること。
(否定説)公序良俗に反する契約は無効であり、債務を負担することはない、とする。
二項詐欺については西田p204参照。山口p244(明らかに民法上保護されない利益は二項詐欺の客体から除外されると解する)。
窃盗罪においては「排除意思+利用意思」であるが、横領罪の客体は「自己の占有する他人の物」であるため、「不法領得の意思」の内容は、利用意思のみとなる。
(背任)
第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
他人の事務処理者が、本人を欺罔して、物・利益を交付させた場合、詐欺罪が成立するのか?背任罪が成立するのか?
@詐欺罪成立説(判例)妥当
A両罪観念的競合説
Aへの批判「法益侵害が一つの場合に、詐欺罪と背任罪の観念的競合を肯定することはできない」「詐欺罪が成立するなら詐欺罪を肯定するのが妥当(法条競合)」山口各論p325
【本犯の犯人】→盗品等関与罪は不成立(不可罰的事後行為)
【本犯の共同正犯】正犯と同じ。
【本犯の教唆・幇助】
併合罪説(判例)本犯と盗品罪は併合罪となる。(山口も)
牽連犯説(曽根、前田)←必ずしも原因結果の関係にない、と批判される。
否定説(西田):共同正犯について否定する以上、教唆幇助についても否定すべき。
(建造物等以外放火)
第百十条 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
☆公共の危険(具体的危険)の発生が犯罪成立要件となる。
公共の危険の認識
判例=認識不要説:(「公共の危険」は加重結果に過ぎないという考えにつながる)(「よって」は結果加重犯的規定であると解釈)
認識必要説(山口):(「公共の危険」は構成要件要素と解する):責任主義、故意犯処罰の観点から当然要求されるべき。故意がなければ、失火罪(116.2)が成立するにとどまるとする。
■形式主義=有形偽造を処罰対象し、文書の成立についての真正を保護する。
■実質主義=無形偽造を処罰し、文書の内容的真実を保護する。
現行刑法は形式主義を取る
名義人と作成者の非同一性が有形偽造の成立を画するのであり、名義人の定義と作成者の定義は表裏一体のものと思われる。(山口各論p430参照)
大塚裕史『刑法各論の思考方法』p403に出ている批判は、批判に当たるか?
事例1:AがA名義で公序良俗に反する文書を作成した場合、法律上の効力・効果を帰属させることは出来ないが、このような文書も真正に作成されたと解すべきでは?
(私見)公序良俗に反する以上、信頼を保護する必要がない。証拠としての要保護性に欠ける以上、そもそも文書偽造罪の保護客体にあたらない、というべきでは?……
事例2:AがBからお金を借りたが、Aが借用証書を作成しなかったので、Bが勝手に作成した場合、名義人Aには文書の内容通りの法律上の効果が発生するので、有形偽造を否定せざるを得ない。
(私見)それは、文書の効果ではなく、契約の効果と、有形偽造文書の表示する効果が表面的に一致しているにすぎないのでは。Aに帰属する効果はあくまで契約の効果で文書の効果ではないと思われる……
死亡について故意ある場合
@強制わいせつ等致死罪+殺人罪の観念的競合(判例)。
←批判:死亡結果の二重評価(※)は望ましくない。
@’強制わいせつ等致死罪のみ適用する説←加重結果に故意ある場合を含むことになる。
A強制わいせつ罪や強姦罪+殺人罪の観念的競合。このように扱っても、強制わいせつ致死罪のみを適用する場合との刑の不均衡は生じないから、妥当。
傷害について故意ある場合
B強制わいせつ罪や強姦罪+傷害罪の観念的競合とする説(大塚など)
←批判、強制わいせつ等致傷罪を適用する場合より刑の下限が低くなり、刑の不均衡を生じるので妥当でない
C端的に強制わいせつ等致傷罪の規定のみを適用する説:こう解するのが妥当(この限度で、181は加重結果に故意ある場合を含む規定である、とする。山口各論p113)
=note=
181を結果的加重犯の規定とするなら、A+Bとするのが理論的。結果的加重犯規定と解しない場合に、@Cの立場をとり得る。←嘘
Cの山口は、刑の不均衡を避けるため、理論的整合性を後回しにしていると思われる。
※@の二重評価とは:@はあくまで、181は故意ある場合を含まない(=結果的加重犯規定)とし、181では、死を過失的に評価し、199では死を故意的に二重評価する、と言う見解。そりゃー、妥当じゃないべー。でも判例。
最も重い犯罪の一つ。予備・陰謀まで処罰対象とされ(78)、幇助までが可罰的とされている(79)。
政治犯の性格を有することから、法定刑は懲役ではなく禁錮とされている。
【集団犯】
内乱罪は多数者の関与を予定した犯罪で、必要的共犯のうちの多衆犯(または集団犯)である。
@首謀者(77.1:1、死刑又は無期禁錮)
A謀議参与者、B群集指導者(:2前半、無期または三年以上の禁錮)
C諸般の職務従事者(:2後半、一年以上十年以下の禁錮)
D付和随行者、単なる暴動参加者(:3、三年以下の禁錮)
《関連条文》
第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
(内乱)
第七十七条 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
一 首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
二 謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は三年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は一年以上十年以下の禁錮に処する。
三 付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、三年以下の禁錮に処する。
(内乱等幇助)
第七十九条 兵器、資金若しくは食糧を供給し、又はその他の行為により、前二条の罪を幇助した者は、七年以下の禁錮に処する。
破壊活動防止法
(内乱、外患の罪の教唆等)
第38条 刑法第77条、第81条若しくは第82条の罪の教唆をなし、又はこれらの罪を実行させる目的をもつてその罪のせん動をなした者は、7年以下の懲役又は禁こに処する。
(教唆)
第41条 この法律に定める教唆の規定は、教唆された者が教唆に係る犯罪を実行したときは、刑法総則に定める教唆の規定の適用を排除するものではない。この場合においては、その刑を比較し、重い刑をもつて処断する。
犯人隠匿罪の客体は@罰金以上の刑に当たる罪を犯した者、A拘禁中に逃走した者。
「罪を犯した者」の意義が問題となる。
・主観説=抽象的危険犯説につながる、客観説=具体的危険説につながる、と言われることもあるが、論理的につながるものではない。現に、偽証罪を抽象的危険犯と捉える山口先生は客観説に立つ。
「虚偽の陳述」=記憶に反する陳述
・真実か否かを判断するのは裁判所の役目。
・記憶に反する陳述は、証明力・信憑性を損ない、国家の審判作用を侵害する抽象的危険を有する。
TAイ・客観的に真実であり、真実の認識があるのに、記憶に反するというだけで危険が生じるのか
「虚偽の陳述」=真実に反する陳述
・陳述が真実に合致しないときに初めて、審判作用を害する抽象的危険が発生。
・記憶に反していても、客観的真実に合致していれば、誤判に導く危険性はない。
・客観説真実か否かを陳述者に判断されるのは過剰な負担を強いるもの。
・UBア・記憶通りに陳述しているにもかかわらず、それが真実でないと思っており、信じてでなかった場合に処罰するのは不当では?
★(上記問題の処理案):記憶に反する供述を強要できない=期待可能性がないとして責任阻却する道がある。大塚裕史『刑法各論の思考方法』p488
「虚偽の陳述」=記憶に反する陳述(基本的に主観説が妥当とする)
・記憶に反していれば、すべて可罰的違法性を有するのではなく、客観的真実に合致している場合は、危険性が発生せず、違法性が阻却されるとする。
★主観説を取る以上、記憶に反する陳述であれば、構成要件該当行為であるところ、真実であれば違法性がないと考えると、構成要件の違法性推定機能を否定することになる。
・(上記批判に対する疑問):主観説(記憶に反する陳述)に加えて「客観的真実に反する陳述であること」も構成要件要素としてはいけないのであろうか???(私見「二重の縛り論」w)
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